“ぼくはいつも全体のムードについて考えているね。各ピースをデザインするというよりは全体のアウトフィットをデザインする感じだね。僕にとって、メンズウェアっていうのはよいシルエットを創り出す事なんだ”
—ショーンはファッションデザイナーという仕事が本当に大好きなんだね。それじゃあ次に、日本について。さっきも日本のことについて沢山話してくれたけど、去年の夏の旅行で初めて日本に行ったんだよね?
そうだよ。
—Vogue Homme Japanのインターンもしたって聞いたんだけど、どうしてそうすることになったの?何か日本を選ぶきっかけとかがあったの?
元々日本には僕の親友といっしょに旅行をする予定だったんだ。東京に1ヶ月ほど滞在して、他の地域でも数週間を過ごそうと思っていたんだ。もともと小さい頃から日本にはすごく興味があったからね。僕の父の友人が以前日本に住んでいて、持って帰って来てくれたお菓子とかテディベアや変なおもちゃとかにすごく夢中だったんだ。
—小さい頃から日本にはすごく興味があったんだね。
そう、本当に小さい頃からね。日本のものは僕が知っていたものとは全然違ったしね。それで、元々コレクションのリサーチのために日本に行こうと思ったんだ。でも何か日本に関するコレクションにしようと思っていたのだけど、何にするかは決まっていなくて。Vogue Homme Japanについては、東京に出発する数週間前にロンドンでVogue Homme JapanのファッションディレクターのShun Watanabe氏のアシスタントをする機会があって、そのときVogue Homme Japanのストーリーのためにアクセサリーを製作することを委任してもらえたんだ。すごく嬉しかったよ。
実際に東京でのインターンは、最高だったよ。Vogue Homme Japanは少人数のチームだったのだけど、すごく素敵で、皆すごくハードに働くんだ。世界的に有名なヘアスタイリストのKatsuya Kamo氏と一緒に働けたのもすごく嬉しかったし、Shun氏のこともすごくすごく尊敬しているよ。本当に素晴らしい機会だったね。
—なるほど、元々日本に行く予定をしてたところに、Vogue Homme Japanでの素晴らしいチャンスが舞い込んだんだね。
もともと僕からVogue Homme Japanにコンタクトを取ったんだ。Vogue Homme Japanは僕にとって一番のファッション誌で、立ち上げられてからずっとファンだったからね。そのような素晴らしい雑誌が自分に興味を持ってチャンスをくれるなんて想像できなかったけど、思い切ってインターンをしたいっていうメールをしてみたんだ。そして実際インターンする事ができるようになって。それが東京に向かう1ヶ月くらい前で、ロンドンでの撮影の時にShun氏のアシスタントをすることができて、そして東京でも撮影をアシストすることができたんだ。僕はほとんど日本語が話せないから、プレスとのやり取りとかを含めたフルタイムでのインターンをすることはできなかったけど、Vogue Homme Japanでインターンを体験できた事は本当に素晴らしかったよ。
-Vogue Homme Japan以外での日本での体験はどうだった?東京だけじゃなくて京都とか広島とか、いろいろな場所にいったと思うのだけど、ファッション的な観点、またそれ以外の一般的な観点でも、どう感じた?
とにかく本当に日本に恋をしたよ!(笑)今もすごく恋しく思うよ。日本の人々はすごく正直で、スマートでおもしろくて素敵だったよ。ファッションの面では、若い男の子や女の子を見ると、自由なセンスを感じたし、欧米ではあまり見られないスタイルだったと思う。欧米の人々はトレンドを追うものだと思うんだけど、日本の人々はそうする必要がないように感じていて、ただ自分がしたいスタイルをしているように思った。すごくクールだったよ。日本のファッションはすごくフリーだと思った。だから僕はすごく惹かれたんだ。早く戻りたいよ!(笑)
—日本のファッション以外の側面はどうだった?ショーンは京都とか伝統的な土地にも行ったと思うんだけど。日本の歴史的、伝統的な面はどう感じた?
