“今自分の置かれている環境を今まで以上に大切にしようと思いました。結局のところやれることを真摯にやるということになると思います”
→sneeuw 雪浦聖子 ~ Simple≠clean+humor=* ~ 1/3
→sneeuw 雪浦聖子 ~ Simple≠clean+humor=* ~ 2/3
―コンセプチュアルな服作りってどう思いますか?
自分には向いてないのかなと思います。理屈だけで服に落とし込めていなければ意味ないですし。言葉だけでモノが伴わないのは好きではないです。
―学問が主戦場の環境で長く育っていると、アカデミックでコンセプチュアルな服を作るという方向に振れるということもありそうですが。ましてや日本の最高学府ですし。
多分理系と文系の違いだと思います。文系の人って複雑に考えるのが好きというところがあると思うんです。論文も枚数が重視されたりするみたいですし。私は逆に複雑なものを単純にしたいという思いが強いので、結局色々あるけど「clean & humor」でまとまればそれでいいと思います。できるだけシンプルにすることに興味があります。
―単純=普遍性ということですか?
自分の中でエッセンスを抽出して、変わらないであり続ける言葉なりモノなりに落とし込めればいいのかなと思います。
―大学では論文も書いたのですか?
書きましたよ。最近原発事故の汚染水のニュースで話題になったメガフロートが題材でした。メガフロートを海に浮かべて陸地として利用しようという計画が環境に与える影響を調査して、結論として環境に影響は無いという論文を提出しました。
―震災で変わったことはありますか。
今自分の置かれている環境を今まで以上に大切にしようとは思いました。チャリティーもしましたけど、今思えばあれは何かしているという実感がほしかったのかなと。結局のところやれることを真摯にやるということになると思います。
―ものを作る上で大切にされていることはありますか?
自分の感覚で腑に落ちるというか自分らしさとかそういうことを大切にしています。規模も小さいので売れる、売れないということは特に意識していません。
―自分らしさって何でしょうか?
なんだろう。単純なところとかですかね。
―ビジネスのことは全く考えていないのですか?
全くということはないです。ブランドを続けていけるように努力はしていますし、これからも精進しないと。夫にも迷惑かけたくないですし。儲けたいとはとくに思っていないですけど、事業として継続していける程度には、と思っています。
―sneeuwの服は俗に言うモテ服ではないですよね。
それは凄い照れがあって。足とか出せば女らしくなるのかなというところはあるので丈は短くしてあったりはします。自分自身に照れがあるので作るものにも反映されていると思います。
―そこが自分らしさかもしれないですね。
そうですね。
―ブランド以外に活動はされていますか?
知り合いが作っている雑誌で、2人1組でクリエーションをしてそれを載せるという企画があって、ロンドンにいるグラフィックデザイナーの方と作っています。
―ショーなどの予定はありますか?
実はちょっとあるのですが、2013のS/Sに、sneeuwとは違った形で発表することになると思います。
詳しいことはすみません。口止めされているので(笑)。
―メンズは作らないのですか?
メンズでもいけそうなアイテムに関してはユニセックスとしています。今シーズンは女の子の要素が強かったのでしていないです。
―尊敬するデザイナーはいますか?
ファッションと分野が違いますけど、サントリーウーロン茶とかの広告を手がけている葛西薫さんは好きで、尊敬しています。
―どういったところを尊敬されているのですか?
やっていることはシンプルなんですけど、気持ちがいいし新しいし、そこに理由があったりするので。あとはグラフィックデザイナーの服部一成さんとか菊池敦己さんとか。多分頭の中が平面っぽいんだと思います。だから配色でみせているんだと思います。
―キャリア的には造形に関係するものが多いですよね。
そうなんですよね。でも彫刻の見方とか分からないですし。小さい頃から鑑賞する物はグラフィックが多くて、その後仕事で造形が入ってきて、そして服飾に至るという変遷を辿っています。
―ここまで聞いてもなぜファッションデザイナーにということが分からないです。どうしてプロダクトに行かなかったのかという点が引っかかっています。
プロダクトデザインを会社でやっていて思ったことは、作ることが大がかりだということです。私はウォシュレットを作っていたんですけど、関わる人数も半端ではないですし、金型を作って大量に作る必要性がある一方、洋服は1枚だけでも作れるし1人でも作れるじゃないですか。そういう1人でも作れるモノを作りたいと思っていて、あとは単純に着ることが好きだったということがありました。仕事も続けていきたいと思っていて、自分でやっている分には迷ってはいますけど、子供が出来ても休んでまた始めるということも可能ですし。
―BALMUNGなどの若手ブランドの服は雪浦さんからみてどう思いますか?
すごいなと思いますよ。確かに私には着られない服ではありますけど、あそこまで振り切れたモノを作り上げるということは作り手の視点から見てもすごいなと思いますし面白いなと思います。アートのような衝動があるなあと。私は自分の内面を表現するということは無くって“モノありき”のデザインをしているので、そこはタイプが違うと思います。
―何を志向してデザインされているのですか?
世界にはないけど、自分が着てみたい服ということでしょうか。
自分の中で新しくて、心地よいと思えるようなものを形にしていければいいのかなと思います。
Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi, Masaki Takida
【関連記事】
・sneeuw 2012 S/S Collection
面白かったです!