NYを拠点に活動する写真家長坂フミ氏。2001年に単身でNYに渡ったあと雑誌『STREET』のカメラマンを経た後、Dazed & Confused等各雑誌でエディトリアルの撮影を行う一方で世界各国で写真展を開催。12日からはMIDWESTでドキュメンタリープロジェクト『Dreaming till the sun goes down』の写真展を行う彼女にメールにてインタビューを行った。
―写真に興味を持ったきっかけ、写真家を目指した理由を教えてください
写真に興味を持ったきっかけは18歳の時に住んでいたLAで友達のセレクトショップ”NAKED”の壁一面がロシア製のカメラLOMOで撮った写真でデコレーションされていたのを見たのがきっかけです。速攻LOMOを購入し自分の見たものや友達を撮り始めました。しかし、それは趣味程度でプロを目指そうとは全く考えておらず、ファッションが好きでずっとスタイリストに憧れていました。
私は2002年頃からSTREETという雑誌で撮影をさせていただいていたのですが、その頃は写真家を目指すというよりもオシャレな人たちを見つけて撮影を通して友達が増えて行く事が楽しかったので、本格的に写真家を目指しだしたのは2005年の”boys keep swinging”というプロジェクトを撮り始めてからです。
―ドキュメンタリー作品とエディトリアルの撮影では写真のアプローチの仕方は違いますか
違います。エディトリアルとはファッションストーリーなので写真を見ればわりと内容の理解が出来ると思いますが、ドキュメンタリーとは写真にその撮った”人”や”背景”が現れてくるので、見ている人に写真とまっすぐに向き合ってもらい、どういうキッカケで、どういう内容で、撮影時のエピードや体験を相手に言葉で伝える事が大切だと思います。
―ドキュメンタリー作品を撮り始めた理由はなんですか
先ほどにも書いた”boys keep swinging”という作品が初めのドキュメンタリー作品だったのですが、それは作品を撮ろうと思って始めたのではなく友達と遊んでいる時に遊びで撮り始め、その写真の数が自然に多くなり撮影場所もNYの他にパリ、ミラノ、ロンドン、東京などと増えて行く事でそれらの写真を集めると面白いのではと後々気づいたのがキッカケでした。撮った写真を見る事で、思い出がそのままよみがえって来て、すごくドキドキしたり笑ったりという過去の感情が写真に入っていた事に気付き、その場に居なかった人にもその時の様子や気持ちをシェア出来たらいいなという事を思いました。
―ニューヨークに渡られる前までのことを教えてください
今の私とは想像出来ないと思いますが、小学、中学、高校はバスケットの選手で全国を目指していました。中学3年の時に大阪の学校にバスケのために編入し、監督の家で下宿したり、バスケ部の寮で生活していました。高校は地元愛知県の高校に入りバスケ部の寮で生活しながらバスケに明け暮れていました。
高校卒業後はホテル専門学校に入り海外のホテルに就職するために勉強をしていました。ファッションがすごく大好きだったのですが海外で働きたいという思いの方が大きかったです。しかし、職種を選ばずただ海外で働ければという事から「自分の好きな事を仕事にしたい」という思いが強くなり就職はせずに自分が本当にやりたい事を探しながら英語を勉強する事を選びました。バスケット時代からやりたい事はとことん追求するという性格でしたが、もちろん親の協力なしでは何も出来なかったので感謝しています。
―NYという街を選び、そこに住み続ける理由を教えてください
私は17歳の頃からずっとロンドンに住みたかったのですが、たまたま19歳の旅行で来たNYでクリエイティブな友達が出来た事がきっかけになり、自分もその仲間に入りたいという思いでNYを選んでしまいました。
住み続ける理由は、刺激とチャンスが常にあるからだと思います。
―写真を撮る時最も大事にしている部分とはなんですか
被写体との気持ちの距離をなるべくなくす事です。
―Streetの仕事をされていたそうですがそこから学んだ点はありますか
沢山あります。道で見知らぬ人に声をかける事でまずシャイな性格が治ったのと英語が上達しました。私が撮影をしていた頃はストリートスナップというのはまだメジャーじゃなかったので、声をかける人一人一人にどんな雑誌なのかという説明をする事からやっていました。あと、人とのつながりの大切さを学びました。
―今までの作品を振り返り、変わった点と変わらない点を教えてください
私の写真のスタイルは基本的に昔から変わっていないと思いますが、変わった点は写真を仕事にし始めた事で写真の取り方が少々商業的になってしまい撮る時に色々考えるようになる事が時々出て来てしまったかなという部分です。ちょっと悲しいですがそこが趣味とプロの違いなのかなと思います。でも、なるべく意識しないように自分らしさが出せれるように心がけています。
―カメラを通した風景とあなたの眼で捉えている風景は異なりますか
私の目で見ているモノや風景を写真を通して伝えたいと思って写真を撮っているので異なってはいないと思います。
―「Dreaming until sun goes down」この作品を撮るキッカケはなんでしたか、この作品の3人のモデルとは、どのくらいの距離感があるのですか(以前からの知り合い、初めて会った等)
この3人のモデルはもともと友達でした。キッカケはモデルである彼らの本当の生活や素顔などファッションの人たちからは見えない真の部分に興味があったからです。
―あなたの作品のインスピレーション源はなんですか
友達、旅行、音楽、映画
―表現する側として写真を見る側に求める部分はありますか
ただ見てるだけではなく、写真から何かを感じ取ってほしいです。作品は自分自身だと思うので外見や肩書きのみで評価されてしまうと悲しいですね。
―あなたの考える優れたフォトグラファーとはそういったものですか
はい。
―日本のファッションシーンで注目していることを教えてください
東京ストリートファッション。常に世界から注目されています。
―今後撮りたいもの、人物はいますか
ノルウェーのバンドTurbonegroのドキュメンタリー。知り合いなので昔一度聞いて断られましたがいつか叶ったら嬉しいです。
―今後予定している活動について教えてください
G.V.G.Vとコラボで2月末にTシャツを発表します。今作成中なのですがかなりカッコイイ仕上がりになると思うのでぜひチェックしてください。
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