すごく美しかったよ。京都、大阪、高松、奈良、別府、、、別府は特によかったかな。
—別府?(笑)温泉にも入ったの?外国の人にとっては温泉とか大浴場って変なものだと思うけど(笑)。
そうだね(笑)。でも僕は温泉大好きだよ!別府は本当によかったね、火山による天然の温泉が沢山あって、煙が地面から上がってきたり。まるでデヴィット・リンチの映画みたいに感じたよ。あとは奈良も鹿が沢山いたり、大仏を見たりしておもしろかったよ。とにかく日本には本当にすることがいっぱいあったよ。全てに興味があったし、、、そういえば食事もね。日本食は最高だよ!それぞれの地域に違った食べ物があったしね。でもやっぱり僕にとって一番よかったのは人々だね。ダブリンの小さな田舎町出身で日本語も話せない僕らにも、皆すごく優しく迎えてくれてフレンドリーだった。日本にいるあいだ何度も道に迷ったのだけど、15分もかけて道を教えてくれる人もいたよ。日本の人々はお互いを尊敬していると思ったし、本当に素敵だったよ。それが日本のどこへ行っても一番よかったことだね。だから日本はすごく力強い国なんだと感じたよ。だから地震による災害など、今日本で起こっていることにはすごく悲しく思うよ。一刻も早く回復するとこを願っているよ。
—ありがとう。それじゃあ次のテーマに移るけど、ショーンがすごく尊敬しているアーティストとかデザイナーは誰?マリリン・マンソンが大好きだったのは知ってるけど。
マリリン・マンソンは最高だよ、今でもね。好きなデザイナーやアーティスト、フォトグラファーとかスタイリストはいっぱいいるよ。僕は幸運にもファッション業界の様々な経験を持つ人たちとよい関係を持っていて、本当にそれらの人々の手がける仕事が大好きだよ。デザイナーについては、僕は特定のデザイナーやブランドを信じきっているってことはないかな。いつも追いかけているブランドとかレーベルはないよ。でもバーバリーは大好きだね。すごくしっかりと作られているし、ディテールにもすごく注意が払われているしね。バーバリーのコートとかジャケットとかを見てみると、ものすごく細部にも着目されているんだ。バレンシアガとかもそうだと思う。そういうようなしっかりと作られた服はすごく好きだよ。
—しっかりと作られているとか、ファブリックの質とか、機能的な面とか、そういう細部にすごくショーンは着目しているんだね。
そう、あとUndercoverもそうだよね。パンツにランダムに施されたジップとか、Tシャツのポケットとか。服をほんの少しおもしろくすること、ファブリックとかカラーとかフィット感とか、どのように服が作られるかっていうところだね。
—では実際、どのような服をショーン自身は着るの?どのような場所で買ったりするの?
うーん、プリントシャツはすごく好きだね。ヴィンテージショップでも買うし、デザイナーのショップでも買うときもあるよ。例えばこのプリントシャツは金沢で2ポンドで買ったんだよ。他には、レングスの普通とは違うアイテムも好きだね。クロップされたパンツとかジャケットとか、すごく長いレングスのTシャツとかシャツとか。でも特にいつも決まったものがあるって訳ではないかな。
—いつもチェックしている一番好きなデザイナーとか、いつも何かを買うショップとかも特にないってこと?
僕自身何か特定のテイストはもっていると思うけれど、特定のブランドとか決まったスタイルとかはないかなぁ。
あ、でもRaf Simonsは大好きかな。
—僕もだよ!Raf Simonsは本当にかっこいいと思う。
ロンドンに移って来た頃、ラフが手がけた全てに本当に夢中だったよ。実際すごくいいものも持ってるんだ、、、これは2001年秋冬コレクションのレザージャケットだよ。すごく重いけど、いいでしょ?
—すごくかっこいい!
特に僕は一定のブランドを信仰している訳ではないけれど、ラフがしていることはいつも見なきゃって思うね。
—僕にとってもラフはすごくスペシャルなデザイナーで、もし一番好きなデザイナーを選ばなければならないとしたら、僕はラフを選ぶよ。
ラフは本当にかっこいいね。ラフの最初のショーは見た事ある?スクールボーイで、テーラードのコートとかがあって、、、シンプルなんだけどすごくかっこいい。
—いわゆるスクール・パンクだね。僕が今思ったのは、ショーンがラフシモンズを好きなのは、ラフがいつもユースカルチャーであったりティーネイジャーのフィーリングを表現していたからかなと思うんだけど。
そうだね、権威への反抗であったり。僕が表現したい事と似ているところはすごくあると思うよ。
—そうだね。またテーマが変わるんだけど、どうしてレディースではなくメンズウェアを選んだの?
多くのファッションを勉強する人にとってウィメンズウェアを選ぶ事は自然なことだと思うし、僕もウィメンズに行くべきかなとも思ったけど、いややっぱりメンズにしようと思って。僕にはメンズウェア以外の選択肢があるようには思えなくて。ウィメンズウェアも将来してみたいとはすごく思うけど、メンズウェアからスタートしたし、僕が実際に知っているのはメンズウェアだしね。ウィメンズウェアは好きだし、ウィメンズをしようとするアイデアも好きだけど、今知っているのはメンズウェアだから、ウィメンズをするときにはJ.W.Andersonのように他のロンドンのデザイナーがしているようなアプローチになると思うよ。彼はメンズウェアのマインドからウィメンズウェアにアプローチしていて、彼のウィメンズはガーリーな女性っていうよりは、もっと力強い感じの女性を表現していて、おもしろいと思う。
―メンズウェアとレディースウェアは大きく違うと思う?最近はユニセックスの服も多くなってきているけど、ショーンにとってメンズとウィメンズの違いはどういうところかな?
