“ある品物が急速な流行の交替に屈服するにつれて、同種の品物の「安い」生産の必要が強くなる。たんに、広範な範囲の、したがってどちらかといえば貧しい人びとが、工業を彼らにかたどって規定するだけの購買力をもち、すくなくとも現代的なものの堅牢でない外観をもつ対象物だけを要求するからというばかりではなく、社会の上層すら、もしその物品が比較的安くなければ、下層の追迫によって彼らに強要される急速な流行の交替をなしえないからである。こうしてここにある奇妙な円環が成立する。流行が急速に交替するにつれて、物はいっそう安くならねばならず、物が安くなるにつれて、それはいっそう急速な流行の交替へと消費者を招き生産者を駆り立てるのである。”
ゲオルク・ジンメル『文化の哲学』1911年
(『ジンメル著作集7』円子修平他訳、白水社、1976年、57頁)