2010年10月19日rooms LINKで行われたThis is Fashionのイベントの一つとしてMIKIO SAKABEの2011年春夏コレクションのランウェイショーが行われた。”PARTY”をテーマにした今コレクションはアーティスト集団のCHIM↑POMとの合同ショー。twitterやwebなどを通じて一般の人を招待し2000人もの人がショー会場に集まった。
―まずMIKIO SAKABEのコレクションについてお尋ねします。スタイリングも印象的でしたがイメージとしてはどんなものだったんですか
(スタイリストの)シュガーさんがやってくれたのですがストリートでパワー、楽しさを伝えるモノがテーマにありました。ショーのストーリーとして白から色んなプリントが入っていくというものだったので最初は白から始めました。そこには性を感じないものにしたかったので顔を隠して匿名性を持たせ、男か女かもわからない感じにして。その方が今回の人間像みたいの感じてもらえるのかなって。
―アメリカ国歌に君が代を載せてショーが始まりました
混ざるということをキーとして考えた時に自分にとっては日本とアメリカの混ざり方も印象的だったからです。生でそれをやったというのはそこに対する緊張感とかぴりぴり感とかが伝わった方が良いと考えていたからです。あの君が代ってずっと繰り返している声を聞いた時に何か落ち着かない空気になったと思うんです。それはやっぱり生の方が強いと思います。
―歩くスピードがあれだけ早かったのはなぜですか
もともとはサンダルをはいてやろうと思っていたのでリハーサルまではサンダルを履かせてやっていました。だけどそれを履いていたら階段も多かったし普通には歩けてもあのテンポで歩くのは不可能だった。ゆっくり見せてというよりも服そのものだけじゃない空気感をどう見せるかというのが今回の最大のポイントだったから色々考えて最終的にとったのがライブでの空気感だった。服を細かく見るのはファッションショーじゃなくていいと思うんです。それは展示会で見せれる。ファッションショーでは演出したいことを伝えたい。そう考えたらあのスピードとぴりぴりした、いらいらしたモデルの歩き方が大事なのかなって。
―リハーサルと本番ではスピードが全然違ったようですね
倍以上のスピードにはなっていたと思います。サンダルを取ったことでスタイリングが崩れたという声もあったんだけどそれでもサンダルを取るべきだったなと今でも思います。例えば最後の4体だけサンダルを履いて見せることも出来たんだけどそういう計算自体が今回のコレクションには必要無い。雑さも含めてあの歩き方が今回のコレクションや空気に合ったし、時代にも合ったと思う。
―曲のイメージはどんなものだったんですか
パワー自体を前に出せるものと若者の持っているいらいらしたストレスとかそこにある鋭いものを感じるというのが一つあり、一方で大人が聞いたら嫌悪感を抱くようなものというのも一つのキーにあった。それが服とリンクするような音楽にしたいと思った。
―ショーのラストはパレードですよね
そうですね。あれが今回の胡散臭さとか混ざるということ全てを含めて空気感にあったんです。今の著作権問題のひどいガサツさが気になっていたんです。クリエイターは潰すくせにファッションのコピーはなんでもありという今の時代ってなんなのというのをユーモアを持って演出したいというのでフィナーレのパレードになりました。コピーで儲けたいというのであれば良くないけど、コピーも仕方次第ではそれがクリエイションになることもある。それに関してあまりにもざっくりと駄目と言いすぎなんじゃないかと思う。
―今回なぜCHIM↑POMと一緒にショーを作り上げていこうと思ったのでしょうか
広島でCHIM↑POMがピカというのをやって(『ヒロシマの空をピカっとさせる』)それについて色々な問題は起こったし軽率な部分もあったから嫌悪感を抱いた人はいっぱいいるかもしれない。でも彼らがそういうことをしたことによって若い人達がそういう問題に対して触れることが出来なかったという部分をこじあけたというのは何よりも評価できると思う。実際僕の周りや僕自身も含めてあれがきっかけで広島について考えたのは間違いない。だからそこは凄く新しかったし評価できる部分だと思っていた。根深い問題に対して日本人はかなり凍結させられて話せない問題が増えてきている。そういう風に若い人達が話せるようなきっかけをつくるということはアートとしての一番大切な部分の一つだと思います。逆にファッションってきっかけ作りとか何か深い問題を深く語るというよりはもうちょっとスタート地点として楽しむとか、何かを知るきっかけにするというのはとてもやりやすいツールかなと思ったのでCHIM↑POMと今回一緒にやろうと思ったのはそのテーマがきっかけだったということと彼らがやっていたことや態度に共感出来たからです。
