“少しずつ変化を加えながらも自分達の消費者にとってベストなものは何かを考えながらデザインしています”
―毎回のテーマは重要ですか
H-とても重要ですね。
O-重要ですね。メインのテーマを決めてリサーチを始めてという感じですね。
―自分達でパターンもやられているので大変ですよね
O-そうですね。もうほんと急がないと間に合わないですね。1月にはサンプル生産で中国の方に行くので。3月に展示会なんですけどその前にルックブック撮影もありますし。
―展示会の時にルックブックが出来ているって大変ですよね、クリエイションに関して衝突はないんですか
O-勿論ありますね。でも昔よりかは良くなってきたと思います。
―2人でやることの利点はなんですか
H-私達のテイストがとても似ているんです。
―それは似てきたということでしょうか
O-大学の時から違うものを作っていたけど好きなテイスト、表面的にじゃなくて興味のあることなどは似ていましたね。でも先生に「一緒にやる」と伝えた時には「2人がどうやってデザインを一緒にするのか想像が出来ない」って言われましたね。
―2人ともそれぞれがデザイナーですからね
H-私が思うに段々仕事として捉えられるようになってきたんだと思います。2人がそれぞれ自分達の会社の為にデザインをしているという意識を持って。もし長い間のスパンで物事を考えられなければ非常に危険だと思います。少しずつ変化を加えながらも自分達の消費者にとってベストなものは何かを考えながらデザインしています。例えばコムデギャルソンがパリに初めて来た時と今デザインしているのを比べた時表面的には全く違うものになっていますよね。でもそれでも消費者は変わらず支持し続けている。自分達もそういうブランドになりたいと思っています。その為には我慢強くスタイルやカッティングなど構造のベースを構築していかなければなりません。
―インスピレーション源はどこですか
H-これまでのたくさんの経験からくるものです。何を見てブランドにとって何が必要なのか、その時自分達が感じていること、興味のあることを表現します。
―では今興味のあることはなんでしょうか
H-とても沢山ありますね。Youtubeもそうですが興味の幅はとても広がっています。自然史や考古学、それにダダなどの20世紀初期のアートやモダンアート、コメディも好きです。日本のドッキリのような番組も好きですね。ジブリも大好きです。千と千尋の神隠しが特に好きです。それにりらっくまのようなキュートなものも好きです。
―ファストファッションの台頭や経済不況など悪いニュースが続きますがデザイナーをしている上で直面している一番の問題はなんだと思いますか
H-デザインがちゃんとしているならそれだけで充分だと思います。日本ではそれほど問題は無いと思います。もしそれについて理解していれば充分です。
O-イギリスは素材が高いとか物作りをするにもお金が無いと難しいところもありますけど日本は安めの生地もあるしなんとかなると思いますね。確かに取引先がつぶれたりとかはありますけどデザインをしていく上でそこまでの影響は無いと思います。
―デザインをするのは東京の方がやりやすいんですか
O-物作りをするうえでは東京の方がロンドンよりやりやすいですね。
―海外と日本とでブランドに対しての反応は違いますか
O-アジアに関しては同じだと思います。
H-ロンドンでやっていた時は日本ブランドだと認識され、日本ではロンドンブランドだと認識されています。日本人モデルも使っていますし自分達では良くわかりませんが。私が思うに日本ブランドだと思います。
―あなたのデザインにイギリス人のルーツを感じますか
H-それは一切感じませんね。London Fashion Weekも変わってきていて今はシンプルなものも目立ちます。イギリス人というよりはセントマ出身ということの方が大きいと思います。テクニックはセントマで習ったものですし。それぞれの学校にスタイルがありLCFのスタイルもありますしMiddlesexのスタイルもあります。
―東京の街がクリエイションに与える影響はありますか
O-ロンドンに住んでいた時とそんなに変わりはないと思います。ただアートというものに触れる機会はロンドンの方が全然ありましたね。ギャラリーも街中にいっぱいありますし、ショッピングに行った帰りにそういうところによることも普通だったけど日本は「行こう」と思わなければ行かなくなりましたね。
―ロンドンは多くのギャラリーが無料ですからね
O-それもありますね。
H-(ギャラリーが無料なのは)人々へのギフトだと思います。日本ではお金を節約するためにそういう場所には行きません(笑)
―横浜の方に住んでいるそうですが
O-横浜でも少し田舎の方です。
H-今住んでいる場所がとても好きなんです。田んぼもあるし田舎が大好きです。生まれはロンドンの中心なのですが。渋谷から僅か25分の距離で(都会から戻った時に)凄く自由を感じます。コンビニも下の階にあるしカフェもその隣にありますし。自分の精神にとっても良いです。
―日本は好きですか
H-ダイスキ、イチバン。この国にずっと住みたいです。この国のライフスタイルが合うんですよね。初めてこの国に来た時エナジーもあるし何もかもが新鮮でしたし、物は安いですしこのような国は他にはないと思いました。
―日本のファッションのマーケットはどう思いますか
H-簡単に言えないほどマーケットが大きいですね。ファッションに対しての意識も高いですし。シルエットや彼らが何を着るべきか、どういうものが必要かなどファッションを理解するためにたくさんの時間を費やしています。日本人の女性のほとんどがどのように着こなせばいいか理解しています。勿論それは私が好きか嫌いか関係無く。コギャルもどのように着こなせばコギャルになれるかわかっていますし。
O-確かにスタイルとしては誰かの為に着飾ってるみたいな。ファッションを楽しんでいる人が多いですよね。スタイリングをすることを自分達で楽しんでいるというか。
―逆にイギリスに行って気付いたことはありますか
O-日本にいる時はロックっぽい人とかパンクっぽい人とかが多いのかなと思っていたんですけどでもイギリスに一番最初に行って気付いたことは凄いシンプルな格好をしている人が多い。ひとつ驚いたのが女の人でも30代、40代の人がぬいぐるみのバッグを背負っているいることですね。普通の格好しているのにリュックだけぬいぐるみみたいな。海外は歳によって着る服があるということはないですね。その辺は凄く自由だなって思います。日本は「この歳でこれは着れない」というのがあるので。
―実際にIn Processの洋服を着ている方は自分達と同じくらいの世代の方なんですか
O-そうですね。上もいますけど。メインは同じくらいだと思います。メンズはもう少し若くて。
―3ブランドの売り上げの比率としてはどのくらいですか
O-メインラインが一番ですね。
H-メンズに関してはまだまだ小さいです。
―イラストレーションはどこから思いつくんですか
O-その時思っていることですね。感情とか。テーマがあるものは勿論考えますけど「なんでもよい」というものであれば好きなように描いていますね。「将来本を出せたらいいね」っていつも言ってるんです。セントマーチンのプロジェクトも自分が思っていることや自分がネガティブに考えていることに対してのことをテーマにしていたんです。でも彼はもう少しプロセス寄りだったと思います。
―パターンをやられている方はパターンからデザインを起こす方が多いようですがデザイン画は描かれますか
O-描きますね。
―好きな日本人ブランドはありますか
H-Blankというブランドが好きなんです。
O-結構プリントが特徴的なブランドで。
H-それにAnrealageも好きです。Hiroも好きです。Hysteric Glamourも好きですね。ミニマムな日本人デザイナー達の洋服が好きです。
―ブランドは少しずつ成長させて行きたい感じですか
O-そうですね。なんでもやってみたいですね。アクセサリーもやってみたいですし。
―大原さんは今後やりたいことはありますか
H-イラストやコラージュに限らず将来は色んな事に挑戦したいんです。プロダクトデザインなども出来たらいいですね。