“本当に当たり前の生活をするというか、どれだけ一生活者になれるかというのは自分の中で凄く大事で”
‐卒業後一度も就職せずMicroWorksを立ち上げています。卒業した時に全く就職は考えなかったんですか
就職はあまり考えなかったですね。もともと留学しようと思っていたので。
‐それはどこにですか
具体的には決めていなかったんですけど行くならロンドンだと思っていました。
‐それはなぜですか
好きなデザイナーもいたし、英語圏というのもあったし。
ヨーロッパ行けば陸続きで色んなところにも行けるし良いなーと。でも色々訳があって結局留学しないことになって。そうなった時にどうしようかなってなった んですよ。どこかで働こうかと思ったんですけど、物作るなら、勿論どこかで学ぶというのも大事なんですけど、まず手を動かしてみようと思ったんです。ちょ うど学生のときから続けていたJump Out Mirrorがあったので「この鏡を続けてみようかな」って思ったんですよね。結構安易に考えていて「なんとかなるだろう」って。
‐その時にMicroWorksという名前を付けたんですか
元々2人でやっていたんですよね。学生ノリで「一緒にやろう」とか良くあるじゃないですか。僕も例外じゃなくて好みがあう友達と2人でその鏡を作り始めた んです。だから卒業してイベントに応募する機会があるから「名前はあった方がいいんじゃない」ということで色々考えてMicroWorksにしたんです。 なぜその名前かというと特に深い意味は無くて、人が見過ごしちゃうような小さいポイントを拾い上げて、そこから何か展開をしていくようなことをしていきた かった。そして小さいを表す単位や言葉がいっぱいある中でmicroがキャッチ―だったしいいんじゃないということになって。デザイン系だとなんとかデザ インという名前が凄く多いんですよ。だからなんとなくそれは嫌だったのでworksにしようってMicroWorksという名前にしたんです。
‐今でも2人でやられているんですか
今は1人ですね。やはり卒業していきなり自分たちだけでやるというのは色々大変で、そのあたりでもう一人の者と僕とで考え方が違ったというのもありまし た。別に仲が悪くなったわけではなくて「無理しなくて良いよ」みたいな感じになっていったんですよね。だから自然にフェードアウトしていきましたね。イベ ントの時だけ参加という形で関わっている期間が続いていたので「そろそろちゃんとしよう」ということで2,3年前に2人での活動は終了になりました。だか ら本格的に1人でやっているというのは実際2008年からですね。
‐それ以前は様々な作品を2人でやられていたんですか
若干無理矢理な部分もあったんですよね。結構不便なことも多かったし。イベントの出展料も折半になるので自分の一存だけでは決めれなかったですし。そうい う意味では1人でやり始めてからはどんどんイベントにも応募したり自由にやれていますね。
‐1人の方が楽ですか
気は楽ですね。もちろん相手にもよりますが、多分僕は誰かと一緒に同じチームとしてやるのは向いていないと思います。
‐もう1人の作品が商品化されたものもありますか
最終的には2人で話し合って決めていたので、どちらの作品というわけではないんですけど強いて言えばBird Hangerは元々のアイデアとしてはもう一人が出したものですね。
‐2人でやっている意味はあまりなかったと
今思えばあまり無かったかもしれません。だから周りで2人でやっている人ってそのあたりの意識ををしっかり共有できているんだなと思います。よくバランス 取れてるなって思います。聞いた話しだと3人組ならその辺のバランスが保ちやすくて良いみたいですけど。
‐友達同士ならいいですけどカップルならもっと大変ですよね
そうですよね。別れて普通に辞めちゃう人も多いじゃないですか。「もと一緒にやっていたんですよ」って言われたら「あ、そういうこと?」みたいな。
‐どういう時にデザインが思いつくのですか
こういう時です(インタビュー中)。本当に当たり前の生活をするというか、どれだけ一生活者になれるかというのは自分の中で凄く大事です。自然に必要なも のというか無理にやりたくないんですよね。作りたくないけど無理やり作ったっていうのは絶対に売れないと思うんです。あまり器用じゃないので来たものに対 してドライにサクサクっというのはなかなか出来なくて。
‐自分の使いたい物というのが前提ですか
それは作る上では考えますね。まず自分が欲しいと思わないとその時点では誰も欲しい人がいないわけじゃないですか。だからとりあえず1人でも欲しい人間が いるものを作りたいなというのがあって。自分が良いものと思わないとお勧めも出来ないんですよね。言える人もいるんだろうけど自分は出来なくて、たぶん僕 だと「ここがいいんですよ」とか言いながら顔が引きつると思うんですよね。
‐機能性は重要視されていますか
勿論考えるんですけど固執はしてないですね。ちゃんと使っていて滅茶苦茶不便というのは無いと思いますし、最低限の部分は考えるようにしています。
‐家具は作られていますか
作品としてはあります。ウェブに載せているんですけど最近はあまり作ってないですね。この間DESIGNTIDE TOKYOというイベントで「4°」というブックシェルフを発表したんです。その名の通り4度傾いていて、水平だと端っこの本を倒さなきゃいけないものを ちょっとだけ角度つけることによってブックエンドも要らずに綺麗に並べられますよ、という作品です。それは作品としては3年前に作って発表したんですけ ど、先日のDESIGNTIDEから販売をスタートできることになって自分のレーベルで販売をスタートしたんですよ。家具は物理的にスペースも取るし、リ スクも高いんですけど、4°は以前から引き合いも結構いただいていたんです。今回は知人に紹介してもらった職人さんが色々と融通を利かせてくださるという か、こちらのわがままも聞いてくれるような体制を作ってくれたので実験的に販売に踏み切ることができるようになりました。家具も好きなので、これを機に今 後は家具にも力を入れたいなと思っています。
‐ブックシェルフは3年前の作品とのことですが昔の作品を今になって商品化するということは多いんですか
最近多いですね。前に発表したものも、そこで終わりではなくてその時点で商品化を目指しているんですけど、色々難しくてとりあえず今は無理だなということ で販売していないというものがほとんどなんです。なので常に進行できる状態にあるというか、実際現在動いているものもあるんですよね。その時期がたまたま 重なっているだけかもしれないんですけど。現時点で次回作として販売の目処が立っているのがTailという傘です。それとJump Out Mirrorに関しても未だに問い合わせをいただいていて、僕も思い入れが強い作品なのでずっと再販を目指して進めています。それもうまくいけば10年の 初旬に販売できるかなって感じです。だから何かのコレクションに向けてというやり方はしていなくて常に作品を作っていて出来上がったら発表という感じで やっていますね。それでタイミングの良い時期にイベントなどがあったら、そのイベントに合わせてスケジュールを調整するという感じですね。
‐コンセプトやテーマを決めて作りだすということはないんですか
企画展で話があればそういう考え方はしますが普段テーマはあまり考えないですね。前は展示会出す時にその時のテーマ決めていたんです。例えばブックカバー とかシェルフとかは『本』というテーマでやったんですよね。そういうアプローチも嫌いではないし、出来るんですけど今は物単位でやっている気がしますね。
続く