Interview

Alexandra Verschueren

2009年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業し2010年のイエール国際モードフェスティバルでグランプリを受賞したアントワープ出身の若きデザイナーAlexandra Verschueren。新人デザイナーの登竜門として世界で最も権威があると言われているイエールでの受賞で世界的に注目を集める彼女にインタビューした。

―今回イエールで大賞を受賞しましたが始まる前から賞を獲れると思っていましたか。またイエールに参加した他のデザイナー達の作品はどう感じましたか

私がイエールで賞を獲れるなんて想像したこともなかったです。イエールに参加していたデザイナー達全てが力強い作品を提案し、彼らの長所が表れていました。また全てのコレクションはとても違った側面を持っていたので、思うにその中から一人のデザイナーを選ぶのは凄く大変だったのではないかと思います。

―あなたがイエールで披露した作品について説明してください

私がイエールで提案したコレクションはドイツ人アーティストのThomas Demandの作品を見たことから始まりました。彼は毎日の生活から物体(キッチンや空のオフィス、バスルームやエレベーターなど)を紙で再創造しそれを写真へと落とし込むのです。
写真を見ると何かそこに異変を感じるかもしれません、しかし本当に意識的に見た後だけにそれが偽物だと認識することが出来るのです。それはあなたの見た掃除機ではありません。新しくクリエイトされた掃除機なのです。彼は現実と解釈のはざまであそんでいるのです。そして毎日の人為的な生活の事を表現する手段として紙を使っているという事実が私は好きなのです。
またデザイナーとしては常に紙と向き合わなければいけません。アイデアを書き記す為、スケッチする為、そしてドローイングする為。パターンはそこから生まれるのです。それから私は考紙上でのアイデアをどのようにガーメントにトランスレートすることが出来るのか考え始めました。その結果私は手でプリーツしたりカットしたりファブリックを折ったりドローイングすることによってファブリックをまるで紙のように扱うことに挑戦しました。私は日本の折り紙で用いられるような手法をガーメントに使いそれが独特なシェープを生み出しました。彫刻のようなピースをクリエイトするという考えはなかったのですが。
また紙を使うことにより全ての種類のプリントを使用することが出来ました。吸い取り紙のインクのシミのようなもの、全く加工のされてない子供たちのドローイング、そしてノートの青い線など。要するに私のコレクションは紙に集約されているのです。

―ファッションに触れたきっかけはなんだったんですか、またなぜデザイナーになろうと思ったのですか

私はずっと洋服が大好きで、気まぐれな人間でした。デザイナーの全く異なる様々な要素をひとつに組み立てるという部分が好きなんです。色を選び、プリントを作り、ファブリックを選び、テクニカルドローイングをする、スケッチ、ソーイング、パターン、そしてどのようにコレクションを発表すればよいのか考えるのです。
デザイナーという仕事は様々な側面をもつ仕事・ビジネスでそれがまた興味を保ち続けるのです。

―アカデミーで何を学びどのように影響を受けましたか、またなぜアカデミーを選んだのでしょうか

私がアカデミーを選んだのはとても単純なことです。理由はアカデミーの評判がとても良かったということ、そして私がアントワープで生まれ育ったからということです。
そこで学んだことは誰かの真似をするのではなく単に自分らしくなるということです、そして自分が得意ではないことに得意になろうと挑戦しました。アカデミーでは自分の得意なこと、そして不得意なことに向きあわされるのです、そしてどのようにそれらを対処すればいいのか学ぶのです。

―あなたにとって「アントワープ」という言葉にはどんな意味がありますか、そしてあなたのクリエイションにおいてどのような影響をもたらしたのでしょうか

“アントワープ”という言葉は家に戻るということです。街自体からひらめきをうけているのかどうかというのは重要ではありません、ただこの街にいると存在を消すことが出来るのです。アントワープではとても平穏に暮らすことが出来る。それは例えばNYで生活していたら出来ないことです。
また全ての友人や家族がここにいるということも事実で(彼らはみな違ったことを学んでいます)、私が自分の作業に集中するのを応援してくれています。私は『ファッションシーン』に必要以上に関わりたいとは思っていません、ただ自分が出来るこに挑戦するだけです。

―ファッションデザインやグラフィックデザインにおいてのあなたのインスピレーション源はどこですか

一般的な意見で言うとインスピレーション源というのはたくさんあります。(全ての違った分野、そしてそれがファッションかどうかというのは必要ではありません、アート、デザイン、さらにクラフトや化学、文学・・・・)
また愛、友人、アーティスト、本・・・・・・それら全ては私の作品に反映しています。例えばThomas Demand, Clyfford Still, Agnes Martin, Sol lewitt, Donald Judd, Dan Flavin, Fassbinder, Wes Anderson, Richard Serra, Michael Heizer・・・・・
―あなたが作業に取り掛かる際に重要な要因はなんですか
コンセプトそれにテクニックやマテリアルの使い方ですね。私はまた形や機能も必要不可欠な要素だと思っています。

―他とは違うあなた独自のスタイルとはどういうものですか

私は大抵とても冷めきったコンセプトから考え始め、自分自身の感情をインスピレーションにすることはありません。私はむしろそれを忘れ、自分の作品に没頭したいのです。そういった意味では他とは違うと言えるのかもしれません。

―あなたの作品に強い影響を及ぼしたデザイナーや人物はいますか

特にいないですね。ファッションに何が起こっているのかフォーローしなきゃいけないのが私の役目だとしても、私はデザインをする時やコンセプトを考えている時は出来るだけ雑誌やファッションブログなどを見ないようにしています。またそれこそがデザインをしている時に自分自身の世界観を作る唯一の方法だと思っています。
しかしDries Van Notenは尊敬しています。彼はファッションの波にのまれずに自身のデザインに忠実であり続けるデザイナーです。彼はガーメントの美しさを表現しています。そしてそれこそが彼のデザインや美学をタイムレスにさせているのだと思います。
私はまたサンドラバックランドを尊敬しています。彼女は自身の作った実験的なガーメントをエッセンスを失うことなくコマーシャルピースに落とし込むことが可能なデザイナーです。それらはまさに私にひらめきを与えてくれるのです。

―今の時代にデザイナーがぶち当たる壁とはなんですか

私が思うに今はファッションにどう貢献できるか何も考えずにスタートするデザイナーの数が多すぎると思います。全てのフィールドにおいてブランド、ガーメントなどがありふれておりそのほとんどが特に必要ないと思います。そしてそれがまた更に若手デザイナーにとって注意をひきつけることを難しくさせていると思うのです。また勿論、経済の状況も自分達で何か始めようと思うような良い状況ではないですよね。

―ファッションデザインはあなた自身を表現するモノと考えますか

間違いなくそうです。デザインこそが完全に自分自身を注ぎ込めるものです、そしてただ自分自身が本当にしたいことをしていることなのです。“何か新しい物をクリエイトする”それこそが私がデザイナーになりたいと思った理由なのです、デザイナーはそれ(クリエイト)をしなければいけませんがそれは簡単に達成できることではありません、常にクリエイティブであり、はっきりとした答えも見えないまま解決策を見いださなければならないのです。

―将来のビジョンを教えてください

私は一歩下がって自分を見つめ直しそこから将来について考えると思います。私は自分自身の力で何か始めたいんです、そうすることでファッションに貢献したいんです。
そしてファッションが以前のようなペースを取り戻し、ただ単に消費するのだけではなくその職業、ガーメントにリスペクトするようになってくれればと期待しています。

Interview, Text & Translation:Masaki Takida

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