Interview

Peachoo + Krejberg

Peachoo DatwaniとRoy KrejbergによるPeachoo+Krejbergの AW2012コレクションが2月29日にパリにて発表された。2004年のブランド設立以降、インドとデンマークという異なるバックグランドを持つ2人が日々の作業の中で素材から受けるインスピレーションやお互いのアイデアを織り交ぜ独自の方向性を作り出している。近代的かつ建築的な構造を取り入れた服作りで定評がある彼らの今季コレクションはそのデザインや、ブラック&ホワイトを中心とした色使いで都会的な印象を残す一方、フェザーやファーを多く使いワイルドライフというイメージも見受けられた。今回ショーの後、3月6日に行われた展示会に伺い2人が共有する服作りに関する様々なこだわり、ファブリックの組み立てなどのユニークなデザインワークと合わせて、今季コレクションのテーマの事、ブランドの詳細など伺ってみた。

―今季のコレクションではフェザーを多く使われていますが具体的なテーマは何だったのでしょうか

イメージを言葉にすると「A woman lost in the nature」でしょうか。そこからインスピレーションを得て人間から動物への変化を描きました。そのためフェザー、ファーなどの動物をイメージさせるマテリアルや深いカラーなど自然を連想させる素材を多く使っています。テーマに関しては毎回、とても抽象的なものしかありません。

―テーマに関しては抽象的なものしかない、との事ですが定まったアイデアがない中でブランドとしての方向性はどの様に定められているのでしょうか

お互いのインスピレーションを頼りにしていますが、一貫して行っていることはファブリックの方向性を一番に定めているという事です。毎回ファブリックの選択からコレクションを作り始めています。都会的でクール、またセクシーな印象を持つファブリック、暖かみのある肌触りのスムーズな素材など、様々なファブリックを選択肢の中に入れています。基本的にはそれらをミックスした時に出る動きが好きなので色々と取り入れて併用する事が多いです。トライアルを繰り返し、それらの素材をどのようにミックスして組み合わせるかを決めた上で頭の中でストーリーに落とし込みます。新しいシルエットや動きを発見したり、技術を取り入れたりする為にもテーマはラフな方が良いと思っています。そのために座って話し合って明確なテーマまで決め込む事もありません。ファブリック以外でも、ボディーシェイプやカラーリング、プリントなど、コレクション作りのプロセスの中で常に動きながらテーマのようなものが出来ていくという事が多いです。

―マテリアルがインスピレーション、ディレクションのキーとなっているという事ですね。
先程は今回のテーマを「A woman lost in the nature」と伺いましたが、フェザーを使う、という所からインスピレーションを得たのでしょうか。それともネイチャーというテーマが先に来ていますか

今回に関してもネイチャーというキーワードよりもマテリアルの選出が先ですね。マテリアルをネイチャーの中から取ったのでネイチャーというテーマを決めました。コレクションではそれら自然からくるマテリアルを現代的にモダンに作り上げる事にフォーカスしました。テーマよりも素材感を大事にしています。

―今回のコレクションではそういったフェザーなどのボリュームのある素材が大胆に使われる事により、現代の生活に落とし込みにくいものも見られましたが、着る側はどの様に落とし込めば良いか教えて頂きたいのですが

上半身が全てフェザーで覆われているピースもあります。あのピースを着たら、バスで席を探すのは難しいでしょうね。あれらのルックスは実際に着る服というよりは女性の美をイメージして作成し、「A woman lost in the nature」を表すビューティーステートメントです。人間から動物への変化を描いていますので、基本的に上半身を全てカバーして動物のように、下半身は女性らしいシルエットを残しています。いくつかのピースに関して着方が難しいのは存じていますが、ビョークなどのアーティストは実際に着ていますし、私たちのステートメントピースは実際にも着て頂けると信じています。またその他のアイテムには何種類も着方がある物もありますし、そういったものが基本的には好きです。

―イタリア製などのハンドクラフトのマテリアルをよく使われると伺っていますが、それはなぜですか。コストは上がってしまうと思うのですが

まず初めには着心地の良さが上げられます。現在では機械を頼っての生産が主流ではありますが、古い時代から使われていた素晴らしい技術は今でも使えますし、そちらの方が生産に適している場合があります。今日では機械を主に使って仕上げのみハンドメイドという方法が主流になってしまいましたが、オートクチュールコレクションも昔は全て手で作られていました。そういったプロセスは今でも大事にする価値があります。実際に私たちのコレクションの中のいくつかのアイテムは100%ハンドメイドで仕上げていますし、我々のアイテムをスペシャルな物に仕上げるためには必要なプロセスです。それにはアートとしてのこだわりもあります。毎シーズン、コレクションのキーアイテムはアートの要素が含められたものを作り続けたいと思っています。また、いくつかのピースはとても長い時間をかけて作り上げているので生産量は限られてきますが他には真似できない技術を使っています。アート面だけでなく、ファッションとしてもクライアントに唯一無二で特別なピースを提供するためにもハンドクラフトの技術は重要です。実際に多くの著名顧客が我々のこういった服を好んで着て下さっています。

―デザイン面には建築設計のエレメントが多く入っていると聞いていますが特に影響を受けている建築家はいますか

設計者がデンマーク出身という事もありますが、Joern Utzonによるシドニーオペラハウスの建築は好きです。小さなものや古いものなどもすべて見て影響を受けていますが、特にデザインワークに影響をもたらしているものは近代建築とモダンベインティングです。それらには以前には使われていなかった技術も多く使用されているのでデザインの参考にしています。

―Krejberg 氏は1999年から2002年にはKENZOのクリエイティブディレクターも経験されていらっしゃいますが、それらの経験はデザインワークに影響しているのでしょうか。日本発の技術やインスピレーション、エッセンスを取り入れたアイテムなどは作られていますか

KENZOでのデザインワークは現在とは全く違う環境で行っていましたし、KENZOは日本のブランドの中でも特殊だと思います。一般的にジャパニーズデザイナーはダークでおとなしいカラーリングが多いイメージですが、KENZOは色使いがとてもカラフルです。更に、ストラクチャーも他のブランドとは違います。KENZOはフラットな構造を基本としプリントやカラーで特徴を出していましたが、対照的に他のジャパニーズブランドは実験的な縫製を多く使用しています。KENZOでは多くの事を経験しましたが、Peachoo Krejbergではマネキンに着せて実験を繰り返し、ファブリックと共にショルダーラインなどあらゆる箇所に新しいシェイプを作り上げるというように、新しい事に常に挑戦しているので、KENZOにいた時の仕事内容やプロセスは現在の物とはまた違うものになります。

―最後に、次回のコレクションに関してはもう準備されていらっしゃいますか、それはどういったものになりますか

次のコレクションに関しては既に取り掛かっていますが、まだ詳細は言えません。キーとなるマテリアルはもう決まっています。

Interview, Text & Translation:Eriko Higashida

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