“コンセプトが面白ければ、単純にモノ自体が見る人の好みじゃなくても、何なのか理解は出来るし、ようは‘好み‘で判断されるところから抜けられるのではないかと思います”
→proef 斉藤 愛美 ~プロダクトデザインとファッション~ 1/3
―ファッションに対してはどういったイメージを持っていますか?
私はあまりファッションをやるというのは考えられなかったですね。何かリラックスしていないというか、うまく説明できないですけど。サイクルがあまりにも早すぎるし、ファッションは魅力的な分、そのエネルギーに吸い取られてしまう人が周りにいたので、単純に少し怖いです。
あと私自身今やっていることはファッションとしては捉えていません。あくまでプロダクトデザインの延長で、その結果できたものがストッキングだったというだけです。
―ファッションとプロダクトデザインの関係をどう見ていますか?
そういえば通っていた学校でもプロダクトデザイン科とファッション科何か一緒にやろうと言うことになっても、うまく物事が運ぶことがなかったです。サローネのプロジェクトもその前にアムステルダムファッションウィークで一緒に展示したのですが、結局最後は別々でした。見ている方向が違うんです、プロダクトデザイン科の人はファッション科の人に対し「表面的なことばっかりやって」といい、逆にファッション科の人はプロダクトデザイン科の人に「あいつらださい」と陰口を良く聞きました。笑 学生時代のことですけど。結局ただ大切にしているところが違うのだとは思います。
―海外で活動されてきた斉藤さんの目から見て、日本のクリエーターについてはどう思われますか?
五十嵐が実際に着ているのを見て、ハトラさんとかすごくいいと思いました。1から手作りですごく仕事も丁寧ですし、完成度の高いリアルクローズで、世界観もある。そういう技術力はやはり日本は高いと思います。
―海外と日本との間に違いを感じましたか?
うーん。正直まだそこまで日本のブランドを把握しきれていない立場で違いを一概に言うことは難しいですが、日本のブランドはすごくかわいらしい印象があります。
―プロダクトデザインでいう完成度の高い作品とはどのようなものだとお考えですか?
デザインコンセプトが面白いのと、それがちゃんとプロダクトに反映されている作品。ビジュアルと言葉でちゃんと説明されていることも非常に大事なことだと思います。
―コンセプトはやはり大事ですか?
コンセプトが面白ければ、単純にモノ自体が見る人の好みじゃなくても、何なのか理解は出来るし、ようは‘好み‘で判断されるところから抜けられるのではないかと思います。かっこいいなーと思うものがあって、それがどんな考えによって作られているのかを知って、それが面白かったらそれに対する興味も増すと思います。先ほどの日本と海外の話に戻すと日本はどちらかといえばモノのクオリティーを重視する傾向かなと。オランダではモノも大切なんですがその課程やコンセプトにも力を傾注しますね。
―今後どのようなことに取り組もうとお考えですか?
日本の強みは確かな技術力だと思います。それはさきほど言ったモノのクオリティーを担保するためにさまざまな技術力が育ってきた風土があり、日本人の真面目な気質もあいまって、どの分野も世界のトップクラスの技術がある国だと感じます。オランダは九州くらいの面積しかなく、人口は東京にちょっと上乗せくらいで、マーケットも小さい。国際的立ち位置を維持していくために、頭で考えてどうにかしてきた国なのでコンセプチュアルな方法が得意になったのだと分析しています。今後はこの両極のいいところを抽出したら面白いことが出来るのかな、と思います。
―モノを作る上で大切にされていることはありますか?
あまり決め付けないということです。要は最初にあまりこういうものを作りたいと思わないことですね。
―ではどういう風にモノを作るのですか?
いいなと思ったものがあるとしますよね。私はそれが何故いいのかを考えます。そういう”いいな”の断片を拾い集めて、それを一回忘れます。そして後はひたすら手を動かします。そうするとどこかで繋がる瞬間があって。
―「いいなの断片を拾い集めて、それを一回忘れます」というのはどういうことですか?
いいなの断片集合体がコンセプトとしてクリアになったら、それにとらわれすぎない為になるべく考えないようにするんですけど、手を動かしていると頭の片隅に残っていたそのコンセプトが繋がってきて。点と点だったものが繋がるような感覚ですかね。だからデザイン画もあまり描かないですし。
―日本のデザイナーもデザイン画を描かない人が増えていますよね。
そうなんですか。やはりまだまだ日本のこと知らないみたいです。