Interview

MIKIOSAKABE 4

ファッションだけじゃなくて全ての面においてクリエイションを見るということは何か考えると思うのでそれを教育まで繋げたいなと思っています

-坂部さん自身、他のデザイナーやブランドの事について凄く詳しいですがそういうのはデザインする時に障害にならないのですか

僕はならないと思います。一般的な人が知っている知識内だと思いますし。例えばデザインのコンセプト今回で言えば「憧れ」なんですけどそれについてのリサーチもしないので障害にはならないですね。

-毎回のテーマはどうやって決めているんですか

次は教育を軸にしていこうとかテーマは僕が中心に考えています。

-コレクションが出来上がっていくプロセスというのは毎回同じなんですか

そうですね。毎回同じですね。スタイリングも自分達でやります。

-東京とミラノでスタイリングは変えましたか

スタイリングは変えてないですが出す順番は変えましたね。ミラノはまさにアウェイなので何も出来ないんです。だけど日本は演出が出来るのでやりたいことは出来ますよね。

-クリエイションする環境で東京というのはどうですか

本当はアントワープに帰りたいんです。住み心地が良いですしクリエイションもしやすいんです。東京はしにくいですね。集中して出来ないんですよ。TVも見てしまうし。それはそれでリサーチにもなるんですけど。

-コレクションでは東京っぽいことをやっていますよね。それを考えたら東京の方が良い気もするのですが

でも僕は学生時代から東京っぽいことやってるんですよ。基本的にリサーチもしないので全てが自分のイメージの中なんです。

-これをやろうとか考えないんですか

それは考えますけどそれはリサーチじゃなくて普段の生活からの疑問点をスタートにしていますね。だから前回のアイドルにしても根本には不況があるんです。不況→暗い→良くしよう→80年代のアイドルが合うんじゃないかというのでああなったんです。

-毎回ルックブックは日本人を起用していますが09S/Sだけ外国人モデルを起用していますね。それはなぜですか

服の色が合ったからですね。あの時はクルーズラインを意識していたのでクルーズラインでお金を持っていると考えたら海外というイメージが強かったからです。

-逆に日本人を起用する理由はなんですか

それも特に無いですね。その時のテイストなので。ただ今回はアイドルだったのでアイドルが外国人だったらおかしいので日本人を起用しました。

-デザインをするときに他のデザイナーから影響を受けたりしますか

しますね。受けてるんですけどその基準は難しいですね。知識がある時点で受けてるとは思います。

-テーマ性は重要ですか

題名は重要じゃないですけど考え方はちゃんと伝えなければなと思っています。

-MIKIOSAKABEの顧客像について教えてください

しっかり決めているわけではないですけど20代から上は全部と思っています。実際日本では若い方はお金が無いので着られているのは30以上じゃないかと思います。

-デザインにおいて最も重要視している点はどこですか

J -人々が何を求めているのかというのを考えてデザインしています。

M – 普段の生活の中でどういう方向に行こうかというのを考えるのであまり無理しないで私生活の中で何か感じたことを広げる、それで次の時代にどうすればいいかというのを考えています。

MIKIOSAKABE 08 S/S Collection ~INDUSTRIAL DOLLS~

-ファストファッションについての考えを聞かせてください

H&Mとかファストファッションの動きは今凄く大事でモードとしてもクリエイションとしても凄く大事だなと思い始めています。否定してたんだけどよく考えたらあれもクリエイションなのかもと思うことが最近良くあって。これからもっと中心になって行くと思います。クリエイションなんだけどあれが中心 になりえることがあって僕の中で日本の漫画文化と一緒なんだと思います。

漫画って同人誌というものがあるんですよ。凄い人気のあるアニメに関してはそれのコメディ版を誰か素人の人が書いてその文化が成り立っているんです。本編だけで成り立つと言うよりは同人誌の色々な人のものを混ぜ合わせて本編があるみたいな感覚だと思うんですよね。なのでコピーされること自体はありで成り立っているんです。エヴァンゲリオンのTV版の凄いところは最後の3話くらいが同人誌がコピーすることを予想してエヴァンゲリオンのTV版を作っていたんです。だから最後の3作くらいはこういう世界もエヴァンゲリオンにはあるよっていうようなラブコメディの世界が入るんですよ。本番が同人誌をコピーしてそれが世界のこの動きを象徴しているなって思うんです。コピーすること自体は漫画界は凄く肯定的なんですよね。それによって物凄いムーブメントが起きているというか。一人のオリジナリティではどうにもならないけどコピーでもそこに中心になる物があれば全然強くなっていくということでそれを色んな物を見てて感じたんですよね。

ファストファッションなんかはまさにコピーじゃないですか。逆に彼らはリサーチャーも凄くいるしデザイナーも100人以上いますよね。そう考える と一人のデザイナーがやっているデザインではないので一人の意識で作ってないんですよ。ほんと無意識に近いと言うか。だとしたら100人以上のデザイナーが作るとどこかでみんなに共通するクリエイションが見えてくるというか新たなデザイナーのシステムにはなっていると思うんですよね。コピーを 重ねた集大成として人間の究極に欲しい物を作っていくというか。なので別に1人1人がやっているクリエイションよりも総体性をまとめて新しい動きを作るまで行った方が時代感が出てくるのかなと思うんですよね。だからファストファッションを昔はコピーでダサいと言っていたのが今はもうダサいと言う人はいなくなったんだと思います。ファストファッションに関してダサいと言う意識は消えてきたと思うしコピーがいけないという意識も消えてきたと思うんです。着る側にとっても。