―コレクションを作り始める前から今回はCHIM↑POMと一緒にやるということを決めていたのですか
CHIM↑POMとやれたらいいなというのは思っていましたがCHIM↑POM側からOKが出るかどうかはわからなかったから彼らとたとえやれなかったとしても同じテーマ、若い人達が触れられない問題を触れていくというところをファッションで表現したいというのと、「メッセージ」というのが今回のショーでキーになっていたから今回のテーマでやろうとは決めていました。
―CHIM↑POMも同じテーマ「PARTY」で映像作品を作ったのですか
僕から今回のコレクションテーマをまず最初に説明して、メッセージ、ショーの演出とかも含めて最初に会った時に話をして「こういうコンセプトでやりたい」と言ったら凄く共感してくれた。だからある意味今回のCHIM↑POMがやった作品も僕のやったテーマと一緒にやってくれているものです。
―それぞれの作品というよりは一緒に作り上げていったという感じですね
洋服は当然僕自身なんだけどショーというものに関しては一緒に作り上げようということで始めました。
最初は今回のコレクションの話をしていて着ぐるみも使うし、スモークも使うという話をしていてその中で当然予算の問題もあるし僕のやる演出というのを全部投げた上で何が出来るのかを考えてもらった。それで最終的には映像になりました。
―最後にモデルとして出演したCHIM↑POMですが顔出しをしなかったのはなぜだったんでしょうか
顔を出すという話もあったのですが、エリーちゃんだけしか顔を出さなかったのはCHIM↑POMと話しあった結果顔を出してもわからない人が多いんじゃないということになったんです。それだったら知らない人達が出てきたみたいになるのは嫌だからもうちょっとファンタジーなままポジティブに楽しいまま終わる方がいいっていうことで脱がなかったんです。
―でもモデルとしては使おうってことだったんですね
それも最初は実は使おうとは思っていなかったんです。演出上最後の最後まで悩んだ結果一応全体を通して繋がりはある、最初のフィナーレで全てがまとまってということを考えた時にCHIM↑POMも着ぐるみを着せて色々なところでお互いのクリエイションが混ざっている方がまとまるのではないかというのがあったから彼らが着ぐるみを着て登場したんです。
―デザイナー2人も着ぐるみを着て登場したら面白かったですよね
着ぐるみ自体が5体しかなくてエリーちゃんを入れるとCHIM↑POMだけで6人いるのでそれは無理だったんです。最初はCHIM↑POMが燃やした着ぐるみを着てもいいんじゃないか、燃えてどろどろになった着ぐるみを着てみんなでフィナーレもいいんじゃないかという話もあったんだけど思った以上に着ぐるみが燃えカスになってしまったらしくてそれも難しくなった一つの理由です。
―あのシュールな映像は実際にやったものなんですか
CHIM↑POM達自らタオルに水付けたりして入って熱くなるまでやってって、危険だけど自分達で全部やっています。僕も撮影現場は立ち会っていないのでわからないのですが本人たちはかなり楽しんで映像を作ったそうです。燃えてガソリンをかけたりしているけど凄く楽しそうにしていてそのバランス感が凄くPARTYだなって。怖い感じだけど楽しく踊っていて。
―楽しんで・・・
やることは聞いていたので知っていたのですがガソリンをかけたらどれだけ燃えるのかとかもわからないし僕も演出家も凄く怖かったですね。だけど彼らは一度火のアート作品を作ったことがあるらしくて「灯油とか実験してやったことがあるから大丈夫です」と言っていて。でも怖かったですね。
―フィナーレは何を意味していたんですか
フィナーレはみんなでまとまって出てきてパーティって。ファッションショーだけど半分はアートだったからただのファッションショーとは違うもの。ファッションショー基準で言ったら僕のやったエレクトリカルパレード的なところまでがファッションショー、後半からはかなりアートに近いものになっていたしその全体をまとめるフィナーレとしてファッションショーのフィナーレというよりももっと演劇とか舞台的なフィナーレの方が合うと思って全員で出て行って挨拶をしようって。
続く
ohh mikio this is so cool