“商業的なニュアンスで服作りをするのではなく、イメージやビジュアルを固める作業をしていきたい”
―10S/Sでの展示会が初めてとのことでしたが展示会をやろうと思ったのはなぜですか
今までお客さんの顔を知らなかったのでどういうお客さんが買うのかということを知りたかったんです。
―でも展示会に来るのは基本的にはバイヤーですよね
そうですね。でもバイヤーだとそのバイヤーが属しているお店はどういうお店か、はたして自分達が狙っている層のお店は買うのかということを理解することが出来ますよね。
―結果はどうだったんですか
勉強になりましたね。次はこうしようとか明確になりましたし。ただ思ったのNyteって地味なんですよね。だからあまり他のブランドと並べると駄目なのかなと思いました。
―具体的な意見としてはどのようなことを言われたのですか
一番言われたのはカットソーが無い、インナーがない。だからセットで売れない。カットソー、ニット以外は全部あるんですけどカットソーはあまり手をつけたくなかったんです。本当に無駄になりやすいところじゃないですか。量も作らなければいけないですし。カットソーをやるのであればそれだけやればいいし両方やるのは難しいですよね。でもやらなければいけないのかなとは思いました。
―地味とは言うんですけどCEMENTの田島さんもインタビューで言ってたように着ると凄くラインが綺麗なんですよね
でも逆に着ないとわからないんですよ。そこも反省点で着ないとわからないってどうすればいいんだろうと思って・・・でも着なくてもわかるっていうのも嫌だなって思うんです。一点だけ派手なものがあったり目につきやすいものがあれば良いのかなとは思ったんですけど。
―テーラードが印象的ですがご自身の得意なアイテムはなんですか
ワンピースに力を入れていたはずなんですけど布帛ばかりが売れてしまったんです。元々パタンナーがテーラードが得意なんですよね。
―ブログに今年はブランドの方向性やイメージを集約させる年と書かれていましたが
方針として今後3年くらいは商業的なニュアンスで服作りをするのではなく、地味というイメージを取り払う為にメディア的なものにどんどん進出していった方が良いのかなって。どちらかといえばイメージやビジュアルを固める作業をしていきたいですね。
―具体的にどういったことをしてそのようなイメージを付けようと考えていますか
お店に置くラインとは別に一点物やクチュールアイテム、そういうものをショーピースとして置いていく。特にXANADUなんかはスタイリストの出入りが多いのでそういうスタイリストさんが持って行くようなものを割と多めに作って置いておこうかなと思っています。
―どういう人に着て欲しいと思いますか
YUKIちゃんが凄く好きなんです。体型的に難しいと思うんですけど。椎名林檎さんも好きですね。東京っぽいというか90年代東京みたいのが根本のイメージとして自分にあるので楽曲はともかく東京事変が出している雰囲気というのは同じ感じを受ける。だからそういう人に着てもらえたらいいですね。林檎さんの衣装的な要素が入っている洋服が好きなんですよね。彼女が普段着ている物と物を作る時に選ぶものは凄い差がある。そういうギャップに惹かれるのでばりばり衣装というのは好きではないんですけど日常着に衣装的な服が入っている服装が好きなんです。
―コンセプトはありますか
毎回自分達の中で決めてはいます。
―10S/Sのテーマを教えてください
古臭い近未来都市みたいなイメージです。人から勧められた映画ってあまり見ないじゃないですか。その友達には実績があってその前の2009A/Wのテーマが流されない女、自分なりのスタイリングを持っている人っていうのがイメージにあったんですけどその時もその友達が持ってくる情報、資料やDVDがテーマになるんです。その時はアニーホールだったんですけど。2010S/Sはブレードランナーを勧めてくれて見てみたら何か面白かったんですよね。2008年の春夏がクラシックとかノーブルなラインを作っていたんですけど70年代、70年代後半、80年代、80年代後半、90年代みたいにきているのかなと思ってて。