“既にあるもので僕は十分だし、既にあるものから何が作れるかしか考えていないです。ブルーじゃなくて黒ければいいのにという考え方ではなく、ブルーのGジャンをどうすればいいものになるかという、既にある条件をどう変換していくかという考え方です”
―そもそもですがYEAH RIGHT!!という名前の意味は何ですか
最初に古着屋にリメイクを作って持っていったときに、タグを書かないといけないということになって。「YEAH RIGHT!」って実はスパイクジョーンズが撮っているスケボービデオの名前で、とりあえずこれでいいやと思ってそれに決めました。ビデオはビックリマークが1つですけどさすがにまずいかなと思って2つにしました。それでしばらくして始めて展示会をすることになって僕もさすがに変えたほうがいいかなと考えていたのですが、井村に相談すると「そのままでいいじゃん」という答えが返ってきたので以後そのままこの名前で活動しています。
―英語表記のみで正式な読み方がわからない方も多いと思いますが
「ヤーライト」とよく言われますね。一応正式には「イェーライト」としていますが、僕はどっちでも好きに呼んでくれていいかなと思っていますけどね。スペルだけ間違わないでいただけたら問題ないですね。
―良い意味でこだわりがあまり無いという印象も受けてしまいますが、一方でこだわっている部分を教えてください
うーん。手法としては難しいことはしていなくて、時間かかったり大変だったりはしますけどできたものを見れば誰でも作れるものばかりです。特別な技術も使っていないですし、、、、。
よく「ゆるい」と周りの人たちに形容されていますが、ゆるいという言葉の定義がよくわからなくて喜んでいいのかどうなのか複雑ですね。型にはまっていないという意味で言ってくださっているならいいかなと思いますけど、一応一生懸命働いているのにゆるいと形容されると、さぼっているんじゃないかと言われているようにも聞こえてしまって。
―手作り=「ゆるい」というところもあるかもしれないですね。あとやはり型にはまらないというところも
それはあるかもしれませんが、分かりづらい言葉ですよね。逆にゆるくないブランドってどこだろうと思うし。
―恐らく緻密に計算されたというか、例えば私はよくデザイナーの話を聞くことがありますが、そこでこちらが質問しなくても次から次へと答え以上のものが返ってくるブランドもあります。コンセプトに始まり何を考え、何を見せたいか明確になっているブランドが私の考えるところの「ゆるいの逆」という言葉のニュアンスかなと思いますが
なるほど。ぼくのように「こだわりはどこですか?」と聞かれてすぐに答えられないブランドは確かにその定義では「ゆるい」に含まれますね。でも僕としてはリリースとかでもあまり文字を入れたくないんですよね。文章になるとどうしてもきっちりしてしまうというか、文章にする為に考えられた言葉になってしまうと思っているところがあって。デザイナーインタビューもネットですぐ見れる時代になって、みんなの頭の中が文字に変換された言語の方が受け取りやすくなってきていると思うんですよね。そうなってくるとデザイナーは言葉を選んで建前ばかり言うようになってしまって、よくデザイナーについて知らない人たちはそのまま鵜呑みにしてしまい、誤解が生じてしまうし何よりつまらない。僕もインタビューをされて実際自分の記事をみると、不自然に感じることがよくあります。もちろん僕がしゃべったことなんですけど違和感というか、何と言うかみんな文字に頼りすぎているんじゃないかというか。要は何でもかんでも言語化されることがすごく苦手なんですよね。
―書く側からするとテーマやコンセプトが明確だと書きやすいですからね
そうですよね。逆にPOTTOの山本さんのインタビューがchange fashionに掲載されていましたけどあれはすごく面白いとおもいました。恐山とか意味はよくわからないんですけど山本さんについてはわかったような。まあこうやって色々考えてみるとやはり僕のなかでは言葉と感情がイコールにはならないというか、フラットにはならない。
―デザイナーがテーマを決めるのはその方がプレスは書きやすいから。さらに書きやすいということは伝わりやすいということで、それはつまりバイヤーと消費者に対しても同じだと思います
それがルール化されるとデザイナーは語らなければいけなくなる。そして表面的な言葉が増えてきているという現状が今だと思います。語らなければあいつは何も考えてないということを言われてしまう。
―NOZOMI ISHIGUROの石黒さんも最近ではショー後のインタビューで自身のコレクションをメディアに向けて説明されています
本当ですか。今まで出なかったのはただ単純にメディアが苦手だったんだと思います。積極的にしゃべりたい人でもないと思いますが。
