“服の魅力には、可愛さとか美しさとか人に訴えかけるものがあると考えながら、服を作っています。僕たちはそれを、いろいろな実験を通してこれからも表現していきたい”
→divka “experimental creation” 1/2
―デザインしていてどこに一番気を使っていますか?
松本:独自性です。
―独自性とはどういう意味ですか。新しいということですか?
松本:そうですね。
―服のデザインにおいて、新しいものってまだあると思いますか?
田中:ほぼ不可能に近いと考えています。ただ、不可能であると開き直っていても仕方がありません。僕たちはdivkaを始めてから、実験的なことをいくつか試してきました。それをそのまま「新しい」ということは難しいかもしれません。しかし僕たちはいろいろな実験を今後も継続して行こうと思っているんです。
―デザインソースはどこからわいてくるのですか?
田中:一概にはいえません。バイクで通勤しているときにふと思いつく事もありますし。ただやっぱり、リサーチの過程でデザインのアイディアとか可能性を発見して、そこから色々試してみる、といったことが多いと思います。
―レディースだけしか作らないのですか?
松本:Tシャツや小物はユニセックスですが洋服に関しては基本的にはそうです。今はメンズをつくるところまでの余裕がないというのが正直なところです。
―影響を受けた人物はいますか?
松本:多くの人に刺激をいつも受けていると思います。
田中:たくさんいると思いますが、特に誰かというのは難しいですね。
―2人のクリエイションの方向性というものは近いのでしょうか?
松本:2人とも、美しいと感じる、美しさの種類が似ているんです。
田中:意見がぶつかることももちろんありますが、価値観や考え方が遠ければdivkaが始まっていないのも確かです。少なくとも製作に対する想いとか、精神的な方向性は同じだと思っています。
―以前されていたインタビューでファッションに対して自由な時代じゃないとも言っていました。
松本:確かに難しい時代かもしれません。僕らが学生の頃はもっとファッションは自由だったと思うし、もっと楽しかった。当時の雰囲気を僕は今でも覚えていますが、当時とは違った形でファッションの力を取り戻したいと思っています。時代に不満を言っていても始まりませんが、その想いが製作の原動力となっているのも事実です。
田中:今はファッションと言っても、コレクションを発表するようなブランド以外にも色々なファッションの形があって、ブランドをやって行こうと思った時に、様々な考え方や視点、選択肢が複雑に入り組んで無数にあるように思います。
そういう時代に自分たちは何を選択するべきなのか。マーケティングや営業のことももちろん考えるのですが、自分たちの視点でモノ創りをしていくんだという姿勢だけは絶対にぶれないようにしたいですね。
―WebやTwitter等のコミュニケーションにも力を入れ始めたそうですが。
田中:webの方は設立の時に作りました。全部自分たちでやっているので素人の手作りといった感じですが、今後も少しずつ発展させて行こうと思っています。
松本:Facebookもやっています。
divka 2012 S/S Collection “Parallax”
―反響はありましたか?
田中:いやそれ程。笑
―AGURI SAGIMORIのグラフィックも手掛けているそうですね。
田中:はい。
―何がきっかけでやることになったんですか?
田中:AGURI SAGIMORIのパタンナーの方が以前勤めていたブランドで同期だったのですが、その頃に僕の手掛けたグラフィックを持って行ってくれたんです。それをアグリさんが気にいってくれて声をかけてくれたんです。
―一緒にやっていることで刺激は受けますか?
田中:イメージを伝えてもらってそれをグラフィックにしていくのですが、アグリさんの発想は斬新だし、独特の強いイメージを持っているので、それを形にするのが大変なときもあります。でも、そうだからこそやりがいのある仕事だと思っています。自分とは違う発想に触発されてモノを作って行くということは、なかなか得難い体験ですし、自分を見つめ直すきっかけにもなるからです。
―今回は合同展示会WHITEに出展していましたが反響はありましたか?
松本:多くの方と知り合う事が出来たことと、実際に新規で取引がきまったことは大きいと思っています。いつも展示会の後に自分たちで地方に営業回りをするので、新規で取引を決める大変さは分かっていますから、一つの場所に多くの方が来場して、服を観て頂けるというのはいいですね。
―今後やってみたいことはありますか?
田中:Mango Fashion Awardsのファイナリストとして3月にバルセロナでファッションショーをやるのですが、東京でもショーをやりたいという気持ちがあります。自分達の服はハンガーにかかっているだけでは伝わりづらい。ショーという形式でなくてもよいのかもしれませんが、実際に人が着ている状態でdivkaの服を観てもらいたいという気持ちが強くあります。
―Mango Fashion Awardsではどのように世界と勝負しようと考えているのですか?日本人らしさを追求していくのでしょうか?
松本:日本人らしさというよりも、自分たちのスタイルを表現できたらと思います。
田中:divkaの服は海外では日本的だと言われることがあり、日本ではヨーロッパ的だと言われることがあります。確かに僕は日本人であり、ヨーロッパでファッションの勉強をしてきました。だから、divkaの作る服にその二面性があることは当然なのかもしれません。ただ、僕としてはその二面性を超えるような表現をしたいと思っています。それこそがdivkaの独自性だと思うからです。
―アート作品のようなものに興味はないのですか?
松本:興味はありますが、今はファッションの文脈でやっていきたいです。
―わかりにくさというものはデザイナーにおいて必要なことだと思います。ただ今の時代はわかりにくさをデザイナーがわかりやすく説明するということがより求められている気がします。その要求に関して、あまりに野暮すぎるというような考えをお持ちではないですか?それともやはり言葉で伝えることは大切だと思いますか?
divkaが目指しているのは新しい服を作りたいということで、そのコンセプトに難しいところはないと思います。その新しさを目指すという姿勢が感覚的に伝わりにくい時代なんじゃないかとは思いますが・・・・。ただ、僕たちが作ろうとしているのはアート作品ではなく、毎日の生活の中で身にまとう服なんです。僕たちの考える新しさを言葉を尽くして説明していくことも大事かもしれませんが、服を着てくれたり、見てくれる方が「綺麗な服だね、着てみたいね」と言ってくれることを素直に喜びたいという気持ちがあります。
もちろんそのためには、もう少し知名度を高めていく必要がありますけれど。
divka 2011-12 A/W Collection
―あくまで個人的な見解ですが、“わかりにくい服であるということがわかりにくい”という印象を持ちました。わかりにくさを前面に押し出すということではなくて、さり気なく忍び込ませるというか。前者のスタイルでデザインするブランドが多い中、divkaはその点で新しいし、面白いなと。
ありがとうございます。繰り返しになってしまいますが、僕たちは服を作っている。魅力的な服を作りたいと思っている。そして服の魅力には、可愛さとか美しさとか人に訴えかけるものがあると考えながら、服を作っています。僕たちはそれを、いろいろな実験を通してこれからも表現していきたいと考えています。
Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi, Masaki Takida
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田中崇順
ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ美術大学ファッション科在学中からJohn Galliano / Christian DiorやMiki Fukaiで経験を積む。C&W/H&B Student Fashion Award UKでは2004年にファイナリスト、2005年には優勝し、翌年、ITS#Fiveにてファイナリストに選考される。2006年、同校を首席で卒業する。帰国後デザイナーズブランドで経験を積む。
松本志行
文化ファッション大学院大学在学中から合同展示会にて作品を発表する等精力的に活動する。
複数のデザイナーズブランドにて経験を積み、同校を優れた成績で卒業する。
現在divkaのパターンカッタ―として活動する傍ら、数々のブランドのパターンに携わる。
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