Interview

KOU 前篇

線と点だけという驚くほど細かく敢えて非効率な手法で作品を描くKOU。デザイナーHIRO氏に認められHIRO Shopでの作品の展示やHIROへのプリントの提供など徐々に活躍の場を広げつつある「絵を描くのが好きな人」KOUに話を聞いた。

-絵を始めた理由について教えてください

空想が好きだからずっとその空想を形にしたくて絵やろうかなと思ったら面白くなっちゃったという感じです。絵を真剣に始めてからは4年くらいです。

-その前から絵は描いてたんですか

描いてましたね。小学校一年くらいからですかね。最初は落書きなんですけど。テストって裏白いじゃないですか。だからまずテストが始まったと同時に後ろにして絵を描いて、絵を完成させてから表にすると残りが3分とかなんですよ。とりあえず名前だけは書いて出して。高校でもテストが始まったと同時に裏にして絵を完成させて表にしてたから辞めさせられて。でももう一個の高校でもテストが始まったと同時にテストを裏にして絵描いてやっぱり名前しか書けないから完成出来ないんですよ。良い先生だとたまに絵に○をもらったりもするんですけど。絵の他に何も無かったんでしょうね。服が縫えれば多分小学校から服縫ってたんですけど縫えないじゃないですか小学校だと。でも絵なら誰でも描けるじゃないですか。だから絵が一番表現しやすかったんですよ。

-絵描きになりたいと思ったのはいつですか

専門学校を辞めるときには絵で生きていこう、絵描きになりたいと思って辞めたんですよね。

-なぜ美術系の専門学校にしなかったのですか

なんでですかね。特に何も目標は無かったんですよ。ただ絵が好きなだけで。

-以前は服飾系の学校に通っていたそうですがそれはなぜですか

ドレメは東京に来る理由なんです。東京に来るには学校という理由があれば来れるじゃないですか。物は作りたかったんですけど。最初は美大に行きたかったんですけど美大は頭が良くないといけないところばかりだったので中途半端な場所なら行きたくないなという思いだったので専門学校にしました。

デザイン画のコンクールがあったんですけど文化は落とされてしまったんですよ。高校も一回辞めてるし、もう一つの高校も成績があまりにも悪い、出席もあまりにも悪かったので文化を2回落とされて。でもドレメ主催のデザイン画のコンクールがあってその中の4位くらいで賞を取ったんです。そうしたらドレメから「良かったらうちに来ないか」っていう声がかかったので「じゃー親に電話してください」って言ったんですよ。「親が納得しないと東京に行けないので親に言って下さい」って親に電話してもらって親から「来いって電話来てるよ」って。「そうなの?」って知らない振りして「じゃー行くしかないじゃん」って来たんですよ。

-デザイン画って何を描いたんですか

普通の服ですよ。テーマが自由だったので服を描いて燃やしてそれを紙に貼ってその穴が開いたところにまた服を描いて燃やしてっていうのを出したんです。

僕燃やすの大好きなんですよ。最近も燃やしていますね。穴を開けて。火って面白いですよね。バーっと燃えていって無くなっちゃうし。

高校の時に爆弾が凄く作りたくて、フィルムケースに花火の火薬を何個も何個も入れて。でも導火線が短すぎて火付けたと同時に爆発しちゃって。それをカメラでみんなで撮ってたんですけど。

-何で東京だったんですか

東京大好きなんですよ。

-でも結局一年目で学校を辞めたそうですが学校を辞めた理由はなんだったんですか

ああしろこうしろ言われるのが嫌だったんですよね。例えば先生に「ここは黄色より紫の方がいい」って言われるじゃないですか。 今だったらそれがアドバイスってわかるんですけどその時は「ばばあの感性だろ」って思って。面倒くさいし東京来れたしこのまま東京居座ろうって辞めちゃったんですよ。でも親には怒られて一ヵ月後には家を解約されていました。その後はバイトしてずっと絵を描いていましたね。

-現在のスタイルである点だけで絵を描くようになった理由を教えてください

周りに絵を描いている友達が多くて、それで「こいつらより上手くなろう」と思って描いていくうちにそいつらより上手くなって、そしたらまた別の絵が上手い友達が現れるんです。「こいつらよりは上手くなれるな」と思って描いて、そうしたらまた「美大生に細かい絵を描いている人がいる」って言われて 「じゃー見せてくださいよ」って言ってその人の絵をみたらそこまで細かくなかったんですよ。「じゃー2ヵ月後に本当に細かい物を見せてやるよ」って点だけで描くようになったんですよ。

-点で絵を描き始めたのはいつですか

学校を辞める前は点では描いて無かったですね。以前は線で細かい物を描いていたんですけどそこまで細かくは無かったんですよね。今は点だけなんでその時の物と比べるとかなり細かいですよね。点以上に細かい物って多分ないと思いますし。最近は線も入れて描いているんですけど。

