2007年パリコレデビュー以来、新時代のラグジュアリーブランドとして注目を浴びる「DAMIR DOMA」。ドレープや流れるようなボリューム、レイヤードスタイル等から生まれる洗練された、型にはまらないデザインを発信し続けている。
デザイナー、Damir Doma氏にとって約2年振りの来日となった今回。先月銀座にオープンし話題をさらった「Dover Street Market Ginza」での展開や高級ブランドが軒を連ねるパリ、”フォーブール・サントノレ通り”に待望の旗艦店オープンを控えるなど、今後のさらなる飛躍が伺える。
この来日を機にブランドのルーツを振り返ると共に、その発想と創造性に迫った。
―まずパリで発表された2012-13 A/W Collectionについて詳しく聞かせてもらえますか?
メンズコレクションは様々なカルチャーと美的センスをミックスしています。特に今回のコレクションでは自由でオープンなコレクションというものを明確に打ち出しています。プリントに関してはアフリカの部族や着物などの西洋文化をミックスした新しい提案になっています。
ウイメンズコレクションに関しても同じようなアイデアなのですがメンズより高度なスタイルとなっています。メンズと同様異文化の融合と時代感のミックス、襟の部分はルネッサンス調になっておりジャケットはよりモダンに仕上がっています。
両方のコレクションに共通して言えることはエレガントであるということと前シーズンのコレクションと比べより高度なイメージになっているということです。
Damir Doma 2012-13 A/W Women’s Collection
―3月に行われたウイメンズコレクションではEcole des Beaux-Artsを会場にランウェイショーを行いました。今回この会場を選んだ理由を教えてもらえますか
東京で過ごしているとわからないかもしれませんがパリコレクション期間中は毎時間ショーが行われ、自分の前後のデザイナーさんの会場や予算、サイズなどを考えながら会場選びをしなければいけません。ですので非常に制約があり選択肢はそれほど多くありません。
そのようなタイトなスケジュールの中で自分のコレクションに合った場所を選ばなければいけないということで今回はEcole des Beaux-Artsを会場に選びました。
建物自体は非常に古いのですが会場に使用した部屋は非常に明るく、温かみもあり、清潔感もありシャープな印象ですのでモダンなイメージも打ち出すことが出来ます。
今回のコレクションはルネッサンスのイメージも含まれていましたのでモダンなイメージの会場でないと洋服も舞台衣装のように見えてしまいます。
―この会場はパリコレクションでも頻繁に使われる場所ですが奥のドアのところまで演出(通常はその前に仕切りを置きバックヤードとして使う)として使ったブランドは記憶になかったのでとても新鮮でした。
他のデザイナーさんはドアの前に仕切りを置いて使用するのですが、グリーンがかった美しいドア、それがこの場所の素晴らしい点だと思いますので私としてはそれを隠して会場を使うということは考えられませんでした。ファッションショーを見て頂いたのでわかると思いますがフロアをフェルトで覆い、よりピュアな雰囲気を打ち出しています。
―コレクションを何度も拝見しているのですがDamir Domaのショーでは距離の長い、奥行きのあるランウェイを作れる会場をいつも選んでいる気がします。そういった点にも会場選びの拘りはあるのでしょうか?
そうですね。意図的にランウェイを長くしています。長いランウェイだとモデルがエレガントに歩くことが出来ますし、同時に4人のモデルを歩かせることによりダイナミックなショーにすることができます。
私は長い時間のファッションショーが好きではありません、ファッションショーというのはコンパクトにまとめるべきだと思っています。
会場選びに関しては勿論洋服との相性も大事にしています。ファッションショーというのは全てのことを総合的に考えなければいけません。私の服やヴィジョンに合わせた明かり、音楽、それに合うロケーションを選んでいます。
会場に来られているお客様がただ満足する為だけにコレクションを考えているのではありません。
―Damir Domaのコレクションは美しい素材で作られたドレープのシルエット、流れるようなボリュームに柔らかいテーラリングが特徴的です。そのシルエットを創り上げる為にファブリックが凄く重要だと思います。ファブリックへの拘りを教えて下さい。
エレガントなシルエットを創り上げていますし、動きやすくかつリッチであるということを重要視しています。
ファブリックは私のブランドにとってとても重要です。ファブリックにより全てが変わるとも言えます。ファブリックと言うのは資材でありコレクションのベースになるものです。彫刻に例えるなら彫刻を彫るためにまず材料を考えなければいけませんよね。それによって彫刻の作品も変わってくるのと同じようにジャケットも素材が違えば創り上げた時のヴォリューム感が全く違うモノになるのです。
―素材選びは自らの手で探していったものなのでしょうか
素材は自分で必ず選んでいます。それは私にとって最も重要な仕事の一つだと考えています。素材が間違っていたらそのシーズンのコレクションが台無しになってしまいます。デザイナーというのは素材選びを自分自身でやらなければいけないというのが私自身の信念ですし、素材の80%はシーズンのコレクションの為に自らデザインしたものです。実際今シーズンのプリントのファブリックやストライプもアフリカ的な解釈から私自身がデザインしたものです。アフリカ製ではありませんが着心地や見た感じもアフリカのようなフィーリングになっています。
ファッション業界だと通常はプレミアビジョンなどに行ってファブリック選びをしたりするのですがファブリックメーカーが提供しているファブリックは私にとってはごくありふれたものに感じてしまいますので私はそういうことはせず、10年間あるファブリックのコレクションのアーカイブを見に行きそこから選び自分で手を加えてコレクションに完璧にあうようにクリエイティブに作り変えています。
Damir Doma 2012-13 A/W Men’s Collection
―自身のブランドのデビュー以来一貫してファッションショーを続けています。ウイメンズウェアーのデビューもファッションショーでしたしファッションショーが自身のブランドにとってベストな表現方法だと感じているのでしょうか?
ファッションショーという方法はファッションをプレゼンする為には非常に伝統的なやり方だと思います。ビジネスをやるためにはある程度ルールにのっとってやらなければいけません。ファッションショーをやることで結果が伴う。今のところそれ以外のやり方で結果を出す方法を見いだせていませんので、クラシックなやり方ですが私のブランドにとってはベストな選択だと感じています。
―Damir Domaの作品は一見ユニセックスのようにも見えますが一方で現代の男性らしさ、女性らしさというものを追求しています。メンズとウイメンズでの違いをどのように考えているのでしょうか?
表面的にはそういう風に映るかもしれませんが私にとってユニセックスと言う表現は最悪の表現だと思います。私のファッションをユニセックスと感じるようであれば私のファッションの核となる信念を理解していないのではないかと思います。
私はファッションというものは比例だと思います。例えば肩からウエストまでの比例だとか、ジャケットからパンツまでの長さとか、パンツからシューズまでの長さとかを考えていますので、男性のパンツをそのまま女性に履かせたり、逆にそのまま女性のパンツを男性に履かせたりするということは出来ません。メンズとレディースのジャケットのショルダーが似ていても女性は強い女性を表したい、男性の場合はウエストを違うようにする。勿論メンズとレディースで依存度があることはあります。
ファッションや服の基本となるのは人体であり、比例ということを考えるのは重要なことですが人体に洋服を合わせるというのはとても自然なことです。