Interview

Tim Van Steenbergen 2/2

”服にきちんとメッセージ性を持たせる事にもフォーカスしています。将来にわたってブランドのメッセージ、DNAとなる服作りをするというのも大切な職人技術になるでしょう”

→Tim Van Steenbergen 1/2

―技術にも定評がありますが、特にフォーカスしている部分というのはありますか。

あらゆるテクニックに柔軟であるよう気を配っていますが、今季のコレクションではファブリックをいかに使いこなすかに特に注力しました。今季のコレクションにはストレートに裾に流れるラインが必要で、そのためにはファブリックをどう扱うかという事が重要なポイントでした。このテクニックは私のブランドだけでなく、イタリア・ミラノで私が手掛けているスカラ座オペラの衣装にも使用しました。オペラの衣装は2013年末まで続く予定ですし、今後もファブリックの構成テクニックというのは重要な要素です。またオペラ衣装はファッションデザインとはまた違うものなので、それらのクリエイティブテクニックに当面は時間をかけていきたいと思っています。その他、服にきちんとメッセージ性を持たせる事もフォーカスしている技術の一つです。受け取る側の人が服を見る時には、そのバックグラウンドまで考え、メッセージ性を持った服とコミュニケーションをとるようになってきているので、将来にわたってブランドのメッセージ、DNAとなる服作りをするというのも大切な職人技術になるでしょう。ファッション業界の様々な変化を受け、技術面向上の必要性はさらに深く感じるようになっています。最近では、ファストファッション、例えばZARAの洋服でもヴィジュアル的にはハイファッションに近くなっていますし、その他面白いものはたくさんあると思います。ただ、技術面となるとそう簡単にはいかないので、それはハイファッション業界が担っていく所ではないかと思っています。

―オペラの話が出ましたが、オペラ衣装とファッションデザインは別々に考えられていらっしゃるのですか。注力されているオペラ衣装作成技術をご自身のプレタポルテコレクションの中に取り入れられる事もあるのでしょうか。

全てが全てに影響し合っています。ミラノに行き、オペラの衣装作成の仕事をしている際も常に、ファッションの事は考えていますし、インスピレーションを得て反映させる事も多々ありますし逆もまた然りです。ファッションデザイナーとして、オペラの仕事はとても興味深く見ています。ステージ用の衣装はファッションデザインよりも更に深く体の動きについて考えますし、シアター上でどう見えるか、という事も考えるのでコレクションを作成する際に必ず反映させる事が出来ます。そういった理由でChristian Lacroix、Jean Paul Gaultier、Pradaなど多くのデザイナーが今までもオペラの衣装に注目してきました。

―具体的に今季のコレクションの中でその影響を受けたピースはありますか。

(付け襟のピースを持って)このアイテムはヴィジュアルのインパクトが非常に大きいアイテムです。オペラの衣装ではこういったアイテムを多く使います。ステージライトが当たる事を踏まえた上でマテリアルを選んでいますし、大きなステージにも負けないように設計されています。こういった顔回りを華やかにし、アクセントになるアイテムを好まれる女性が多い事は認識しているので、元々はステージ用ですし小さなピースではありますが今季の重要なアイテムの一つとして自身のコレクションの方にも反映させました。

―以前はファッションショーでコレクション発表をされていましたが、現在は展示会の形式を取られていますね。今後ショーを開かれるご予定はありますか。

当面は予定していません。というのはオペラもありますし、インテリアデザインの分野も始めたばかりで、今それにとても時間を使っているので。更に、自身のレーベルに関して言えばファッションショーにはそこまで魅力を感じていません。どの程度レーベルを大きくしていきたいか、などというブランドの目標や方向性によると思うのですが、こういった展示会は開いていますし、その他ストーリー性が伝わるよう、ムービーの作成は行っているので、現時点ではそれで十分だと判断しています。ショーにお金を掛けるよりはクラフトマンシップにこだわりたいですし、クオリティの向上に注力していきたいと考えています。それが私の伝えたいメッセージでもありますので。

―インテリアデザインの活動の方も、メッセージを伝える場になりますね。

まさにその通りです。昨春夏シーズン、インテリアデザインの方では様々なライトをデザインし、プレゼンを行いましたが、そこではインテリアデザインがどの様にファッションに関係しているかという事について述べましたし、インテリアは木や石などのマテリアルがダイレクトに関わりますので私がファッションデザインにおいてテーマとしている環境に関する事柄を伝えやすいという側面もあります。分野は様々であってもこの様にメッセージには一貫性を持たせるようにしています。

―インテリアデザインの他、theoとのコラボレーションでアイウェアもデザインされていますが、その他の分野への進出もお考えですか。

今の所は考えていません。自身のレーベル、オペラ、インテリアデザイン、この3つのプロジェクトで手一杯の状態なので。オペラの衣装作成も2013年まで続きますし、theoとのコラボレーションも今年9月にまた発表する予定で準備を進めています。自身のレーベルもセカンドラインまでありますし、その他シアターピースの作成もあります。ですから、その他の事を考えるのは2014年以降になるでしょうね。

―最後に、他に注目されていらっしゃるアーティストやデザイナーに関して教えて下さい。

毎回沢山の若いデザイナーが登場し、新たなムーブメントを作っているので刺激を受けていますし、小さなレーベルも必ずチェックしています。アーティストに関しては、ネイチャーという同じテーマを掲げたヨーゼフ・ボイスやアンゼルム・キーファーの作品は私のクリエーションに影響していると言えるでしょう。

Interview & Text:Eriko Higashida, Masaki Takida

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Tim Van Steenbergen:
1977 年生まれ。ベルギー出身。2000 年にアントワープ王立術アカデミーを主席で卒業。その後ドリス ヴァン ノッテン、オリヴィエティスケンスで経験を積む。
2001 年、自身のブランド「ティム ヴァン スティーンバーゲン(TIM VAN STEENBERGEN)」を立ち上げパリにて発表。以降、ベルギーのアントワープを拠点に活動。
2009 年のエル・スタイル・アワードで最優秀ベルギー人デザイナーに選ばれる。同年Chine Belgian Design のアーティスティックディレクターに就任。また、アイウェアブランド、theo テオとのコラボレーション・ライン、theo by TIM VAN STEENBERGENも展開している。

URL:http://www.timvansteenbergen.com/

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