“自分がどういうデザイナーになりたいか。それを考えているからデザイナーを続けているのかもしれない・・・僕はまだ自分自身の内面ですら模索している、発展途上中の人間ですから。見つからないからやっているんだと思います”
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―物流システムが壊れているという話も最近されていましたがどういう意味なのでしょうか
これは言及すると僕にマイナスな矢が立つかもしれませんが、「サンプルが独り歩きする」そういう言葉を最近よく耳にします。昔はバイヤーさんが来て展示会で気にいってくれて買い付けるという流れだった。それが当たり前だった。でも展示会に来ないバイヤーさんが増えてしまった。不況なので仕方ないと納得する部分もある反面、それがもし主流になったら…と考えてしまう。発表の形に意義が無くなってしまう。そういう意味では危機感を持っている。結局回り回って僕らだけでなくそれが工場さんのリスクにも繋がってしまいますしね。
僕らはショーをやってる分USTで見れたりそれで良いのかもしれませんが、展示会ベースの人達は展示会の空気感まで見せたいと思う。そういうのも見ないでというのは用意した人達はきっと悲しいですよね。
―今は誰でもデザイナーにもなれますしね。森川さんも「服を作れなくても誰でもデザイナーに「なる」だけは出来る時代だから。」とつぶやいていました(最近放映してたメンズシャツにおける「巻き伏せ本縫い」だから高級シャツみたいな概念自体は僕は違和感を感じるんですけど、ただ今数多く存在するブランド でそれさえ知らないファッションデザイナーもたくさんいる気がする。服を作れなくても誰でもデザイナーに「なる」だけは出来る時代だから。/ 9月2日)
有名なデザイナーでも服は作れなかったりする。でもデザイナーとしての概念があって成り立っている服はある。なんの基礎も知らなくてもコラージュ感覚で服は作れてしまう。それを否定したいとは思わないし、それを消費者の方が良いと思うのであれば別に良い。ただデザイナーと言う職業は誰にでも出来るものとは思いました。
―そういうなかで自分はどんなデザイナーでありたいのでしょうか
それはいつも考えています。自分だったらこうしようとか「考えることが出来るデザイナー」なのかもしれないですね。それを他の人にも伝えられるようなデザイナーになりたいというか。writtenafterwardsの山縣さんが良く言っていることなのですが展示会をただやって終わりのブランドではありたくない。純粋にその時に想った事を発表して自分は自分でありたいと思うのが一番近いのかもしれない。CHRISTIAN DADAは自分の内面と凄くリンクしているコレクションだと思いますので。僕はコレクションのインスピレーションを言葉から拾ったりすることが多いので、自分の内面を表現するのに一番近いんです。今は年を重ねて薄まりましたが僕は元々コンプレックスの塊でした。中学校の頃の写真の顔も黒く塗りつぶされてたり、自分の顔も見たくないような人間だった。でもその中で自分を表現出来る事がファッションだった。だから今は自分の内面や想っていることを作ることで表現したい。
―ファッションデザイナーでありつづけたいですか
そう思います。
自分がどういうデザイナーになりたいか。それを考えているからデザイナーを続けているのかもしれない。社会的に訴えたいとか、自分の着るものを作りたいとか、それが明確にある人もいる。でも僕はまだ自分自身の内面ですら模索している、発展途上中の人間ですから。見つからないからやっているんだと思います。
―クリエイションをすることは楽しいですか
苦しい時もありますけど今は楽しいと思ってやれています。MD的なことを考える時は正直大変な部分もありますがデザインを出す時に辛いと思ったことは今はありません。でもそれも出来てデザイナーということだと思うのでそれはしっかりやらないといけない。
―Twitterでは自身の内面的な部分も表現していますね
消えないものだからこそなかなかつぶやかないですけど、Twitterでは想った事を率直に書いています。ブログも書きたいのですが基本ネガティブな人間なので書くことによって見る人が嫌な気持ちになってしまうのかなって思ってしまうんです。
―ブランドを作るデザイナーにとって大事なことはなんですか
表現の底をなくさないことじゃないでしょうか。底がぶれてしまうとわからなくなってしまう。自分も気を付けなければいけないと思います。
CHRISTIAN DADA 2012 S/S Men’s Collection
―CHRISTIAN DADAにとっての軸とはなんですか。以前ブログに書かれていた「生涯一前衛」ということでしょうか
それは凄く好きな言葉です。僕自身が前衛かどうかはわからないですけど、自分の中では面白いものを出しているつもりです。勿論それが意外に世の中に出ていたり、新しくなかったりもする、そういう風に言われるのも僕の中では面白いし。勿論最初は傷つきますけど。言われたことをすぐに消化してまたやりたいって思うんです。
