2011年8月5日、浅草のエスペランサ靴学院にてトークイベント「靴におけるデザインの未来」が開催された。
これからの靴のクリエイションの在り方を考える機会としてエスペランサ靴学院が主宰した、
加賀美敬氏、中里唯馬氏、原田剛氏(エスペランサ靴学院 講師)の3者によるトークイベント。三原康裕氏も駆けつけた。
今回は3つのテーマ〈クリエイションの意義〉〈靴について〉〈今後のマーケット予想〉を中心に尽きることない熱いトークを展開。
クリエイションについて加賀美氏は「技術的にはやり尽くされたが、新しいイメージはまだ作り出せるのではないか。」という。また、「最先端の芸術とは芸術家が専門家がやるような、ある他の分野に介入することで見せるもの。着れなくても誰かが感動し、インスパイアを受ける作品を作れることが理想で、これが文化や文明を開く1つのきっかけになるのではないか。」と語った。
さらに中里氏は、「”ないものを作りたい”という本質的な部分で商業的に考えず、未来へのメッセージとして制作することにクリエイションの必要性を感じる。」と述べた。
プロジェクターでそれぞれの作品の写真を見ながらフリートークやファッションの話題を時に笑いを交えてトークは進められ、参加者は楽しみながらも、彼らの言葉に真剣なまなざしを向ける。
”服より機能性が問われ、制約されるものである”とした靴の話では、「ハイヒールの空間には、小さな宇宙があることに魅力を感じるが、それはただの飾りであってもいけないし、かかとを支える機能が備わっていないといけない。」と加賀美氏。
しかし、「靴を”機能性のあるアクセサリー”として捉えるならば、アクセサリーのデコラティブな部分が靴にあっても許されるのではないか」と靴の新しい方向性を語る。
さらに、日本で若者がデザイナーズブランドを買う傾向もヨーロッパのように30~40代が中心となり、デザイナーズブランドの幅も狭くなるのではないか、と今後のマーケットについて「成熟マーケット」を予想。「クリエイト出来る人材が求められる。」と口を揃えた。
三原氏は「感動する靴作り」をすること、「人に考えを共有させる力」が必要なことを熱心に訴えた。
「fashion is dead.」と一言ではあるが、深くて強い考えさせられる言葉を口にした加賀美氏。
「これが良い広がりになって各自が自分の作品作りに対して突き詰め、考える機会になれば」と中里氏が締めくくり、白熱したトークイベントに幕を閉じた。