-描くのは全て白黒の絵ですか

白黒だけですね。色は使わないです。色を使うと想像出来ちゃうんで決めちゃうじゃないですか。例えば気持ち悪い生物を自分が描いたとしてもここが黄色だったら「あ、黄色の生物なんだ」って見た人が思っちゃうじゃないですか。でも白黒だと色んな色に見えるじゃないですか。未完成的な感じかもしれないです。想像するのが好きなので自分が。一緒に想像して欲しいわけじゃないですけどなんか気持ち悪いなって思ってもらえるだけで面白いじゃないですか。

-細かい絵にこだわる理由はなんですか

実は細かい絵は好きじゃないんですよ。簡単な絵のほうが正直楽ですよね、簡単にささっと描いて10万円で売れたなら楽ですけどセンスも才能も無いって気づいちゃったからそれで自分は絵が上手くないって気づいて・・・。

-それはどうやって気づいたんですか

自分の絵ですね。自分の絵を見て「これまずいな」って。それならどの部分で勝負するかってなったらプロが出来ないこと、プロってやっぱりお金なんで効率が良い方を選ぶじゃないですか。必然的に効率悪いことって遠ざけますよね。その非効率なことって細かくて時間かかることですよね。だったらそこでしか勝負出来ないんじゃないかなと思って。0.01mmのボールペンをメインに7種類くらいのボールペンを使って描いています。ボールペンって白黒でもメー カーによってインクの色が違うんですよね。薄かったり濃かったり中間色だったり、そういうので描くから立体的に見えるんですよね、それが面白いですね。

-絵を学んだことはありますか

ないですね。「ああしなさいこうしなさい」って言われるのが好きじゃないんですよ。服の時もそうですけど「お前の言ったとおりにやれば俺はプロになれるんだな」ってことになっちゃいますよね。そうしたら先生は絶対に「うん」って言えないですよね。でもその「うん」が言えないのに何で押し付けてくるんだってなってしまうんですよね。

自分は自由でいい、自由が面白いですよね。昔までは自分の感性で良い悪いって言ってたけど今はもう何でも良い、むしろ否定するのがおかしいじゃないかと思っちゃう。自分はアートという物が何かわからないけどもしアートという物が存在するのであれば全部アートだし存在しないのであれば全部アートじゃない。 アートってあんまり良くわからないですね。

-あなたの描く作品はアートですか

自分の作品はアートじゃないと思います。周りはそういう風に言ってくれますけど自分では全然そうは思わないです。アートって格好つけた言葉にしか聞こえないような気がして。だって絵は絵でグラフィックはグラフィックで人形は人形だから。

-ではあなたは絵描きですか

絵描くのが好きな人ですね。イラストレーターも「何で横文字なの?格好つけてるでしょ?」ってなってしまうので。だから絵を描くのが好きな人って言われたいですね。自分はアーティストとも思わないしアートとも思わないので。凄いって言われてもそうは思わないし「あ、そうですか」としか思わないし凄くないと言われても「あ、そうですか」としか思わない。

-何の絵を描いているんですか

これが自分でもわからないんですよ。本当に申し訳ないと思うんですけど。だから見てくれる人が逆に「なんかわかる」って言ってくれたら「え!」って思いますよ。俺がわからないのに何でこの人が分かるのって。

-作品に題名はあるんですか

題名もないです。全くわからないんですよそこが面白いんですけど。

-そのわからない物はどこから出てくるんですか

自分もわからないんです。無心と言うかイメージも無い、何も無いんです。勝手にじゃなく手を動かそうとは思ってるんですけどでも何も無いんです。

-どこから影響を受けているんですか

それは好きなものからなんですかね。操り人形だったり豚のホルマリン漬けだったりそういう物も持っていて。死体の写真集だったり、昔出回っていたのが今は禁止で手に入らないんですけど。でもそれが悪いことだとは思わないんですよ。自分の描く物が奇形児だから悪いとも思わないんですよ。脳みそは見てみたいし潰してみたい。好きなものが変な物、周りが言う気持ち悪いという物が好きなものなんですけど好きなものがたくさんあってそれを見て無心で描いたらそういう物になったんです。でも無心といってもどこかで絶対的な計算はしていますしバランスだって計算しています。でも自分でもわからない、不思議なので社会的にどうなんだろうって思っちゃいますね。

-他の人の作品などから影響を受けているということはありますか

影響と言うよりはその都度の反発ですかね。多分凄い人に会えば会うほどそれを超えてやろうって思いが出るんですよ。以前さとうかよさんのぬいぐるみを見て「こんなぬいぐるみ俺でも出来る」と思ってぬいぐるみをやったことがあるんです。そうしたら1週間やっても2週間やってもそれが出来なくて「やっぱ凄い人だ」と思ってファンになったんですよね。だからもうぬいぐるみをやろうなんて思わないですね。

続く

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