―服作りを続ける原動力はなんですか
街中で自分のつくった服を着ている人を見るのも勿論嬉しいです。でも結局自分の作ったものに完全に満足できないということが一番の原動力かもしれません。そしてそれをまた自分のクリエイションで超えたいと思っています。
―以前のインタビューで尊敬するデザイナーとしてシャルルやコムデギャルソンを挙げていましたがどういう点で彼らを尊敬しているのでしょうか
この人達とは自分は違う考え方だなと思ってきたのがコムデギャルソンです。オートクチュールではなくプレタポルテで形を見つけてきた。ただ僕の中でギャルソンと言う存在は概念やビジネスモデルとして追いかけていたブランドという感じです。影響を受けたという意味では他にもいっぱいいます。マルタン・マルジェラもそうですしラフもヴィヴィアンや石岡瑛子もそう。でもギャルソンに関して言えばデザイナーが日本人ですし身近だった。デザイン的なアプローチは海外のブランドから学ぶことも多いかもしれませんがビジネス的なアプローチは日本にあるブランドの方がリンクする部分も多いと思うので。
シャルルは僕の師匠と言うこともありますけど僕にないものを一番持っているデザイナーだと思うんです。「少女っぽさ」というか。その言葉は性別に捉えられがちなんですけどそれが彼にとってのクリエイションには凄く重要だと思うんです。ファンタジーな部分は素の部分からきているし、自分が作ろうとしたらファンタジーではなくファンタジーに近いものになってしまう。シャルルには「デザイナーとしてどうあるべきか」とか教えてもらったことはないですけど、自分がどうあるべきか、どうすべきかと考えてあげられた初めての人でもあるんです。この人にこうやってあげたら嬉しいだろうなとか。不器用なところも好きですし、全てを教わった人間です
―CHRISTIAN DADAのイラスト集のようなものや森川さん作の絵本も見てみたいと思いますが
最近はデザイン以外の絵を描くことも少なくなっているのでそういうものもやってみたいですね。絵を描いている時は自分の心が休まる時なので。
―現状の日本のファッション界に不満はありますか
日本のクリエイションは日本的工芸という部分での評価が強すぎる気がします。色んな表現に挑戦しているデザイナーが日本流の形で増えているのに。そういうものが評価される部分もわかりますが、そうじゃない目線で見る人が増えても良いと思う。それを増やす作業を僕達がするのも大事だと思うんです。美術的な要素を広めてあげるデザイナーがいても良いというか。工芸的なもの、美術的なものどちらも良いと思うのですが一辺倒になりがちな日本のファッション業界には凄く不満がある。この人が言ったからこうだとか。そういうのって商業的にはやりやすかったりもするけどクリエイションの面ではやりやすくなかったりもする。物流も危ないと思いますし、それによってクリエイション云々と言えなくなるのが一番怖いと感じています。
―日本のクリエイションはやりづらいということを踏まえてそれに一石を投じたり、作品で表現したりとかはありますか
安易かもしれませんが僕はそういうことに一石を投じられたら、そう思っている。日本市場のメンズはある程度売れる商品・ジャンルが決まっていますよね。でもジャンルレスな部分で、今までにいないタッチで勝負出来たらと思っている。そういう意味でも今はメンズに注力したい気持ちが強い。その先はわからないですけど。
―CHRISTIAN DADAには黒のイメージが強いのですが黒に対する思い入れを教えてください
子どもの頃悪い事をした時に、祖父にねずみが走るような母屋の2階倉庫に電気もつけられず1日中縛られていたトラウマもあるかもしませんが、単純に自分の中で恐ろしい、強いという表現に”黒“と言う色が一番近いと思うんです。子供の時に怖いと感じた色が黒であり、逆に安心する色でもあり、自分自身が一番着る色でもある。その両極端があるからこそその色に凄い興味があるし使っているんだと思います。
Interview & Text:Masaki Takida, Fumiya Yoshinouchi
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CHRISTIAN DADA
Designer:森川マサノリ
1984年3月生まれ。「CHARLES ANASTASE / シャルル アナスタズ」より独立後、友人と共にファッションブランド「LIVRAISON / リブレゾン」設立。
09年に同ブランドを脱退し、10年A/Wより「CHRISTIAN DADA / クリスチャン ダダ」をスタート。11年A/Wに初の単独ランウェイ形式となるショーをラフォーレ原宿ミュージアムにて発表。
2011年6月25日に行われたMTV AID JAPAN AWARDのレディ・ガガの衣装を手掛ける。
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