―今日本はブランドの数がすごく多いし、SHOPも多い。インディペンデント系のブランドが凄く増えている印象を受けます
売れなくても自分でやれることのほうが納得できるし責任ももてる。みんなそういうスタンスになってきているんじゃないかなと思います。
―そういったデザイナーが旗艦店を出し、自らが接客をする機会も多いですが、デザイナーに店頭で会えるということで次の世代の刺激にも繋がると思います
ただそこで疑問を感じるのは、若い世代はデザイナーにある種の神格化を求めていると思うんです。なので、すぐ会えてしまうというタイプのデザイナーって求められているのかな?って思いますね。
―会えるアイドルのデザイナー版ですね
それで会ってみて「やっぱデザイナーってすごい」と思うのか、「なんだ、ただの兄ちゃんじゃん」と思うのか。身近な存在になることでみんなが描くデザイナー像はどうなるのか。
―社会的にはそのほうがいいと思われる気もしますが
どうなんでしょうね。わからないですけど。
―接客時には言葉で伝える必要があると思いますがそれは大丈夫ですか
会話なので大丈夫かなと思います。先ほどの話しで懸念していたのは、なんでも文字に置き換えられてしまうということだったので。
―今はネットが全盛期で、全てネットで買うという人もいると聞きます。そういうネットユーザーには接客は抵抗あると思いますが
そうですね。僕もやはり多くのデザイナーが思うようにネットで販売することは最初はすごい抵抗があった。でも今はそう言ってられない状況になってきている。そういう世の中だと認識するしかないのかなと。ただこういう店舗ができたことでぶれないというか、ネットを使っても軸足はここにあるという思いがあります。
―この店舗はどういう経緯で決めたのですか
店舗とアトリエを併設できる物件が自分たちの理想だったので、即決しました。
―眠っているものをよみがえらせ、そして古いものと新しいものをミックスして生まれ変わることで時代を流れていく。リメイクの醍醐味だと思うのですが、リメイクを続ける理由は何ですか
いやそのままそれが答えでいいですよ。まじめに言えば。ざっくり言えば生地屋に並んでいる生地だけ使って作るのは嫌だし、だったら古着屋に置いてある古着でもいいじゃんという感じで。まあ正直なところ最初は手軽だったということもあります。
―オリジナルで生地を作ったりはされるんですか
作ったことはありますが今は作ってないです。既にあるもので僕は十分だし、既にあるものから何が作れるかしか考えていないです。例えばブルーのGジャンがあればこれをどうすればいいかしか考えていないんです。ブルーじゃなくて黒ければいいのにという考え方ではなく、ブルーのGジャンをどうすればいいものになるかという、既にある条件をどう変換していくかという考え方です。
―リメイクに使う商品は常に集めているのですか
集めていますよ。古着倉庫に行って一枚一枚ピックアップしています。量産も考えて数量の多いものを選ぶようにはしています。結構定番ものは買い貯めています。
―ラフォーレ原宿の新たなインタラクティブスペース「container(コンテナ)」でCHRISTIAN DADA企画の「&ROID/アンドロイド」にも参加されましたがきっかけは何ですか
(CHRISTIAN DADAの)ZOO君とはCOMMON SLEEVEでも賛同してもらっているので、どんな企画でも快く引き受けるつもりでした。
―COMMON SLEEVEのように共有してインスタレーションをすることも考えていますか
この店舗での販売は考えています。ただCOMMON SLEEVEでのインスタレーションというのは、袖を交換したところをみせるということになりますが、あまりそういう交換したルックを見せるのはよそうかという意見もでているので、インスタレーションをするかどうかは微妙です。見せないほうがおもしろいという意見が結構あるので。
Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi, Masaki Takida
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YEAH RIGHT!!
2005年設立 06 S/Sより展示会による発表をはじめる
河村 慶太
1980年生まれ 文化服装学院卒業 NOZOMI ISHIGUROアシスタントとして勤める
井村 美智子
1980年生まれ 文化服装学院卒業 (株)エイ・ネット sunaokuwahara企画として勤める
La La La by YEAH RIGHT!!
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