ブレードランナーは後半が全然近未来に見えないところが好きで、ただ古臭いだけではない雰囲気というのが妙に魅力的だったんですよね。あれ20年前に作っているのに2007年にメーキングを作っているんですよ。1時間半くらいのメーキングで本編くらい長いものなんですけど今のハリソンフォードが喋っているしそれぞれみんな20年経ってもその時の作った時の感情というのが未だに残っていて。作り方も凄くアナログなんですよね。CGを全く使っていなくて。そういうアナログでモードに仕上げるみたいな手法を出来たら良いなと思ったんです。なので古臭い感じとか懐かしい感じのラインをテーマにしました。
―2010-11 A/Wはどうなんですか
次はクレオパトラみたいな感じですね。エジプトとローマのクレオパトラ7世とアントニウスの男と女たちの交流をミリタリー調とクラシック調にのせて。それもまた映画なんですけど。映画ばかりだなとは思うんですけど、文章とか書物って信用できないんですよね。言葉で書かれているものって勝手に書き換えられるじゃないですか。だったら勝手にイメージして作ってあるもの、全く同じものをテーマにしていても別世界というところが凄く滑稽に見えてきて映画からインスパイアされるところが多いですね。今回は女も戦うんだなって。前回はブレードランナーで一つだったんですけど今回は具体的なビジュアルが甲冑とか鎧がイメージなのでエジプトから飛んで16世紀とか18世紀とかその辺の時代も入れたかったのでエジプトと関係無いような物も見ました。ジャンヌダルクやエリザベスとか。女性が武装している映画、女性の持つ2面性を表現しています。
―一緒にやっているパタンナーさんはどこまで関わっているんですか
僕がデザインして指示書を書いてパタンナーに渡してパタンナーがそれを見てパターンを引いてシーチングをしてトワルを作ってサンプルの本番に入ってという感じですね。
―ブランドに関しての方向性は関わってこないのですか
関係無いですね。ブランドの方針については決めないですけどここのデザインはどうなのということは聞きますね。
―メンズラインも始めたそうですね、なぜメンズをやろうと思ったのですか
XANADUに来るお客さんの中で「Nyteはメンズは無いんですか」とか「Nyteのあのレディースのテーストが好きだけどメンズないんですか」って言われたんですよね。うちはユニセックスが凄く嫌いなんです。体型も違えば性別も違う。洋服は別々にあっていいと思うのでメンズの需要が多いのであればメンズもやろうかなって。でもあまりうまくいかないですね。わからないんですよね。レディースに関してはこういうような洋服を着て欲しい、こういうような雰囲気の女性がいて欲しいと思うけれどもメンズに関しては普通のVネックのニットにスラックスで良くないか?Tシャツにジーンズで良いじゃんって思うんですよ。でもそれって自分がわざわざ作る必要があるのかなって。
―レディースと違って理想とする男性像がないということですね
ないですね。全部削ぎ落としたくらいが良いのかなと思うんですよね。
―Nyteのレディースの男性版ということではないんですか
そうではないですね。なので作る時に凄く困難になるんですよね。どうしようと思ったんですけど自分が着たいやつを作ろうと思ってデザインをしています。
―メンズは最初にジャケットを作ったのはなぜですか、自分がそれを着たかったからですか
そうですね。自分がジャケットを着たかったというのはあります。ただ(デザインした物ような)肩パッドが入った洋服はあまり自分は着ないんですけど。だからそれはXANADUというお店をイメージした洋服で作りました。Nyteの服ではあるけれどもXANADUというお店が発信しているものとして素材も選んだというのはありますね。
―今後もレディース中心のブランドであることに変わりは無いですか
そうですね。興味が無いわけではないんですけど着るものは男と女は別が良いので。メンズをやるにしてもレディースのNyteのニュアンスというのが出るのかはわかりません。レディースを描くようなニュアンスで描けないので。自分が着たいやつと思うとなんとか書けるんですけど。
続く