Interview

proef 斉藤 愛美 ~プロダクトデザインとファッション~ 3/3


いいデザインは、説明が要らないし、言葉なんてなくても伝わるものだと思います。
ただモノや感覚だけじゃなくて、そこにベースになる理論がそのデザインの立場を守ることになるのかなって

→proef 斉藤 愛美 ~プロダクトデザインとファッション~
→proef 斉藤 愛美  ~プロダクトデザインとファッション~ 2/3

―斉藤さんがいいと思うファッションブランドはありますか?

ANREALAGEとAlexander Wangですかね。やはりプロダクト目線で見てしまいますが、小物などもセンスあってすごくいいなーと思います。あと、単純に自分が着たいです。

―プロダクトとファッションはひとつになると思いますか?

うーん。難しい質問ですね。プロダクトはやはりファッションに比べて硬くて頑固な性格に感じます。そういう性格なのでファッションの自由さをとても欲している部分もあって、スタイルや表現を尊敬している部分もあるので、今はファッションの魅力ともっとちゃんと向き合ってみたいと思います。
でも、プロダクトデザインかファッションかなんてことはどうだっていいのかもしれないと思ってきました。

―アート作品の制作に興味はないのですか?

何かやろうとは声をかけて頂いているのですがまだまだ話は進んでいないです。

―もしアート作品を制作するとなったとき今までと手法や考え方を変えるということはありますか?

いいえ。オランダでストッキングを買ってくださった方が「これはアートだね、だけれど手が届かないような値段でもないし、普通の人が気軽に楽しめる」と言ってくれて。いままで自分がアートをやっていると思ったこともなかったのですが、今のままのそういうスタンスでやっていければいいかな、とおもいます。

―今後は靴も展開していく予定はあるんですか?

まずはレッグウェアをやっていくつもりです。ただ面白そうなプロジェクトも色々な方から提案されているので靴のデザインをすることも近い将来あると思います。あとすごく個人的には食品のパッケージデザインとかしてみたいですね。

―みんなにいいと思われたい作品を作りたいという願望はありますか?

考えたことないですね。自分がいいと思うモノしか作らないです。私ってすごく平均的な人間なので私がいいと思う感覚は誰か他の人もいいとおもってくれるだろうと楽観的に考えています。笑

―普通には見えないですけどね。

普通ですよ。普通の人間が理論を勉強しているからおかげさまでこうしてストッキングが評価してもらえているんだと思います。

―ここでの理論とはコンセプトのことを指して言っているのですか?

それだけでなくデザインは視覚情報なので、視覚の面での理論も含みます。

―頭で考えて理論武装してものを作るということはやはり必要だと思いますか?

もともとその流れっていうのは昔の芸術家たちが社会の中での芸術価値を保持するためにマニフェストを出してという政治的な経緯から生まれたものですよね。そしてデザイナーたちもその歴史を系譜してという流れで。簡単に言えば、社会的に認められたければ理論は必要になってくるのかなと思います。
オランダでは偉い社長さんや政治家の人とかがこういった芸術・デザインの分野のことにひとつの教養として興味を示す人が凄く多くて、その時にこれはこういう考えで、こういうものを作りました、って相手にわかるように説明できないとまずいじゃないですか。ただそれは難しい言葉で話すとか意味ではなくて、相手に伝わる言葉でそれは何なのか伝えるという根本的なコミュニケーション力の必要性です。

―感覚だけではやはり伝わらないものですか?

いいデザインは、説明が要らないし、言葉なんてなくても伝わるものだと思います。
ただモノや感覚だけじゃなくて、そこにベースになる理論がそのデザインの立場を守ることになるのかなって。そういうことを大学時代ずっと言われ続けてきましたし、そういうものだと思ってます。

―最近思うことで、こうしてまがいなりにも言語を扱う仕事をしていますが、やはりどうしても言語の限界を感じてしまいます。本音の少し手前というか、正確に何かを伝えることにはやはり限界がある。じゃあ視覚などの感覚だけで全てが補えるとも思えない。

そうですね。ただそこを切り離して考える必要は無いと思っていて、言語は文字を使っていて、アートやデザインはイメージを使っている。文字も言ってしまえばイメージですから。たとえば日本語だと他の国の人から見ればただの記号でしかなくなってしまいますし、結局それ自体に意味があるのじゃなくて、その文章の集まりから生まれる何か、がコンセプトですよね。頭で考える部分と、感覚で感じる部分の両方のバランスをとってどうアプローチするかなんじゃないかな、と思います。

―ではその考えのもとデザインの本質とはどういうところですか?

結局のところは、いいなと思ったり、楽しいと思ったり、おもしろいとかいう純粋な感情の動きや好奇心を生むことなのかな、と思います。その目的のために、素材や技術を使って、コンセプトをプロダクトに翻訳するのが私の仕事だと今は思っています。

―最後に日本について一言お願いします。

やはり日本独特の文化のうえで作られたクリエーションは外から見ていても面白いし、誰かの真似事をするのではなく自分たち自身で自由に作品を作っているひとたちが日本には沢山居るのをみて、これから面白いことになりそうだな、とワクワクしました。

Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi

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