Interview

forme 3/4

“買ってから1年経たないと伝わらないかもしれないけど、そういう靴が消費者に少しでも浸透すれば作る側は凄い助かりますね”

‐好きな靴ブランドやデザイナーはいますか

シーズンで好きなものはあるんですけど特にこれというのはないですね。昔Northamptonでやってた企画展で一般の人が自分で手加えた靴が展示されていたんですけどその時の靴は凄く好きでしたね。

‐デザインは絵を描いてから作るのですか

あまり描かないですね。木型に直接書いたりとかはしますけど。パターンを取る時にどうせ書くんですよね。線を書いて立体を平面にするんです。だから一回木 型にパターンを書くんですよね。

‐デザインにおいて大切にしている部分はありますか

常に変わったことや新しいことをやろうという風には思ってないですね。例えば線を書くときにでも色々線は書けますよね。構造的にそういう線でなければいけないとこから生まれる線とか普通曲線にするところを直線にしたらどういうイメージになるのかとか。だからそんなに派手なデザインはないですね。でも構造的 に変なことをやりたいというのもありますね。

‐コンセプトの遊び心に溢れとはどういう面で遊びがあるのですか

凄い細かい部分なんですけどビンテージの靴とか服でも意味が無いのに凄く凝っている服ってありますよね。さっき僕意味ない線を書きたくないと言ったんですけどそういうのも実は凄く好きなんですよね。意味が無いのに手が込んでいるとか凄く好きで。チェーンステッチをやっているものもあるんですけどそれって履 いてたら全然関係ないですし、メーカーでは出来ないですけど自分でやっているから出来るんですよね。

‐チェーンステッチって難しいんですか

普通ミシンでやっているんですけどこれをやると一針落として編んで一針落として編んでという凄く時間がかかるやり方なんですよね。

‐靴の後ろの部分にダーツが入ってるものもありますがそれはなぜですか

それはダーツを入れると立体になるじゃないですか。製法的な理由ですね。入れた方が作りやすいんで。

‐formeの靴を履いたら最低何年持ちますか

5年は確実に持ちすね。ソールを変えてちゃんと修理していたら10年は持つと思います。

‐一生物は無理なんですか

本体自体の革が破れてきたらどうしようもならないので。

‐どういう人に履いてもらいたいとかはありますか

それはないですね。気に入って履いてくれれば誰でも嬉しいですね。僕が話していたこと全部ってまず伝わらないじゃないですか。見た感じもそうだし、履いてみてその人がどう感じるかというのも人によって違いますし。

‐自分のサイズ自体把握していない人が多いですからね

多分最初うちの靴履く人も大きいサイズで履くのでそうなったら木型がどうこうというのが伝わるかと言ったら伝わらないですよね。

‐自分で直接消費者に売りたいという気持ちはありますか

やりたいとは思いますね。

‐そうしないと正しいサイズを教えるのは難しい気がしますよね

今置いてもらってあるお店さんはサイズの話によくなるのでそれは全部伝えさせてもらっているんですけど結局お客さんの方が選ぶわけじゃないですか。本当はちゃんときゅっとなっている方がいいのにスニーカー履いているというのもあるんですけど緩めが好きと言う方が多いですよね。

‐本来のベストサイズとはどのようなものですか

ちょっと狭いくらいですね。ピタッとしてる感じですね。圧迫感がありすぎても駄目なんですけど。オーダーでその人の数値通りに作っていると「きつい」と言われることがあるんですけど実際はそのくらいの方が革も若干伸びるし良いと思うんです。好み的に緩いのが好きな人が多いからそうなると何も言えないんですけど。好みの問題になってくると数値通りで作ったところで良いか悪いかも変わってくるし。今はハーフサイズ(5mm単位)で靴を売っているところもあまりないですよね。そうなるとインポートでも大きいサイズが多いので大きいサイズを選んでしまうのかなというのもあると思います。