-デザイナーとファストファッションのコラボレーションに関してはどう思いますか

全然ありだと思うしどんどんやっていくべきだと思います。ただ最終的に弱いのは軸になる方向性がぶれちゃうんですよね。ドーナツファッションなので中心が無いと言うのが怖いので「じゃーモードは何すれば良いの」って言ったら中心を作ってドーナツを作れる人が次代のクリエイターになれると思うんです。オリジナルかどうかよりも最終的に良いかどうかが凄く大事な時代になってきているんですよね。

-ジェンファンさんはファストファッションに対してどう思いますか

J-今はトレンドでもあって人々が昔よりそういうものを欲しているんだと思います。そんなに高いお金を払わずに手軽にそのシーズンのトレンドを買うことが出来る。経済状況の悪化で人々のお金に対する価値観も変わってきているのではないのでしょうか。

M-やっぱりファストファッションは取り入れなきゃいけないんですよ。無視したり戦ったりしちゃいけないんです。デザイナーがあれを更に取り入れなきゃいけないのかなとは思いますね。Marc Jacobsはそこら辺にいけるタイプの人だと思っていて、今の時代の中心にいける人ですよね。ハイファッションから大衆にまで受け入れられるっていう。 DJ文化の象徴でもあると思うんです。ただ混ぜるんではなくて混ぜた中でちゃんと新しいものを作れるというところまで行ってるからあの人のタイプがこれからのデザイナーの理想像だと思います。コンセプトや理想像がはっきりしているとかではなくてあのタイプが時代に必要だと思います。クリエイティブなことをするにもキャッチーなところは前より更に必要になってきているからそのバランスだと思います。

-MIKIOSAKABEはそのバランスを持っていますか

次から持ってやっていこうかなと思っています。あんまり服自体は硬くなりたくないんです。それなりに理由があればそんなに全体を構成して演出してショーを してブランドイメージを作るというよりも、ブランドイメージは思想であってそのデザイナー自身が売っていけば良くて服自体はもっとファストファッション的 になっていかないと人の心は動かない気がするんですよ。

-「服を通して人に夢を与える物」がモードと定義していましたがそのモード自体の定義は変わっていっていると思いますか。

それは同じですけど夢を与える為にはキャッチーでなければ駄目だと思います。クリエイティブな物を中心としたファッションはもう終わってきた。一番終わっ てはいけないところなんだけど現実にいうとそこが一番なくなってきました。モードとファッションは同じなんですけど簡単にいったら僕達が目指すクリエイションというのは本とか小説とかみたいな深いものなんです。でも今の人達は小説は読まないで漫画を見るじゃないですか。その中(漫画)でいいものじゃないと伝わらないですよ。小説で伝えようと思っても読まないですよね。キャッチーじゃないから。そこがファッションもキーだと思うんですよ。まず漫画にならなければいけない。その中で定義があるのならエヴァンゲリオンみたいな芯のある人になれるし、手塚治虫も漫画だからあの哲学を見せれたと思うんですよ。ただモードがやってるのはまだ硬いんですよ。そういう人達に一発ですんなり入る物って何っていったらファストファッションが漫画の位置を占めていて、色んな大衆が見る、知っているのがファストファッションだと思うんです。

-ではファストファッションはモードなんですか

ファストファッションはモードのドーナツ化なんですよ。芯はないけどモードに近い周りを回っている。ただ芯がないとそれを導く物ではない。漫画だけど何かを導く漫画ではないんですよ。だから漫画であって何かを導く物であるというブランドはこれからのモードになり得るんですよ。キャッチーだけどそこは入り口だけであってそこから先よく見たら変な方向に持ってかれてるというところが一番良いですよね。

-ファッション界においての最終地点はどこですか

難しいですけど次のコレクションにおいては教育とクリエイションをどう繋げるかがキーになっています。ファッションだけじゃなくて全ての面においてクリエイションを見るということは何か考えると思うのでそれをただ見るだけじゃなくて教育まで繋げたいなと思っています。あと東京コレクション自体が世界に発信できるようになればいいなと思っています。

-東京コレクションが世界に発信できるコレクションになる可能性はあると思いますか

シチュエーション的にはあると思います。中国インド含めてこれだけアジアがファッションに興味を持ち始めて新たな人達が出てきているじゃないですか。 ファッション、スタイル含めてまだ東京に憧れてる部分はあるのでそういう意味ではアジアの中ではまだ東京は強いと思うんですよ。アジアの中で強ければ世界に発信する新たなファッションウイークになれるかなと思うんです。

-MIKIOSAKABEの考えるファッションとは何ですか

コミュニケーションです。最初は格好良く見られたいと思って喋る前に見られるのは洋服だと思うんです。その人を表現する上ではファッションはコミュニケーションなんです。もう一つはそれを作っている人とのコミュニケーションです。デザイナーの服を見て、着てその人の考えを知ってというコミュニケーションですね。だからファッションとは色んな意味での言葉ではないコミュニケーションツールだと思います。

HP – http://www.mikiosakabe.com/

Interview, Text/Masaki Takida

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