2010年にロンドンを拠点に結成後、瞬く間にインディーシーンで頭角を表し、あっという間にシーンの注目を一挙に集めるバンドとなったThe Vaccines <ザ・ヴァクシーンズ>。2012年2月には英国音楽誌NMEによるNME AwardのBest New Band部門を受賞した。今もっとも注目されているこのタイミングで2012年9月19日にセカンドアルバム「Come of Age」をリリースするThe VaccinesからギターのFreddieとドラムのPeteにアルバムについて、ファッションについて伺った。
―NMEの 2012年Best New Bandおめでとうございます。どんな気持ちですか?
(以下Freddie→F/Pete→P)
F&P:ありがとうございます。
F:素晴らしいよ、それに今回のNMEアワードでは僕の兄のバンドもベストアルバムを受賞したから一緒にお祝いしたんだ、でも現実じゃないみたいだったよ。
(Freddieの兄はThe HorrorsのTom Cowanで彼らは2012 NMEアワードでBest Albumを受賞した。)
受賞に関するエピソードで、貰ったトロフィーをただオフィスに置くのじゃ面白くないから、2か月ごとにメンバー間で順番に保管して飾るのはどう?ってアイデアがジャスティンから提案があったんだよ。もう大分経つけどまだ僕たちのとこにはまわってきてないけどね!
―受賞したことで何かかわりましたか?
F:自分達は全然わかんないよ。いろんな人がお祝いや良いコメントをくれたりして嬉しかったど、それは人間性が変わるような出来事ではないよ。
P:賞をもらった事よりもお客さんの数が増えて、沢山の人がThe Vaccinesを聴いてくれるようになるというほうがうれしいよ。
F:こういう賞を貰ったりして、まわりの状況が急にかわってちやほやされるようになって人間が変わっちゃう人はいるけど、そういうヤツはバカなやつだよ。
―ショーを受賞してからの待望のアルバムがリリースされますが、前のアルバムから変わった点はありますか?また新しい試みがあれは教えてください。
P:僕たちは僕たちだよ。でも、自然と進化した感じだね。全体的に言えば、このアルバムは前よりもっとエモーショナルでもっとエナジーに溢れているんだ。よりダイナミックになったことで曲の幅が広がったね。あとはバンド全体的な演奏技術もあがっているのでそういった部分で“成長した”という意味で変わったかな。
F:新しく取り入れた試みとまでは言わないけど、今回はレコーディングの時の方法とかでライブレコーディングでやったりしたね。他は今回のアルバムのプロデューサーのEthan Johnsのギターサウンドのつくりかたが素晴らしいので彼にいい意味でまかせて作ったことかな。
―今回アルバムを作る上で影響を受けた出来事などはありますか?
P:バンドとして世界を一緒にツアーしてまわったことで、結束が強くなったよ。もともと僕たちは友達で、ミュージシャン同士だったけど、絆が今やギャングのように強くなって、ステージの上でもお互いの考えがテレパシーのように伝わるようになって、演奏面でも反映されるようになったことで成長につながったと思っているよ。
―今回のアルバムのハイライト(聞き所)と好きな曲はなんですか?
F:着目してほしい点は歌詞においてはアイデンティティーを探求するということについてだね。
アルバムの中で好きな曲はBad Moodだね。というのも、この曲のレコーディングの際に「この音」というギターのサウンドにたどり着くまでかなりの時間を使ったんだ。4〜5個アンプをつけて、20個以上ものエフェクターを繋いだりして音を探してね。だから強い思い入れがあるんだよ。
今回のレコーディングのエピソードではプロデューサーがエアラインというプラスチックのギターをプレゼントしてくれたんだ。50sのギターで同じギターの赤いバージョンの物をジャックホワイトも持っているんだよ。それが本当に素晴らしくて気に入っているんだ。今回のレコーディングではそのギターを使っているよ。
P:僕はアルバムの最後の曲Lonely Worldが好きだね。
これはエモーショナルな曲で心の内面が表されている曲なんだ。エンディングもすごく素敵でね。気持ちが伝わる曲だと僕は思うんだ。レコーディングの時も僕がベースドラムをいじっていたり、ボーカルが入らないところでも少し声が入っていたり、ギターの音が聞こえたり、メンバーが近くにいるという感覚が伝わってくる感じがとてもいいと思うんだ。
―ところでツアーで忙しい毎日だとは思いますが、日本に来てから買い物などしましたか?
F:買い物していないんだよ、それに日本のものは高いね。Tシャツに約300~400ポンドくらいするものがあったりしてすごくクレイジーだよ。以前バンドで世界をツアーするまではファッションにすごくお金を使っていたのだけど、ツアーに入ってしまうと洗濯をするにも大変だし、世界中をツアーするようになってからTシャツデニムスタイルになったよ。
以前は50sスタイルとかが大好きで全身50sスタイルで固めていたのだけど、ドライクリーニングするとかも大変だし、繊細な素材はすぐに駄目になってしまったり色々なことにお金がかかって大変だった。最近は実用的なスタイルだね。
もっとナチュラルで、無理のないスタイルになったよ、自然に着こなすことで自信にもつながって、その人のスタイルになっていくと思うんだよ。
―好きなブランドとかはありますか?
