Interview

CHRISTIAN DADA 森川マサノリ 3/6

ショーの服と売るものが連動してないのであればデザイナーではないというのであれば僕はデザイナーではないのかもしれません。ショーとして「自分を表現する」と言う意味では凄く力を込めてやっています

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―CHRISTIAN DADAをやろうと思ったのはいつ頃でしょうか

リブレゾンを辞める時には自分でやりたいなって思っていたんです。でも資金もなかったのでアルバイトをしながらお金を貯め、1シーズン休憩した後、始めました。

―今は首元の目立つ所にクロスのタトゥーがありますロンドン時代にはなかったと思います。何か意味があるのでしょうか

タトゥーは日本に帰国してからすぐ彫りました。クロス自体には意味はありませんが彫った場所には意味がある。この場所にタトゥーがあることによって普通の社会人にはなれない。日本に帰国する時には「デザイナーで生きて行こう」と決めていたのでその覚悟的な想いで彫りました。

―CHRISTIAN DADAの名前の由来について教えてください

CHRISTIANと言う名前はユダヤ人の象徴的な名前で、ダダイズムには「破壊」という意味がある。世界にこの名前が出た時に皮肉っぽい名前だなって。

―CHRISTIAN DADAのファーストシーズンはGallery Concealを会場にFAD3の同僚であった大塩さんのLuciole jean pierreと合同で展示会をされていました

そうですね。その時はほんとにお金がなかったのでほとんどがTシャツのコレクションでした。でもそのTシャツもNichola Formichetti(ニコラ・フォルミケッティ)が気に入って今でも着てくれたりする。Tシャツ以外にもスタッズを無駄に付けたモノだったり、自分にとっての原点的コレクションというか、思い入れは凄くありますね。だから今でもtwitterのアイコンはその時のものにしています。資金の限界はありましたけどその時の自分のやりたいことはやれたかなって、そう思います。

2010-11 A/W Collection at Gallery Conceal

―まさに森川さん本人のワードローブを見ているようなコレクションでした

そうかもしれません。お金はなかったけど自分自身に一番近かったと思います。

―今とは少し違うイメージかもしれません。良い意味で粗かったと言うか

そうかもしれません。今はその時より、やりたいことだけではなく、セールスも意識しています。スタッズだけじゃないこともやりたいという気持ちもある。それに最近自分の好きなものが変わってきた、ミクストメディア(mixed media:複数のメディア、媒体を用いた技法)に興味があるというのも関係していると思います。

―2シーズン目には早くもCANDY前の路上で3ブランドで(EMPERART, TARZANKICK)ゲリラショーをしました

あの時はショーをやることが決まった時に見せ方が先に決まったんです。ショーをやるには型数も作らなければいけないし、リメイクも多かったのですがリメイクの方がああいうところのテンションでやるには面白いと思いましたし。

―ゲリラショーは凄く良いアイデアだと思いました。面白かったし、雰囲気も凄く良かったし。ロンドンの感覚に近かったというか

僕自身も楽しかったです。以前beauty:beastがやっていたお客さんにカメラを持たせて撮った写真がオフィシャルの写真になるみたいな、そういうやり方とか、お客さんとの距離感って凄く大事だと思うんです。今は近いようで、遠いと言うか・・・そう感じてしまうんですよね。ゲリラショーそのものは新しくはないですが、ショップとの連動性であったり、当時ブランド自体が2シーズン目だったけど若いブランドでもそういうことが出来るということで同世代のブランドの指針になれればという想いもありました。だから本当は継続してやりたかったんですけど結局路上を使うのが難しくて断念しました。

合同ショー”CATWALK” CHRISTIAN DADA 2011 S/S Collection

―あの合同ショーはEMPERART(banal chic bizarre の中川氏によるメンズブランド)がメインというか彼の集客の力も大きかったと思います

それは大きいと思います。それで僕が中川君を誘った部分もありますし。CHRISTIAN DADAは当時2シーズン目だったのでそんなに発信力がない、かといってTARZANKICKとの2ブランドで合同ショーだと言っても弱い。同世代で集客が出来るブランドを考えたらbanal chic bizarreの中川君だったんです。

