Interview

Mason Jung

Mason Jungは韓国の大学でファッション・デザインを学んだ後、企業デザイナーを経てイギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業。2009年にはITS#EIGHTの大賞を受賞する。コンセプチュアルであることだけで満足することなく、モノとしても完成度の高い服作りを追求するMason Jungにインタヴューを行った。

―ファッションの世界に足を踏み入れた理由を聞かせてください。どうしてデザイナーになろうと思ったのですか

10代の頃から自然とファッションに惹きつけられたのだと思います。学校では制服を着なければならなかったため、いつも自分を他の人たちから差別化したいと思っていました。

―ITS#Eightについてお聞きします。あなたがITS#Eightで大賞を受賞できた理由はどのように考えていますか。そして、受賞後の反応はいかがでしたか

私はあまり期待していませんでしたが、私の作品のコンセプチュアルな側面を評価してもらえたのだと思います。受賞後は、様々な人たちに会ったりインタヴューを受けたりすることで、ファッションに対する私の考え方や姿勢を伝える大きな機会を得ることができました。

―RCA(Royal College of Art)についてお聞きします。RCAでの勉強はどのようなものでしたか。なぜこの学校を選んだのですか

私は学校を出た後、韓国のメンズウェアのブランドでデザイナーとして働いていました。そしてあるとき、私自身の作品を発展させ、より多くの人々に見せる時間が必要だと感じたのです。たいていのファッション・スクールは固有のスタイルを持っていて、そこに学生を向かわせます。RCAは自己を重視した教育を行っていたので、自分の制作を発展させるのに最適だと思ったのです。私はそこでの2年間を、衣服とファッションについてのアイディアを試し、探求することに費やしました。境界についての考えや衣服制作の新しい方法を展開させながら、コンセプチュアルなアイディアから実際に衣服を作ることができるか実験していたのです。

―あなたのファッション・デザインやグラフィック・デザインのインスピレーション源は何ですか

私の作品は背後にあるアイディア──コンセプトと哲学──についてのものです。それらは私の体験と思考から生まれるもので、衣服を通じて視覚化しているのです。

―あなたの顧客について教えていただけますか

私は「顧客」よりも「オーディエンス」という表現を好んで使います。それは、作品を別の文脈に提示する方法を見つけようとしているからです。私のオーディエンスはファッションの新たな可能性を求めている人たちでしょう。

―ファッション・デザインは自己表現の手段ですか

そうですね。でも、直接的にではありません。私は人々が持っている観念を問題としてとりあげ、それをずらすことの可能性を示しています。それはコミュニケーションの手段であり、私の考えと意見を反映するものです。

―今日のデザイナーが直面する困難はどこにあると思いますか

人々の先入観にどう対処するかです。今のファッションは主に商品として考えられていますから。

―あなたの作品に強い影響を与えるデザイナーや人物はいますか

日本人アーティストの河原温ですね。人生と経験が溶け込んだ彼の作品には感銘を受けています。

―あなたのデザインに韓国人としてのルーツはありますか

私は男性服の伝統的なコードを分析していますが、それは韓国に戻ってからも、イギリスにいたときもそうです。RCAでの卒業コレクションは、母国で学校と軍隊にいたときに経験した規制の文化から着想を得ています。

―ファッション・デザインにおいてもっとも重視することは何ですか

[論理的な]関係性です。アイディアを示すには解答をも出さねばなりません。問題解決のようなものです。

―なぜメンズウェアを選んだのですか

メンズウェアはビジネスとして競争が少ないので、深みのあるコンセプトとプロセスを展開させる余地があると思ったからです。

―作品を制作するにあたって、もっとも重要な要素は何ですか

クオリティと完成度です。今のファッションはイメージによって動かされています。もしデザイナーがよくできた「見かけ」を作ることだけに全力を注ぐのであれば、その表層からも何かしら認めることができますが、同じ理由で、個々の衣服のクオリティが無視されてしまいます。私は職人技の美しさを高く評価するのです。

―将来の展望を教えてください

私の望みはファッションで新しい経験を作り出して、それを皆に楽しんでもらうことです。それは人々の視野を広げることになります。ある意味では、ファッション・デザインは知的なエンターテインメントなのです。

Interview:Masaki Takida Translation & Text:Hiroshi Ashida

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