‐革を伸びること前提で買った方が良いのでしょうか

伸びない革もあるのでそれを前提に買ってくださいとは言えないんですけど明らかに先端が空いていたりとか中で足が泳ぐとかなるとサイズは合ってないですよ ね。実際そういう人が多いんですけど。

‐スニーカーと革靴でサイズ選びは変わりますか

そうですね。革靴とスニーカーというよりはブランドによって同じサイズでも全然違いますね。日本人の足のサイズで27とか28と言うのは本来ほとんどいないですね。勿論横幅の問題もあるんですけど。

‐小さい頃からジャストサイズで履く習慣がないのも理由の一つかなと思うのですが

ヨーロッパと日本の大きな違いってシューフィッターだと思うんです。実際ヨーロッパにいるかといったらいるんですけど子供相手のシューフィッター しかいないんですよ。子供の頃に合ったサイズを履かせて感覚的にジャストサイズを覚えさせるんです。だから日本で大人の人に対してシューフィッターがいるというのは文化的に靴をはくというのがここ100年ちょっとだからそこら辺の違いもあると思うんですけど。

‐formeはファッションブランドですか

靴ブランドだと思います。服のブランドってテーマに沿っていて1シーズンで良いものですよね。でもうちは靴屋だから毎シーズン何型も作れないんですよ。出来てメンズ5、レディース5だと思うし。だから長く履くことを前提にしている時点でただファッションではないと思うんです。

‐ラストは靴によって変えているんですか

ベースは同じ物を使ったりしていますがつま先をかえたりしていますね。

‐毎シーズン新しいものを何型も出すというスタイルではないんですか

新しい型は出しますけど昔のも隅っこに並べていますのでシーズン性でやることは無いですね。

‐靴以外の物を作ろうとは思わないのですが

革小物も作る予定ではいます。以前革小物を作っていた時のコンセプトが靴のディテールや靴作りで使われる技術を使った革小物だったので自分で靴以外の革小物をやるとしたらバッグとかにしろそういうテーマになりますね。靴作れたら使う技術が共通しているので革系のものはなんでも作れるとは思います。服はパターンがわからないので作れないんですけど。

‐メンズに関しては自分の履きたい靴を作っている感覚ですか

そうですね。そうじゃないものもありますけど毎シーズンテーマを決めているわけではないですね。半期で1つのテーマを決めてそれを消化する自信が無いというか。コレクションブランド見てても実際にテーマ聞かないとわからないとかテーマ的には大きいのにどうなんだろうというブランドも多いですよね。今後もしテーマを決めてやるにしても半期では自分の中では無理だと思うので通年とか3シーズンかけてそのテーマで終わらせる感じになると思います。だから服のブランドを見ていて凄いとは思いますね。

‐レディースのラストも自分で作っているのですか

そうですね、でもレディースは難しいですね。自分で試せないので。だから色んな人に履いてもらっています。でも今は靴やっている人に履いてもらっているので今後は一般の方にも履いてもらって試せたらなと思っています。履き心地は足を入れた時に気持ち良いというのを目指したら中にインソールを入れたらそれで解決するんですよ。低反発の中敷きを引けば気持ち良いと思うし。長く履いていくことで本当に履き心地が良いなって思える靴って僕は靴を始めるまでは無かったんです。でも実際ハンドソーウェルテッドで作った靴がデザイン的にはあまり好きじゃないけど履き心地が良いからついはいちゃうんですよね。目標がそこなので買ってから半年、1年経たないと伝わらないかもしれないんですけどそういう靴が消費者に少しでも浸透していけば僕ら作る側としては凄い助かるというかそう いう靴の需要が増えれば安い値段でやっている職人さんとかももっとそういう靴を作る機会も増えるし、工賃も上がるし。だから作る側としてはそれが理想ですね。

‐履き皺が出来るものの方が良いものなんでしょうか

本当にぴったり合っていればそんなに履き皺って入らないんですよ。皮膚みたいな入り方はするんですけど。あまり大きい感覚で皺が入っているのは多分サイズが大きいんだと思います。

続く

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