Interview

Jenny Fax

アントワープ王立芸術アカデミーファッション科卒業の坂部三樹郎と台湾出身のシュエ ジェンファンによるブランドMIKIO SAKABEからJenny FaxとLIGHTNINGBURGERの2つのブランドがこの夏デビューする。
Jenny Faxはジェンファン氏による、よりクリエイティブなレディースブランド、LIGHTNINGBURGERは坂部氏によるTシャツブランドで両ブランドともに当面の間、オンライン限定での販売を予定している。今回はJenny Faxのデザイナーであるジェンファン氏に新ブランドJenny Faxについて話を聞いた。

―ブランド名について教えてください。なぜJenny Faxなのですか

海外の人は私の名前であるジェンファンというのを読みづらいので海外にいる時はみんな私のことをジェニーって呼んでいました。ピンクのFaxを夢で見たんです。あとRiver Phoenix(リバーフェニックス)という響きが好きでその響きに近いものを組み合わせてJenny Faxになりました。

―Jenny Faxのデザイナーはジェンファンさんだけなんですか

そうです。自分だけのブランドを立ち上げる事は以前から考えていました。ただ私は怠け者なので行動に移すのに時間がかかりました。坂部が私に自分のブランドをやってみてもいいのではないかと言ってくれたのも一つの理由です。

―ウェブだけのブランドとして始める理由はなんですか

MIKIO SAKABEは完全に王道なやり方でやったブランドですがこれからの時代はそれだけじゃ駄目だと思っています。ウェブがスタンダードになるということも考えるとそっちで始めてもよいのかなって思うんです。ただ発表の仕方は色々な方法があっても良いと思っています。最初はウェブだけですが今後はプレゼンテーションなど発表の仕方は様々な可能性を探りたい。ただ売る場所がウェブというだけですね。

―Jenny Faxのコンセプトを教えてください。MIKIO SAKABEとはどう違うのですか

MIKIO SAKABEは坂部がディレクションをし、それぞれのシーズン毎にコンセプト、ストーリーを決め0から作り上げています。Jenny Faxは今までの自分の記憶を辿り自分が見てきたものの中から「こういう風だったら良かったのに」といったものを新しく作り変えたり、自分が着たい物を作っています。全てのデザインは自分の記憶や想い出からきています。

―コレクションの発表はS/S, A/Wという形になるのですか

一年に2度発表はしたいと思っていますがシーズンは特に意識していません。全てのコレクションが自分から出ているものなのでコレクション毎の連動性はあると思います。

―コレクションはレディースのみになるのですか

MIKIO SAKABEはユニセックスで展開しているものもありますがJenny Faxはよりガーリーなのでレディースのみになると思います。もしかしたら時にはユニセックスなものをデザインする時もあるかもしれませんが今のところ坂部が完全に自由にやらせてくれているのでしばらくはレディースだけでやると思います。

―プライスレンジはどのように考えていますか

5000円から30000円くらいまでを考えています。

―なぜこのタイミングでの発表となったのですか

ほとんどのことが正直言って理由がないんです。Jenny Faxになったのも夢で見たショーウインドウにあったピンクのFaxですし。

―ファーストコレクションのシーズンコンセプトを教えてください

このブランドのイメージは女性です。イメージビジュアルに使ったモデルも一人を除いて全てが素人です。女性の中には美しい人もいれば、勿論不細工な人もいます。でも私の中の女性はその中間に位置する人達です。人々は美しくもなく、不細工でもない彼女たちの生活がコンプレックスもなく平和でとても満足な生活だと思っています。しかしそれが逆にコンプレックスな時もある。普通の人って逆に不細工な人よりコンプレックスがあるんじゃないかなって思うんです。例えば私の妹は時には女性的な服装をしたいと思っています。しかし彼女はぽっちゃりしていてボーイッシュなので周りからの彼女のイメージは確立されていて彼女自身もそのイメージに従わなければいけないと思っています。時には彼女もアクセサリーを身に着けてみたいと思っていますが彼女はイメージを気にして店の中に入るのですら躊躇します。今回のシーズンコンセプトはそういった女性たちに焦点をあてそういった既存のイメージにとらわれることなく立ち向かう女性をイメージしました。彼女たちがそういったイメージを打ち破る為に外に出るということから戦争を連想し(自分達自身のイメージに立ち向かう)プリントやディテール等ミリタリーの要素を含んでいます。ここ最近の広がりにも繋がっています。彼らはシックトピア(普通の女の子が自分の写真を撮って掲載するようなサイト)を利用しています。そこには勿論普通の人でも写真写りによって良く見える人もいますがその一方で全く普通の人もいます。100人いれば50人は普通の人達でしょう。普通の人でもどのようにドレスアップをするのかを知っていればポジティブにもなれる。自信を持ってドレスアップすれば変わることが出来る。違った形の美しさを提案することが出来る。
ピンクは“普通”の女の子というよりは一部のキュートな女性の為の色というイメージがあります。彼女たちはピンクを見に纏うのを恐れていますがピンクの兵器を持って(ビジュアルイメージ)戦いに出なければいけません。イメージは自分自身を見つめ直すところからスタートしました。私自身もコンプレックスがあったので。たくさんの人が私に「なぜブランドを作る必要があるのですか?MIKIO SAKABEの坂部の奥さんで良いんじゃないんですか?」って聞くんです。それ自体も凄く私にとってはコンプレックスなんです。

―Jenny Faxを出すことによってMIKIO SAKABEが変わるということはありますか

それは関係ありません。彼のテイストのブランドでやるのであればMIKIO SAKABEではなく同時にスタートするLIGHTNINGBURGERがそうなると思います。MIKIO SAKABEは2人で8シーズンやっています。そこから急に坂部のイメージにシフトするということはありません。またMIKIO SAKABEの違いとしてはこのブランドはアイテム毎にデザインしています。それは自分のお気に入りのアイテムを見つけて好きなものとミックスして欲しいという想いからです。MIKIO SAKABEはよりトータルなイメージでデザインしています。私自身もこのアイテムが消費者の手によってどんなコーディネートになるのか見てみたいと思っています。だからビジュアルイメージも服を着ているように見せて一つ以外はボディペイントか下着しかしていません。

―どのくらいの期間をかけてデザインされたのですか

自分のブランドをやるならということでコンセプトは大分前から考えていました。勿論その時々によってやりたい服は違いますし好きな服も違います。しかし大体のイメージやコンセプトは変わっていません。毎年自分のブランドの為の服の絵は書き続けていました。大きいブランドにしたいとは思っていません。自分の自由に出来るだけでそれでいいのです。ブランドをやらせてくれた坂部には感謝しています。

―ブランドを新しく始めるだけの時間の余裕はあったのですか

平日はMIKIO SAKABEのことをやり週末にJenny Faxのことをやっていました。初めてグラフィックにも挑戦しDaniel (Sannwald)にも監修してもらいました。

Interview:Masaki Takida

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