―面白かった一方でブランド毎の切れ目が分かりづらかった部分もありました

それは僕らのミスでもありますし、演出と上手くコミュニケーションが出来ていなかった部分でもあります。それに路上だったのでリハーサルが出来なかったのもありました。
ただセカンドシーズンで、ああいうやり方で打ち出したことには凄く意味があったと思っています。
僕らの世代はなんだかんだでブランドも多い。ああいうやり方でも出来る。ショーが着地点ではないけど、面白いシステムでの発表が出来るそういう具体例の一つにはなったんじゃないかと思います。

―その翌シーズンは単独でのショー(2011-12AW at ラフォーレミュージアム原宿)になるのですがそれを決めたのはいつだったんですか

実はゲリラショーをやる前から一人でやりたいと思っていたのですが資金力がなかったので漠然と思っていただけで結局出来るかどうかはショーの後の売り上げ次第だったんです。だからゲリラショーでの反響を見てやれるかなって。プランニング自体は進んでいました。

―ということは2シーズン目のショーで売り上げが伸びたから3シーズン目でショーが出来たということですよね

そうですね。あとはプレス面も考えると一人でやった方が良いのかなって。

―具体的に決まったのはいつ頃なんですか、2011-12A/Wはショーの為の服と言うことでしたよね

2010年の12月くらいだったと思います。デザインはもう既に出来ていたんですけど。

―仮にショーが出来ないとなったらあのシーズンのコレクションが全く違うモノになっていたということでしょうか

そうだと思います。ショーということを前提に考えた服だったので。今回の(2012S/S)メンズがわかりやすいと思うのですがショーをやっていないので展示会の為の服なんです。思考回路の問題もありますね。それもバランスをとって上手く出来たらいいのですが今のところはショーの為の服と、展示会ベースでアイデアを出したモノで違うアイデアになってしまっている。展示会ベースのやり方の悪い癖が残ってしまっているのかもしれません。

―日本のブランドはあまりショーピースは多くない。それなのにCHRISTIAN DADAはほとんどがショーピースですよね。特にレディースに関しては。普通で考えれば正直ショーをやる意味があるのかどうかもわからないですよね

そうかもしれません。でもそれはプリミティブなクリエイションとプレス(媒体)に向けての発信という意味合いもあります。特に今回のショーはビジネスということを一切考えず僕が発信したいことだけを発信して作りました。
ショーの服と売るものが連動してないのであればデザイナーではないというのであれば僕はデザイナーではないのかもしれません。ショーとして「自分を表現する」と言う意味では凄く力を込めてやっています。

―ショーをやる意味ということに関して教えてもらえますか

今回(2012S/S)に関しては大勢の場で見てもらう表現方法としてそれが一番良かったというのもあります。ただ必ずしもショーという形態が毎回ベストな選択だとは思っていません。マスターベーション的なことかもしれませんが単純に「自分のブランドはこうだよ」っていうのがショーなのかなって。

―具体的に「自分のブランドはこうなんだ」ということはどういうことなんでしょうか

一般的に言えばテーマを決めて、その次に服に落とすディテールを考えてそこから形に落とし込む。でも僕の11A/W〜12S/Sはそこのシステム自体を完全に無視している。テーマを決めて服に落とすことは考えないでラフスケッチの段階だけで敢えてルックとして完結させ、そこから直接形にする。ディテール云々とかじゃなくて。決まったシステムじゃなくてもこういう表現が出来るというか。

―CHRISTIAN DADAにとってテーマは重要ということですよね

そうですね。
服にディテールを落とすことだけがファッションじゃない、少なくとも僕のブランドではそうあって欲しいと思っています。

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