Interview

ohta 6/6

「どういう風になりたいとかはありません。自分が楽しいと思うことを形に出来たらそれをきっと面白いと思ってくれる人が世界に絶対いるはずなので。自分が人として成長しながら作れればいいですね」

―太田さんが服を作る意味はなんですか

服を作ることによって自分が良い風になりたいというかお金じゃなくて精神的に豊かになりたいというか、良い生き方をしたいというか。その為の手段というかそういう意味合いが強いので外のことはあまり考えられないですね。だからデザイナーとしてはどうかなとは思うんですけど。
あとは仕事としてやっているので生活する為ですね。

―売ることを意識してデザインすることが苦になったりはしないんですか

それは多いですね。「ここをこうした方が絶対面白い」というのがあっても出来ないですよね。そこで無視して「やればいいじゃん」とも思うんですけどそれで結局ある意味迷惑かけることがある。今順番的にやるべきではないと。というのは僕の場合は生地屋さんだったり工場だったりというのはそんなに多くないけどずっと付き合ってくれているのでそこにも良い循環を生みたいんですよね。さっき経済のことはどうでもいいって言ったんですけどそれは凄く大きいビジョンの問題でその大きなビジョンは僕にはどうにか出来る力は無いと思っている。でも自分の近いところには少しでもそういうことをしたいなと思っているのですがそういう環境をまだ自分は作れていないんですよ。それは金銭的な面が多いんですけど。

―毎回同じ工場を使っているんですか

なるべく僕は同じ所でやっていきたいなって思いますね。

―助け合っていきたいと

簡単な言葉で言うとそんな感じですね。それは金銭的な意味だけではありません。

―10A/Wのムービーはどんなイメージで作られたんですか

安息の場所というタイトルでそれにまつわる話ですね。アニメーションと実写を混ぜて。

―展示では林檎が印象的でしたが何か意味があるのでしょうか

名刺とかにも使っているんですけど意味は無いんです。林檎が好きなんですよ。食べるのもそうなんですけど形も好きで。『安息の場所』という部分には関係ないです。ただohtaというブランドに関係しているだけで。僕が思う食べ物の象徴なんですよね。

―では安息の場所という言葉からイメージされた物というのはなんですか

簡単なところで言うと柄ですよね。鉛筆で絵がたくさん書いてあるんですけどその家にきっといるであろうお父さんとお母さんと子供の生活日曜品みたいのが書いてあって並べているんです。

―安息の場所という言葉から一番最初に浮かんできた言葉はなんですか。家族の風景ですか

違いますね。僕は川でしたね。そこに一人でいるところが浮かんだんです。よくよく考えてみると外っていうものと自分の家の中っていうものと、一人でいることと、友達や家族といること、その4つのキーワードがあって、それが交わる接点みたいのをインスタレーション、場所でやろうと思った。なので家の中に入ったら砂がおいてあったとか内か外かがわからなくてぼやけるような感じになっています。

―砂場は子供にとっての安息の場所なんでしょうか

子供にとってということではないですね。夢中で遊ぶということがその場所になり得る事も有るという解釈です。

―あの空間自体が自分にとっての安息の場所だったということですね

そうですね。実際は人がたくさんいたので違いますけど。イメージとしてはそうです。灯りの量だったり。素材に関しては安息できるものって固いものが皮膚にあたるのって僕は違うんですよね。シルエットもそうで締め付けられるものってそうじゃないんですよね。緩いものだったり柔らかいものなんですよね。

―靴はどういうイメージだったんですか

宮崎駿のラピュタの歌ありますよね。パンとかを紙袋に詰めてどこかに行くみたいな歌詞があるんですけど。その時に履いてそうな靴をデザインしたんです。あの歌はいいですよ。

―ブログには続けるのが苦しいと思ったことはないと書かれていました

苦しいけど辞めるという選択肢はないですね。苦しいからどうやるかっていうのが大事なんですよね。色々苦しいんですけど。作るのは苦しいわけではないんですよね。でもその為にあれこれ考えなきゃいけないという部分は苦しいということを生みやすいんですよね。

―作品は感想文みたいなモノなんですか

そうですね。

―では売り上げは通信簿みたいなモノなんでしょうか

それは通信簿とは思っていないですね。売上で5を付けたかったら売れるものだけを作ればいいですし。だから通信簿ではないですね。お金は良い形で作らなければいけないと思うので。

―その意味とは

自分が儲ける事によって自分だけが儲けるわけじゃないと思うんですよ。その周りの人も恩恵を受けるわけじゃないですか。そうするとやっぱり循環する血液みたいなものでそこでとどめてもいけないし。自分が潤うことによって他の人も潤う。それが多分良いお金の作り方だと思います。でも逆にそうじゃないお金の作り方をしている人の方がお金を作れたりしている現実ではあると思うんですけど。それは僕にとって精神的に良いものを生むものではないので。だからその質なのです。

―自分が作り続ける必要のある服とはどんなものなんですか

わからないですね。探し中です。

―どういう人に着てもらいたいとかはありますか

それはないですね。良いと思った人が気に入って買ってくれればいいですね。勿論お店に関しても格好良く置いてくれるお店に置きたいなと思いますけど別にそんなにないです。隣のブランドがこれだからということで自分のブランドが変に見られるようであれば所詮それまでの力しかないと思っているので、誰かが買って着てそこでどうかという問題だと思うんですよね。

―目指しているブランド像はありますか

ないです。

―どういう風になりたいとかはありますか

ないです。自分が楽しいと思うことを形に出来たらそれをきっと面白いと思ってくれる人が世界に絶対いるはずなので。自分が人として成長しながら作れればいいですね。

―自分が満足いくものを作ることが出来たらブランドを辞めるのでしょうか

辞める事はないですね。自分が満足することはなさそうなので。生きていくのって大変じゃないですか。ちょくちょく、ふわっと消えたいなって思いますし。そういう人間なので多分ブランドを辞める時は死ぬ時ですね。

Interview:Masaki Takida

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