F:お気に入りのブランドはオーストラリアのブランドのHonor Among Thievesっていうブランドでいま僕が履いているブランドだよ。オーストラリアのメルボルンで買ったんだけどすごく気に入っているんだ。そのショップのオーナーは前Royジーンズっていう有名なメーカーをやっていた人で、このHonor Among Thievesのデニムは僕が今まで手に入れた中で一番気に入っているよ、シンプルで履き心地がよくて大好きなんだ。
―日本のブランドで知っているレーベルはありますか?
F:BAPEかな、ロンドンにもショップがあるんだけど、やっぱりすごく高いんだよね。
UNIQLOも好きだよ、UNIQLOやMUJIではよく買い物するよ。Tシャツとかアンダーウェアとかね。日本のファッションはすごく形がいいよね。すごく着易くてしっかりしてる。
―イギリスのブランドでは好きなレーベルはありますか?
F:あんまりないな、イギリスのブランドはあんまり今あんまりよくないね。そんなに面白いものないよね。でもVivienne Westwoodはクールだと思うよ。
P:日本のファッションはすごく面白いね。いろんなものがクールで日本人だったらよかったのにって思う
F:バービカンでやっていた日本のファッションのエキシビション※を見に行ったんだけどすごく興味深かったよ。日本のファッションはすごくユニークで面白い文化だと思うよ。ストリートファッションもすごく面白いしね。
(※Future Beauty: 30 Years of Japanese Fashion 2012年7月28日〜10月8日まで東京都現代美術館で行われているエキシビションが以前ロンドンのBarbican Arts Galleryで開催されていた。)
―音楽とファッションの関係についてはどう思っていますか?
F:ファッションは着ている人がどんな人でどんな事をしている人かを映し出す方法の一つだと思うから。だからミュージシャンにとってステージに現れるときに身につけているファッションは一種のステートメントだと思うよ。
P:ポップミュージックで言えばファッションはみんな同じようになってきてつまんなくなってきた。前はマドンナのスタイルが一斉を風靡したり、斬新で面白いものがあったけど、最近のポップは黒のジャケットに黒のネクタイをして、皆同じような格好をして面白くなくなってきている部分もあるよね。
やっている音楽性や人柄もステートメントとしてファッションにも現れていたほうが面白いと思うね。
とりあえず、面白くてかっこいいものであって欲しいと思ってる!
―(Vaccinesの2人がTシャツを裏返しに着ていたので)そのTシャツは裏返しに着ているのですか?
F:前そでの部分にステッチがあたったのだけど、それが偶然取れてしまったんだ、しかもプリントも何となく気に入らなくて、それでTシャツを何となく裏返しに着てみたんだ、そうしていたら、それがだんだん癖になって、それからTシャツを裏返しにしてよく着ているよ。
―あなたも?
P:うん、Tシャツがツアーで洗濯できなくなってきて着られるものがなくなっちゃって、ツアーグッズのTシャツを1枚もらって着ていたんだけど、自分たちの顔やバンド名が大々的にプリントされているのを自分で着るのもはずかしいから裏かえしにして着たんだ。もともとパンクも破れたのを安全ピンで留めて着ていたっていうのから派生してスタイルになってきたから、必要に迫られてはじまったことや行動からそれがスタイルになっていくんだと思うんだ。
―ファンにメッセージをください。
F&P:来年の2月にまたツアーで来れたらいいなと思っているよ。もし来年まで地球があったらVaccinesを聴きにライブに来てください。そして地球が無事だったことを皆でお祝いしよう。
世界中を忙しいスケジュール中にも関わらず、とても気さくで自然体なThe Vaccines。前回からさらに自分達でも成長を感じることができたというアルバムでさらなる飛躍とともにファンを獲得してゆくことだろう。Tシャツを裏返しにするスタイルが今後世界中のThe Vaccinesファンの証であるようという認識が広がっていく日も遠くはないかもしれない。
アーティスト名:ザ・ヴァクシーンズ
アルバム・タイトル:ザ・ヴァクシーンズ・カム・オブ・エイジ
発売日:2012年9月19日発売予定
通常盤:1CD SICP3585 ¥2,310(税込み) ◎日本盤ボーナス・トラック2曲収録
デラックス盤:2CD SICP3583-4 ¥2,940(税込み) ◎28Pのハード・カバー・ブック仕様 ◎日本盤ボーナス・トラック2曲収録 ◎2012年5月7日行われたUKブライトン・センター公演のライブを収録したエクストラCD付き。