Interview

MIKIOSAKABE 2

日本は常に海外からのリアクションを待っている気がします。海外で評価されてからそれを評価するみたいな

-坂部さんがレディースを選んだ理由を教えてください

僕がメンズで好きなデザイナーはメンズ発信のブランドが多いんですけどレディーススタートのメンズデザインって全く好きじゃないんです。なんでかという とベースがレディースの考えなのでバックグラウンド自体が違うんです。メンズ発信のブランドの凄いところってリサーチ力が凄いんです。「自分が今回やりたい」っていうイメージがあったらそれに対しての服の技術からそのデザイナーのバックグラウンドまで知識を凄く持ってるんです。そのやり方は凄くメンズ的な やり方だと思っていて、レディースってジャケットのポケットがどこについているかよりも全体の空気感がまずあってそのクリエイションの中での服なんですよ。でもメンズは芯がどれくらい入ってどの生地を使ったかという総合体なのでリサーチが上手くないとっていうのが僕の中で漠然とあってそれが苦手だと思っているんです。だからやれるかもしれないけどまだやってないですね。それよりレディースの時代を読んで時代と共に一緒に何かを作り上げるという方がやりやすいですね。デザインするとき実際リサーチも全くしないのでメンズ的なやり方はしたことが無いんです。

ただ次はメンズをやります。ショーにもショールームにもプロ用には出さないで個人オーダーのみですけど。今までメンズも欲しいと言われることが多かったので。スーツのセットです。これからメンズに焦点を絞ってショーをやろうという気も全く無いし広げていこうという気も無いですけど。

-一番影響を受けたデザイナーは誰ですか

それはWalterですね。先生だったので。信念がちゃんとあるし学生に向かって「デザイナーはクリエイションが大事だ」と言ってて自分でもちゃんとそれをやってますからね。だから説得力があるんですよ。

-ジェンファンさんは影響を受けたデザイナーはいますか

J-Ann-Sophie Backですね。彼女のクリエイションの仕方が好きです。トレンドとは関係の無いところで彼女の作りたい物を作っているという姿勢が好きです。以前のラフシモンズも好きですね。

-今気になっているデザイナーはいますか

クルーズラインのLanvinは好きですね。今回パリでクルーズラインが凄く気になって見てたんですよ。クルーズラインを見た瞬間からプレタポルテ全体がコンセプトが強くて重く見えたんです。それってサンローランがプレタポルテを作ってオートクチュールが重くなった感覚に近くて。クチュールから大量生産のプレタに変わったじゃないですか。そのプレタ自体が僕からしたら凄く重く見えたんです。だからコンセプトもないんですけど今の時代感がそこにはあるんですよ。そこからプレタを見ると昔の僕がプレタを見るのとクチュールを見る位の差があったのでクルーズラインてこんなに新鮮に見えるんだなって、その中心がLanvinだったんですよね。

-自身のブランドではクルーズラインを作ろうとは思わなかったのですか

ちょっと前に思って09S/Sはクルーズラインを意識したんですけど結果的には違うなって思いました。

-ミラノ、パリ、東京と3都市でコレクションを披露(パリは展示会のみ)していますがその理由はなんですか

誘われたらやっちゃうんですよ。次はバルセロナも誘われたのでバルセロナ(080 Barcelona)もやるんです。White Club (Milan) はDiane(Pernet)が声を掛けてくれてるのでそれからずっとやっています。パリはFFIの招待があるので。

-では逆に東京でショーをやる理由はなんですか

本当は東京が一番メインなんです、やりたいことを考えると。教育とファッションがキーになっているので次はそれも意識してやりたいんですよね。場所もそうですし、地方で小さなショーをやりたいとも思っていますし。今までとは違う形になっていきたいですね。海外でもやれるんですけどやっぱりアウェイなので向こうのセッティングされている物に入るという形で。東京はお金が無いけど一から自分で考えられるのでやりたいことに一番近くはなりますよね。

-ジャーナリストやバイヤーの評価は日本と海外とで違いますか

J- 海外ジャーナリストやバイヤーは日本人と比べてもっと私たちのクリエイションを受け入れてくれるし新しいことに興味を持ってくれています。ただ日本は常に海外からのリアクションを待っている気がします。海外で評価されてからそれを評価するみたいな。

M- 難しいのは日本のジャーナリズムは悪いことは言えないじゃないですか。向こうの人は良くなかったら本人にも言いますし逆に良かったらそれも言うんでそこは素直に受け止めていいと思うんです。ただ日本は基本悪口は絶対に言わないんですよ。自分が前の方に掲載されていたとして評価されていたとしても枠組みも凄く曖昧なんですよね。クリエイションがどうのとかでまとめるよりも海外だからみたいのでまとめて評価するのも多いじゃないですか。だから見てる側も本当にこの人同じように見ているのかなと思う部分もあると思いますし。良いって言われててもその人が他に評価している人が自分は納得出来なかったり、逆に全然良くないと言われてもその人が褒めている物が全然良くなかったら心に響かないんですよ。だから海外のジャーナリストの方が僕はもう少し共感できる審査をしてくれていると思います。確かにこの人もいいしこの人もいいしっていう中での評価をしてもらったら嬉しいけど。海外に行くことにはそういう正当な評価を聞くという 意味でも行く意義は凄くありますよね。

-JFW、東京のファッションの現状についてどう思いますか

JFWは見に行ってないので全くわからないんですけど混ぜる(mixする)のがうまいのが東京の中心になっているのかなという気はします。

-JFWから外れてやることも出来ると思うんですがあえてスケジュールに入ってやってる理由はありますか

特に無いですね。外れる理由もないですし。ただ誰かが仕切ってやらなければいけないとは思います。そういうFashion Weekを東京で作るのも必要だと思いますし。

-今回のコレクションでは80年代のアイドルをテーマにしましたがあのアイドルは誰か特定のアイドルをイメージされたのですか

一応Winkを意識したんですけどだから何かデザインをWinkから持ってきたかというと2人いるというそれくらいですね。東京コレクションのモデルの2人はWinkをイメージしました。僕の中で80年代のアイドルのイメージとして残っていたのが松田聖子と小泉今日子とWinkだったので。

-80年代は坂部さんにとっても青春時代じゃないですよね

違いますね。ただなんで80年代かというと80年代ブームが今回の秋冬で来ると僕も思っていたんです。でも普通の80年代よりもう少し日本的にしたくて。80年代ってバブリーで凄い良い時代だったと思うんですけどそれを日本的に解釈してそのシンボルとしての日本的アイドルというのがあったんですね。だから人としてのシンボルを作ってそれとしての憧れを東京コレクションでは作りたかったんです。それで知っているアイドルというのがそこら辺の人達だったので。だからといって80年代のブームを掘り下げたわけでもないし、Winkを掘り下げたわけでもないんです。Youtubeで2,3曲見て、良かったなと。見てもらえればわかると思うんですけど暗いんですよ。華やかそうなんだけど裏も少し影があるステージだし、そのバランスが凄く日本的なんです。どこかで影があるアイドルって感じで。それが今の時代感にも凄くマッチするんですよね。

-それがあの東コレでの蝋燭に繋がったわけですか

そうです。あの時代の暗さと今の不況の時代を交差させたかったんです。あれが華やかなステージでジュリアナみたいだったら多分みんな共感してくれなかったと思うんです。

続く

MIKIOSAKABE 09 S/S Collection ~TINNITUS~

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