Interview

FUGAHUM 後篇

自分たちの思いやコンセプトを理解しきった上で作るには、やっぱり自分たちで作るのが 一番だと思うんです

-複数でやる利点について教えてください

山本-みんな自由でばらばらなんで各自主張をもっていて、自分の意見がそれぞれの意見とぶつかって剥ぎ落とされるんです。そして芯だけ残る。それが多分良い部分だと思うんですよ。自分のいいところ、こっちのいいところがぶつかり合って一つになるので。

-複数の意見がはいることによって混乱とかはありませんか

山本-ぶつかりますよね。絶対に。でもそれも慣れてきて、場合によっては引く部分なんだとかそういうのがあるので。

三嶋弟-みんなの共通の部分の中でなんかFugahumっぽいよねってことでわかりあえるんですよ。その人それぞれ違うなりに共通項があってという感じなので最後には混乱しないようになってる。

三嶋-ここは絶対引けないけれど、そこはあまり深く突っ込まないとか、そういう暗黙のルールみたいな所もあります。もちろん意見の違いもありますが、自分 のテリトリーは身内でも敵みたいなところがあるので。いかに説得させれるか。そっちがそれだけのもの作ってきたのであればこっちはどう返さないといけない のか、そういういい意味でのプレッシャーはありますね。そこらへんはお友達ではないので。


-3人でやるということはコラボレーションという感覚に近いのでしょうか

山本-目指すところは一緒でそれぞれで活動の場が違ってってだけなのでコラボレーションという感じではないですね。

三嶋-大きな意味で言えばコラボレーションかもしれないけど「コラボレーション」と一言で括ってしまうと軽い感じがしてしまうんですよね。どこのブランド も絶対どこかとコラボしてるじゃないですか。そういう感じではなく、お互いのことをもっと深く理解した上で投げあったりしてるんですよね。だから「これ嫌 いなんだろうな」っていう変化球もわざと投げたりできるんですよ。けど「もう少しこねたら今これちょっと面白くない?」って、そこでみんなで考えたりするわけです。そんな暴投ぎみな意地悪なやりとりがあってベーシックなところから外れていく、注目されてないものを面白くしようよという流れは皆にあるじゃな いですか。そこをどう料理していくかとか。勿論どう料理しても駄目なものは駄目っていうのもいっぱいあるんですけど、そういうのをみんなそれぞれの経験とかから投げ合ってるんですよね。だから気を使ってないだけに生半可なコラボレーションよりは嫌な部分はいっぱいあると思いますけどね。

-Yohjiで働かれていた2人はやはりデザインにおいてそこの影響は強いのですか

山本-多大にありますね。クチュールとか職人的なことをしたかったんですけどパタンナーに配属されて、そこはコレクションラインでも一番変なものをつくる 場所だったんです。そこにいるとデザインの仕方が今までの概念に無い作り方なので、これをどうやって形を崩さず量産にして、このディテールでやるかって考え方でやっていたので、その時にこんな風にデザインしてもいいんだって言うのが分かったんですね。

三嶋隆-元々(Yohjiに)好きで入ったというのがあったのですが、中に入ったらそれを支えているパタンナーであったり、その人たちのやり方とか造り方とか、実際自分がついている人に一番近くで影響を感じていますね。

-2人ともパタンナー出身ということでパターンにこだわりはあるんですか

山本-パタンナーが見ても、どうなっているんだろうって思われるようなものにはしたいですよね。自分も他のブランドを見たときに外注に出したかどうかとい うのはすぐにわかるので、同類の人たちがみても「どうやってやってるんだろう」とか「ちゃんとこの人たちがつくってるんだな」っていうのを思わせるパター ンにはしていますね。