まず、メンズウェアは絶対に変わって来ていると思う。ランバンのクリエイティブ・ディレクターのAlber Elbazが言うには、ファッションっていう点では過去10年間で女性は強くなって来ていて男性は弱くなって来ているのだけど、弱くなるにつれてだんだん美しくなって来ているんだ。僕はその考えはすごく正しいと思っていて、男女間の違いはあいまいになってきているし、例えば男性にドレスを着せて撮影したりっていうのも可能になっていると思う。それでも、そういう男性は多くはないし、まだまだ男女間での違いはすごく大きいと思う。それに男女間の境界線をなくしていくことはできるけど、なくしすぎても過度にゲイっぽくなったりするから、うまくデザインするのはすごくハードなことだと思う。バランスを取る事がすごく大事。自分自身のコンセプトとかを通して、過度にゲイっぽくなったりフェミニンになったりしないようにバランスを取っていく事が重要だね。
―実際にデザインをするときは、マスキュリニティについて考えたりもする?
ぼくはいつも全体のムードについて考えているね。デザインをするときはたいていスタイルを通して考えていて、もし僕がスタイリストだったらどうスタイリングするかなとか想像して、各ピースをデザインするというよりは全体のアウトフィットをデザインする感じだね。マスキュリニティは大事だけれど、それが全てではないし、マスキュリニティは自分がもともと表現したいムードのなかに存在する一つの要素であると思う。
―僕も今メンズウェアは面白くなってきていると思うし、変わってきていると思うし、同時にマスキュリニティそのものも変わって来ているのではないかと感じるんだ。マッチョとかみたいな従来のものとは違う、何か新しいマスキュリニティというような。特にメンズウェアは、男女間の伝統的な境界線を越えて、マスキュリニティを再考しながらますますおもしろくなってきているとも言われていると思うんだ。ショーンとショーンのコレクションにとってのマスキュリニティとはどういうもの?例えばVogue Homme Japanのエディトリアルとかを見ていると、そういう何か違うマスキュリニティをすごく感じるし、、、なかなかうまく表現できないのだけど。
言っている事はすごくわかるよ。僕にとって、メンズウェアっていうのはよいシルエットを創り出す事なんだ。それが一番大切な事で、その後に質感とか生地とかカラーが来るんだ。さっき言ったAlber Elbazの言葉は現在のファッションにおけるマスキュリニティの役割にも共鳴すると思うよ。Vogue Homme Japanはフリーなマインドを持っている数少ないファッション誌のひとつで、ディレクターやエディターの人たちは、すごく自由な感覚で服をみていると感じるんだ。キャットウォークのルックとほとんど変わらないルックのエディトリアルをしている雑誌も多いと思うのだけど、Vogue Homme Japanはムードを見て、いろいろな服を分析して作り上げられていると思うんだ。それこそがエディトリアルのあるべき姿だと思う。本当に素晴らしいと思うよ。
―ほんとうにかっこいいよね。あと、現在のショーンにとって特定のメンズのアイコンっているの?今、レディー・ガガに代表されるように多くの女性ファッション・アイコンは次々と出て来ているように思えるんだけど、メンズはどうかな?
メンズのファッション・アイコン、、、その点ではメンズウェアとウィメンズウェアは大きく違うね。多くの男性は好きなセレブの外見を見習うというよりはブランドのイメージによって買い物をしているんじゃないかと思う。ブランディングは今すごく重要に思えるね。でもデヴィッド・ボウイ、セックス・ピストルズ、スヌープ・ドッグとかは皆デザイナーの仕事やメンズウェアの移り変わりに影響してきたと思う。知っての通り、僕のファッション・アイコンはマリリン・マンソンだったよ。
―なるほど。それでは最後に、時間があるときはどんなことをしてる(笑)?
うーん、どうだろう(笑)。いつもハードに働いているから、、、少しワーカホリックかも(笑)。
―初めて会ったときはロンドンっぽいとうか、パーティとか好きそうだと思ってたけど、そうでもないみたいだね(笑)。
そうだね(笑)。この前のファッションウィーク中でさえあまり遊んでないよ。メンズウェアの日だけは、よし1日休もうと思って、J.W. Anderson、Christopher Shannon、Topman、Cassette Playaとかのショーを見に行ったんだ。今何が起こっているかっていうのを知るのは大事だしね。でもパーティには全然いかなかったよ。今はコレクションもできたし少しはパーティもいったりするかもしれないけど、美術館とか展示会とかに行く事が多いかな。
―一人で時間を過ごすのも好き?僕は結構好きなんだけど(笑)。
僕も大好きだよ(笑)。