Interview

runurunu 3/3

“自分がわかる作り方をしている限り想定の範囲内のものしか出来ないと思うんですよ。自分は自己表現をしたいと思っているのではなく自分が一番驚いていたいんです。見たことないものが見たいから”

→runurunu 1/3
→runurunu 2/3

―runurunuの洋服はどのような洋服として捉えられているんですか

色使いからか僕の服はコスプレのような服に思われたりすることもある。でも実際そういうのには興味がなくて、アニメも好きか嫌いかで言ったら嫌いなんです。アニメ全般が駄目ということではなく興味の対象が違うだけだと思うんですが。
ただアニメが好きではない理由はそれが温い現実逃避に見えてしまうから。内容も日常みたいな話ばかりですよね。それを見てその日をごまかしているだけではないかなと思っちゃうんですよね。
特に最近のアニメを見て思うのは前以上に繋がりみたいのが重要になっている気がする。前は色んな種類があったけど今は使っている記号が前シーズンのアニメから意図的に引用していたりして理解してないと楽しめないだろうなって。
アニメに限らず、特に現代は引用と比喩だけで成り立っているものが多く、本質が消費されて分かりやすさや共有がそれにすり替わっていると思います。価値や意味を抹消して並列させるのは必然ですが、向いている先がその場しのぎの消費目的の様な気がします。村上隆さんが自分に都合よく引いたルールの上で遊ばされるのも嫌です。
アニメがファッションに昇華されだした頃というのはテーマとしてもそういうのが新鮮に映ったんだろうけど、今は共有されすぎてしまって新鮮味がない気もします。

—どんなところからインスピレーションをえているんでしょうか

偶然性が一番、それがインスピレーションですね。イメージがおりてくる、そういう時もあります。
ほんと何から影響を受けるかはわからないんです。自分はホームレス時代のことが強く影響を受けていると思うんです。作っていて、さっき切った赤がこっちについちゃったみたいな、目に見えないんだけどそういうことがシルエットには凄く影響しているんです。
僕は物体の暴力、物体のエネルギーみたいなものを目に見えるようにしたいんです。だから服を作っていても、絵を描いていても、小説でも何でも一緒で物体のエネルギーを見えるようにしたい。頭の中に常にイメージはあるんだけどそれをどういう風にしたら形に出来るか、そのやり方がわからない。だから偶然性を使うんです。

—でも今シーズン(2011-12 A/W)に関しては偶然性だけに頼らずパターンもひいて作った洋服があると言っていましたよね

自分の中で凄く重要なことなのですが自分がわかる作り方をしている限り想定の範囲内のものしか出来ないと思うんですよ。自分は自己表現をしたいと思っているのではなくて実験というか自分が一番驚いていたいんです。見たことないものが見たいから。
頭の中に最初3あって、パターンをひいてやったらそれは3にしかならないけど立体で全然違う角度からやったらそれが10になったりもする。それをすることで自分の知覚とかも広げてくれる。
今シーズンパターンを引いたのは立体をやってみて服の作り方がわかりだしたから。どこかに負い目みたいなものが少しあって必然みたいなことがやりたかったということです。デザイン画は描いてないんですけど完全な操作がしたかった。それまでは偶然の力を借りていたので。
でもやっぱり、生産とかの面で立体を何体も量産するのはもの凄い手間がかかって次のシーズンに新しいものを作ることが大変。それが正直な部分かもしれないです。

—今シーズンは蟻地獄をテーマにしていました。それに中国で買った人形も重要なインスピレーションと言っていましたね

そう限定してしまうのはちょっと違うのですが、(飛行機の)乗り換えでちょっと降りただけですが中国のエネルギーは凄かったですね。実は(中国だけでなく)パリに行った時のイメージも出ている。パリの街や、パリで見たロンドンショールームのイメージとかそういうのが凄く印象に残っていた。パリの街は汚いというのが凄く印象的だったんですよ。汚いものを受け入れているというか、日本はその逆で汚いものを隠そうとしている。重要そうな古い建物に落書きとかがあってもそれすらも人間がみんな受け入れてくれるみたいなのがパリ。それが服のどこに影響したのと言われたらよくわからないですが。


—どういう時に服を作るのですか

以前は期間をおいて作ったりしていたのですが今は毎日でも作りたい気持ちがあります。実際は量産をやらなければいけないのでそっちを先にやらないといけないのですが。
作り始めは無心が多いですね。縫ってみて「あれ」って思ったら何かが結びつく。記憶というかなにかが急にイメージに結びついて服になるんです。

—値段の付け方があまいというか、少し安すぎるのかなとも感じたのですが、その点はどう感じていますか

値段の付け方は正直よくわからないです。でもあの値段だから何回も着る服ではないと思うんですよ。そう考えるとこの値段なら買うのかなという値段にしています。

—レディース中心の洋服になるんですよね

一応そうですね。ユニセックスなのですがサイズ的には細いのでどうしてもそうなっているのかなと思います。サイズは最初に作ったものより少し大きければLにしたりして、そんなにサイズ感とかは考えてないです。

—作った結果、展示会に出さないことはあるんですか

それは凄くたくさんある。正直そっちの方が多いと思います。出来るだけ全て完成させようと思うんだけど途中で諦めてしまうこともよくある。「もう絶対に無理だな」って。でもそれを解体して服にすることもある。要するに格好良くなればなんでもいいんですよ。
例えば良いところまでいっていたんだけどはさみを入れて台無しになったり、そういうことは良くあります。でもそれをまた縫い直したら嘘くさくなるんです。
たまに全部投げ出したくなることもありますね。

—洋服を見せる場としてディナー(ANGHRH, BALMUNG, bodysong., obsess, runurunu)とコクーン(JUNYA SUZUKI, BALMUNG, runurunu, bodysong.)をやっていますがその2つはどう違うのですか

コクーンはオーダーをつける為のもの。いわゆるファッションです。ただコクーンでもこの間の展示会の空間は今までで一番やりたいことが出来ました。
ディナーはコクーンとは違いやりたいことをやる場所で2007年くらいからはじまりました。混ざり合っちゃうみたいな感覚が面白いんです。同じ空間で全然予定していなかったことが起きてしまうというか。一つの空間を合同で作るのですが当日まで他の人が何を作っているか、何を持ってきているかわからないんです。
そこで受ける影響は凄く大きいと思います。


—今後の目標はありますか

特にないです。今のところは服を作り続けられたらそれで良いと思っています。とりあえず今は作りたい。服を作って何かを言いたいとかそういう気持ちはよくわからないけど見てもらいたい。衣装っぽいのは今はやりたくない。ちゃんと着る服として出したいんです。それに今は可愛い子の為に服をつくりたい(笑)
だから展示会もやって色んな人に見てもらえたらと思っています。それに音も作ってみたい。どうするとかはないけどただ音を作ってみたい。日常の音を切り取って、それを加工して音楽にしたいんです。いわゆる雑音を面白いと思うかどうかなんです。でもそういうのを抽出するのが好きなんです。服も断片みたいなものが好きなので。

INterview & Text:Masaki Takida

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