三嶋隆-あえて普通じゃないパターンというか

山本-デザイン画に簡単に描ける様な服はすぐに作れるので、そこはやっぱりプロの人が見てもちゃんとやってるなってるものにはしたいんです。

三嶋隆-こうなってるんだこのパターンみたいな。着ると普通なんだけど切り替えとかそういうのはあえて違う方向とかに考えて作ったりしますね。

三嶋-そういうのってどの世界でも基本だと思うんですよね。逆にそれをやってないブランドってなんなんだろうって思いますね。やっぱり自分達で形作って やっていく過程で出来るものってあると思うんです。それを外注出してOEMをやってしまうと、外部のパタンナーが自身の中にあるフォーマット内で作るわけ じゃないですか。もちろん凄いパタンナーさんはいると思うんですが、自分たちの思いやコンセプトを理解しきった上で作るには、やっぱり自分たちで作るのが 一番だと思うんです。着る分にはいいけど、じゃーその先に何かがそこで生まれたりするのかなと思ったら無いような気がするんですよね。それをこの2人はし んどそうにやっていますからね。

FUGAHUM 08A/W Collection Spiral-Distortion

-耀司さん以外で影響を受けたデザイナーさんていますか

山本-マルジェラとか川久保さんもそうですし新しい概念を打ち出す人というか開拓者みたいな人は好きですね。

三嶋-人間的に魅力ありますよね。自分が物を作ることで何かを変えようとしてる姿勢というか、着易い洋服を作ろうだとか格好いい洋服を作ろうという以外の意識が明確にある。ファッションだけじゃなくアートやグラフィック、映像にしてもそうだと思うんだけど、そういう人たちは一つの分野や枠内でとどまろうとしないというか、もっと言えばそんな壁も考えていないと思うんですよね。普通に面白いことやっていたら新しいものが出来ましたっていう。

-ショーはやられていませんがやはりそれは自分達の中でプレゼンテーション(インスタレーション)形式というのが今の自分達を表現する上で最適だと考えているからですか

三嶋-ショーをやることが興味ないことではないですよ。演出も含めて。ただ今の段階であまりそこに対して意識を持っていけないというか、それならプレゼン テーション形式だとかブックという形にして残るものとしてやっていきたいんですね。それが映像でもいいんですけど。東京コレクションという枠の中で自分達 がやっても面白くないと思うんですよ。

山本-コレクションになると自分達だけじゃなくなるんですね。自分達以外にも必然として関わる人間が増えてきますよね。それに自分はパリのコレクションも何度も経験してますので、良いものも悪いものも見てる分、中途半端に今の東京でやろうとは思わないですね。

-Fugahumとして一番重点を置いている点とは何ですか

三嶋-僕達の作る過程で言うと世界観ですね。僕達だけで完結するのであればの話しですが。その先は、世界観を踏まえた大きな流れ、カルチャーを作りたい。というのが思ってることですね。

-カルチャーですか

三嶋-それは自分達だけで作れる物ではないんですけど。

山本-次のムーブメントが来そうな気配がありますね。

三嶋-もう一年以内に変わると思うんですよね。次の波がばっと来る気配というか。それは時代も不景気であるということが凄く重要で。不景気のあとに来るのって新しいカルチャーだと思うんですよね。不景気によって今まで僕達が出来なかったような話も来たりするんですよ。それはファッションだけに限らず全てに言えることだと思うんですけど。今まで力があってもやらせてもらえなかった若い奴もチャンスをもらって、そのチャンスを生かす力のある人達がこの先を変 えていくんだと思います。

-Fugahumの最終系とはなんですか

三嶋-国が作りたいです。島を買えるんじゃないかと思ってたまに探しています。安い島買って、そこに事務所作ってそこで作るのもいいんじゃないかって。そ こには僕達が認めた人しか入れないです。ださい会員証とか作ってね。実現できるかどうかは別として言ってるのは無料なんで。でも言ってればそのうち出来る のかなって。言えてなきゃ100%できないですからね。

HP – www.fugahum.com/

Interview, Text/Masaki Takida

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