Interview

Johan Ku

2009年、セントラルセントマーチンズMA在学中に、NYのジェン・アート アバンギャルド部門で大賞を受賞するなど、海外でも高い評価を得ている「Johan Ku」。
2012 Spring&Summer Collectionより日本でランウェイショーを披露し、暗闇の中、蛍のようにネオンの光を放つピースは話題を集めた。
イギリスを拠点に、ニューヨーク、パリで活動し、今年3月には日本で二度目となるランウェイショーを開催。グローバルに活躍するデザイナーJohan Ku氏に、ブランドアイコンである”光る素材”について、世界で活動することで見えてくるものを語っていただいた。

Johan Ku 2012-13 A/W Collection

―まず、2012-13AWコレクションの感想をお聞かせください。

コレクションの準備に半年以上かかりましたが、今季の集大成としてショーを行うことが出来たので、良かったと思います。幸いなことに、素晴らしいチームに恵まれ、よい結果を残すことができてました。

―前回に引き続き、光る素材を使ったのはなぜですか。

自分のブランドの大元となるものについて、またビジネス面において何が人にブランドを印象づけているかを考え始めました。ブランドの特徴としてよく知られているのは、チャンキーニットだと思っているのですが、前シーズンに光る素材を用いるという新たな試みを行いました。この試みを行ったデザイナーは自分が初めてだと思いますし、もう1つのブランドの特徴となりうるものだと考えています。なので、光る素材をあらゆるものに応用したところ、いまでは完全に自身のブランドの特徴になっています。けれど多くの人がチャンキーニットが得意だと認知しているので、それら全てを融合させたランウェイショーは行ったことがなかったので、挑戦してみました。

―そもそも光る素材を作るきっかけは何だったのですか。

素材のことは以前から知っていましたが、なかなかファッションに落とし込めずにいました。そして前シーズン、ニットは秋冬の素材なので、春夏コレクションをどうしようかと考えていたんです。
その頃たまたま「ENTER THE VOID」という映画を観て鮮やかなネオンカラーの映像からインスピレーションを得て、これを自分のコレクションに応用できないかと考え始めました。早速光る素材について調べ始めたところ、幸運にも台湾で、ある工場を見つけることができたんです。
それから、その工場と協力してネオンの光る素材を生み出すことができ、コレクションに使用したのです。

―前回と同様、今回も映画からインスピレーションを得ていますがJohanさんにとって映画はどのようなものですか。

デザイナーはとても忙しく、映画を見る時間もほとんどないのが現状ですが、それでも私は空き時間ができると、よく映画を観ます。良い映画は、音楽だけでなく映像やストーリーも素晴らしい。
多くのデザイナーは、絵画や彫刻など、さまざまなアートからインスピレーションを得ていると聞きますが、私の場合、映画はアートと同等なものでそれらを結びつけています。

Johan Ku 2012 S/S Collection

―ニットは手編みだと伺っていますが、編み方はオリジナルですか。

手編みなので特に何か道具を使って編み方を生み出すことはしていません。例えばケーブルステッチを長い間使っていますし、ステッチの種類もたくさん知っていますが、これから新たにケーブルステッチの幅を広げていきたいと思っています。

―服作りの上で、今後より力を入れていきたいことは何ですか。

もっとプリントをしてみたいですね。ニットと光る素材といった特殊な素材が得意だと思われていますからね。だからプリントはあまり得意ではないのではと思われているかもしれませんが、私は最初グラフィックデザインをしていたんです。グラフィックデザインはよくファッションに使われています。特に日本のファッションでは多く使われていると思います。日本の女の子はプリント柄が好きですよね。
なのでこれから、ニットウェアや光る素材のような素材だけでなく、もっとプリントにも取り組んでいきたいです。

―現在、ランウェイでの発表は日本だけですよね。

日本でランウェイを行い、ニューヨークとパリで展示会を行っています。
日本だけでなく、ニューヨーク、パリとまわるのは大変です。(笑)

―ロンドンでは活動されないのですか。

はい、ロンドンではしていないです。学生時代にわかったのですが、ロンドンではバイヤーが来ないからです。オンスケジュールのショーが出来るようになることは難しいです。新人デザイナーにとって、ロンドンにはチャンスが転がっているという話もよく聞きますが、私はちょっと考えが違いますね。ロンドンには、アジアのデザイナーはほとんどいませんが、 イギリスのデザイナーをはじめ、ヨーロッパのデザイナーがたくさんいて、アジア人デザイナーにとってロンドンでサポートを受けることはとても難しいのです。

私は、日本ファッションウィークで初のランウェイショーのチャンスを得ました。初めて行った前シーズンは本当に良いショーができました。もし、ロンドンでオフスケジュールで初のショーをしていたら「あいつは誰だ」というくらいで、だれも関心を持ってくれないかもしれません。
あらゆる状況を念頭において、自分は何か違うことをしなければと考えました。オフスケジュールでやるより、展示会をしたほうがいいと思ったんです。簡潔に言えば、バイヤーが来ないという理由です。ロンドンでの宣伝活動も厳しいですし。

何年か前にオンスケジュールでされているデザイナーさんとお話させていただいたのですが、彼女は、私達にはバイヤーがとても大切だけれど、なかなか商談には持ち込めないと言っていました。パリでも同じことが言えますが、ファッションウィークでコレクションに足を運んでもなかなかオーダーにまでこぎつけないようですね。

―日本ではバイヤーが来る機会は多いですか。

前シーズンではバイヤーが一人Orderされました。まださほど有名ではないですからね。今回はもっと宣伝を増やしました。もっと日本のファンを増やしたいですね。
これからも東京でショーを何度も行っていきたいですし、そのことでバイヤーさんやお客様との距離を縮めていきたいと思っています。

―日本で活動していく上で問題点はありますか。

英語でのメールやスカイプをしなくてはいけないこともそうですが、 海外との距離の問題ですかね。しかしそれほど問題ではありません。
経営のプロを見つけてビジネスを展開していく必要があります。すでにPR会社はありますから、あとはバイヤーの問題です。私達のような新しいブランドにとって必要なのは、バイヤーに見てもらって取引できることです。

―他に進出してみたい国はありますか。

あえて言うなら中国でしょうか。よく中国に行くべきだとも言われますしね。
でも、今のところ現実味はありません。 すでにニューヨーク、パリ、東京で活動しているのでさらに中国までとなると、もう死んでしまいますからね(笑)

せっかく世界の主要ファッション都市で活動しているわけですから、今は東京やパリに集中して、より良いものを作っていきたいと思っています。

Interview:Tomoka Shimogata

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