Interview

村田 明子 / MA déshabillé 6/7

ショーは総合芸術じゃないけど、音楽も、モデルも観客も、、あって成り立つもの。ライトがあたって音楽がかかってステージにモデルが出て行く瞬間に初めて「自分ってこういうことがやりたかったんだ」っていうのがやっとわかる。でもその本番まで自分のやっていることに対して不安で不安で仕方ないのです

―MA déshabilléの服ってエレガンスをわかってないと着こなせないのかなってそう思います

そうかもしれません。
でも、いつかこれが似合うように頑張ろうとかありますよね。私自身若い時にシャネルの5番の香水なんて明らかに似合わないけれど、、買って「こういうのが似合う女性になれるように頑張ろう」ってやっていました。そういう自分の中での目標って必要だと思います。そういう意味での刺激として持っていてくれても嬉しいです。それ以前に着ていて楽だし、気持ち良いって思ってくれれば嬉しいです。でも街で似合ってない人が着ていたら少し残念な気持ちにはなるかもしれません(笑)。

―買う人は部屋着として買ってくれているのですか。それとも日常着として買ってくれているのですか

みなさん日常着として買ってくださっています。若くてお洒落な方が着こなしてくれるのが凄く嬉しいです。

―ブランドとしてのトータルコーディネートは考えていないのですか

トータルでは考えていません。
兎に角、服を着る時って気分だから、考えないでしょ。
考えれば考える程、無駄。
ショーとかするのであれば考えますがそうではないので。

―ショーは考えていますか

MAとは別でやりたいとは思います。ショーってやっぱり感動する。ラフのショーを見るとこういうの出来たら良いなって凄く思うんです。人生で初めて見たのがアンダーカバーの東京でのショーでその時に村上龍とかUAがモデルで出ていて印象的だったし、パリで何回か見たのも良いなって思います。
ショーは総合芸術じゃないけど、音楽も、モデルも観客も、、あって成り立つもの。学校の時も毎年ショーをやっていたけどライトがあたって音楽がかかってステージにモデルが出て行く瞬間に初めて「自分ってこういうことがやりたかったんだ」っていうのがやっとわかる。凄くエキサイティング。でもその本番まで自分のやっていることに対して不安で不安で仕方ないのです。

―ショーは必要だと思いますか

質の高いショウであればやった方が良いと思っています。
メンズファッションウイークは好きです(笑)。
美男子がたくさんいて目の保養にもなるし。単純に。
でもくだらないショウも凄く多い。そういうのは必要ないと思います。
最近はあまり見ていませんが。。
ショウはティーセレモニーのようなものだと思うんです。茶室でお茶を飲むのをどう演出するのかみたいな、そこに生け花だったり書道があったりして色んな意味が込められている。それと同様に、ファッションショーもファッションと云うセレモニーの様なモノだと思います。ラフはやっぱりショウがうまい。緊迫した御茶会の後に背筋をのばして帰りたくなるようなそんなショウをやっていると思います。

―コレクションの素晴らしさ、ライブ感ってUstream等の動画でも体験することって可能だと思いますか

それは無理だと思います。
Ustream等の動画は大体正面からの映像ですよね?でもファッションショーはほとんどが横から見るもの。洋服って横から見ないとわからないもの。正面の写真しか掲載されていないウェブや雑誌も同じだと思います。基本的にはそれだけではわかりません。
それだけではなく会場にはアナ・ウインター等やセレブがいて彼らが何を着ているか、どういう配置で座らされているか、モデルが歩いている時にどんな顔で観ているかなどのとても些細なことに拘っている、、(勿論こだわっていない人も多いでしょうが)意味のわからない政治力感染と空気感染の交わりあいが合宿みたいに続くのが楽しいのです。

―それは凄くわかります。ショーでのライブ感ってやっぱり生じゃないと伝わらないものですよね。だからこそやっぱり生で見てみたいと思うんですよね

生でモデルが歩いているのを見ているとゾクっとする感覚がある。ショーに行ってstyle.comを見ると全然違うなって思うこともたくさんあったし、その逆もあった。
ファッションの人達って上の方にいくと、魔法使いというか、、それなりにスターダムにいる人は魔法のステッキを持っているような人が多いと思います。
ヘアの人とかメイクの人とか、Inge Grognardとかはその最たる例だと思います。
凄い人は一回殺してから自分の味で活かしてあげるみたいなそんなことが出来るんです。生け花も花を一回殺してから立てる。
そういうことが出来る人が本当のクリエイターだと思います。
そういう厳しさが自分には欠けています。
やりたいとは思うけどそこまでアヴァンギャルドにものごとを考えられません。

―村田さんは凡人なんですか

凡人です。自分は彼らのように魔術師にはなれない。
どこかでいい子ぶりっこしたいのでしょう。
全てを捨てて出来る人は凄いと思います。

―どんなファッションショーをやってみたいですか

人が泣いてくれるようなショー。ショーが終わったあとにそこでの感動を伝えにバックステージに人が走ってくるみたいな、、ショー。
何かわからないけどこの感覚はアツすぎるっっっーー!みたいに思われる、そんなショーが出来たらいいですね。

―感動させるには何が必要だと思いますか

感動というか、舞台ですから、ディシプリンが必要だと思います。
ちゃんと計算して自分のコンセプトにあるモデルを使って自分の美意識を表現する。
ディシプリンという点では甘いのだと思いますが、最近で言えばジェンファン(Jenny Fax)のショーも感動して泣きました。
アジアとかで売春婦の子がダサいのだけれどテカテカのポリエステルの生地みたいなもので思いっきりお洒落している。その風景って好きなのですが彼女のショーを見ていたらそれを凄く想い出しました。ちょっと背伸びしてドレスアップしてみようみたいな。わざと似合ってない感を演出している。

―MIKIO SAKABEと最前00のショーの時も泣いたそうですね

泣きました。チンポムの時も泣きましたし。MIKIO SAKABEの時では常に泣いています。

―完全にファンですね。逆にwrittenafterwardsの時には少し辛辣な意見だった気がします

笑。。ファンですねえ。。(笑)
writtenafterwardsのショーは、自分がショーに歩かされるのにメールインビで招待される。それでドレスアップして来てくださいって何様だよ(笑)って。それもBCCで。そこでやる気がなくなる。大事にされていないように感じてしまう。そういう気の使い回しに欠けていたと思います。
勿論逆に、気を廻しすぎた結果、時間や体力がなくなってしまったのかもしれませんが。
MIKIO SAKABEはインビテーションもなく勝手にいって勝手にみる。
千人も呼んでいるし。
ミキオさんとは学生時代同じクラスでありながら殆ど会話していませんでしたが、知り合って10年近く経ちます。
段々にMIKIO SAKABEのショーがエモーショナルになっていく様を見ているとある意味授業参観に来ているような気分なのです。「みきお良くやった!」って。
それにミキオさんのショーそのものが好きなだけじゃなく、チンポムだったり最前00とのコラボレーションでファッションという言語域が膨らんだ様子に感動するのです。

―服の良さだけでは感動はさせられないのですか

それは難しいと思います。音楽もそうだし最高のメンバーと、最高のロケーションが必要です。
でも日本では洋服をみせる為の最高のロケーションがきっと少ないでしょう。
私が卒コレで使った会場は世界遺産の場所プランタンモレトゥス博物館です。
リンダに「そこの庭が好きだから交渉して!」と頼んだら、彼女がコネクションを持っていて実現させることが出来ました。
日本でそういうことをやりたいのであれば桂離宮とかで着物のショーをやるのが一番良いのかもしれません。

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