Design Complicity(デザインコンプリシティ)は2011年に設立されたブランド。服を通じて、それぞれの生活をデザインすることを目的とし、プロダクトデザインとしての、服作りの提案している。
デザイナーの小暮史人は文化服装学院在学中からANREALAGEにてインターンシップを行なう。ANREALAGEでチーフパタンナーを3年務め、独立。昨シーズン発表された「木漏れ日傘」など自然とデザインを調和させたアイテムを数多く発表し注目を集める。
―ファッションにはいつ興味を持ち始めたのですか?
はっきりと、いつから興味を持ったかは覚えていませんが、小学6年生の時に、当時高校生だった兄から古着のTシャツをもらい、すごくうれしかったことは覚えています。
その事がファッションに対する憧れを抱いた、僕自身の原点なのかもしれません。
―文化服装学院に行く前はどのような学生でしたか?
私服の高校に通っていたので、その頃からファッションは自分の日常の中にある大きな要素のひとつでした。
元々何か物を作る仕事がしたいと考えていた中で、専門的な勉強がしたいと、自然とファッションを志す選択をしていました。
―文化では何を学びましたか?
1年次は基礎的な服作りを学び、2・3年次はパターンを専攻していました。
2年次の秋頃からANREALAGEでインターンを始めたことで、自分は服を作って生きていく、という明確な意思が出来ました。
―ANREALAGEでは何を任されていたのですか?またどんなことを学びましたか?
パターンを担当していました。
僕が入社した頃から、「かたち」をテーマに、以前より実験的な服作りを試みていたので、毎シーズンが実験と考察の繰り返しでした。
その中で僕自身が学んだことは、既成概念に囚われる必要はないということ。
シーズン毎にテーマを設け、それぞれのルールに沿って服を作るという方法は、同時に様々な制限の下で服作りをしなければならないということでもありました。
それはある意味では、不自由な方法であると考えられるかもしれません。
それにも関わらず、結果として出来たそれぞれの服からは、既成概念の枠を超え、より自由なクリエーションを感じることが出来ました。
―ブランドをはじめた経緯を教えてください。
自分に何が出来るのか、どんな服やモノを作るのかを知りたくてブランドを始めました。
作るという行為を通して、自問自答をしたかったんです。
―シーズンのテーマはどのように決めるのですか?
生活の中で感じていることが、自然と集約されていってテーマが決まります。
―”Design Complicity”の、「プロダクトデザインとしての服作りの提案」ということについて詳しく教えてください。
プロダクトデザインというと、インダストリアルデザイン(工業デザイン)と捉えられることが多いですが、そうではありません。
プロダクトデザインとは、製作物全体を意味するもっと包括的な意味合いを持っています。
「プロダクトデザインとしての服作りの提案」という考え方はつまり、服をファッションという小さなくくりで囲ってしまうのではなく、それぞれの生活を構成する様々な要素の一つとして考えるという事です。
服が持っている「生活用品」や「衣料品」といった、より生活に寄り添った側面に魅力や可能性を感じています。
時代性を大いに含むファッションという概念は、常に新しいものであると同時に、また儚くもあります。
その儚さが魅力であるという考え方もありますが、時代やトレンドに左右され淘汰されるものではなく、たとえば身近にあるお気に入りのペンやコップ、照明などのように、生活の中で長く愛される存在としての服を作っていきたいです。
服とは本来それぞれの生活の中に根付いていき、その中で価値を増していくべきものであるはずです。
消費することに対してネガティブな今の時代や、消費ということについての意味が問い直されている中で、この考え方がひとつの答えとなればいいなと考えています。
―.特に、今回は木々のプリントが印象的でしたが、どのような過程から生まれたアイディアなのでしょうか。
今シーズンは「木漏れ日傘」という服以外のアイテムを作りました。
日常の中で美しいと感じる、木漏れ日という現象をデザインしてみたいと考え、そのツールとして傘を選択しました。
この「木漏れ日傘」が持っている「緑」や「光」といった要素をもとにして、洋服のデザインに広げていきました。
―「木漏れ日傘」というアイテムはとても印象的です。プロダクトデザインということで、今後、服に限定しないライフスタイルの提案ということもなされるのでしょうか。
ライフスタイルの提案というと、僕の場合少し大袈裟になってしまうような気もしますが、服は生活を構成している様々な要素の一つであると考えているので、服もモノも同じようにデザインの対象として考えていければと思います。
―”Design Complicity”の服が「ユニセックス」と言われますが、その「ユニセックス」という概念について、小暮さん自身どのように捉えておられるのでしょうか。
現在のDesign Complicityの服は性差を強調させるようなデザインが少ないですし、またその事を目的としているわけではないので、ユニセックスとしてアイテムを展開しています。
今後メンズ、レディースを分けて商品を展開する可能性もありますが、今はまだわかりません。
―”Design Complicity”の服を着る人に、服を着てもらって何か感じてもらいたいことはありますか。
Design Complicityの服を着たそれぞれの方が、服を通して自分自身を肯定できるような瞬間を作り出せればいいなとは考えています。
「自己肯定としてのファッション」を大切にしていきたいです。
―パターンもご自身で行なっているのですか?
パターンメーキングは全て自分で行っています。
デザインをする時点で、同時にパターンを頭の中に思い描いていることがほとんどです。
―デザインする上で大切にしていることはありますか?
生活から切り離さないということ。
―ホームページにある肉売り場に服があることにはどういう意図があるのでしょうか?
「生活と違和感」というテーマの中で、少し皮肉も込めてこの写真を撮りました。
どのように捉えるかは、それぞれ見た方に委ねようかと思います。
―東京のファッションについてどう思いますか?
海外のファッションについてあまり詳しくないので、「東京のファッション」がどういうものなのかは、よくわかりません。
ただ、色んなジャンルのファッションの人がいるということは、いいことだと思います。
みんなが同じマニュアル通りに、100点のおしゃれをしているなんてつまらないですから。
―ファッション業界に対し、何か問題点を1つ挙げるとすればそれはなんでしょうか。
トレンドの乱用によって、常に最新のものが一番いいものであるとし、古いものは淘汰していく考え方は、僕は問題があると思います。
例えば、去年着ていた服が、今年はもう流行遅れで着れないという状況は、明らかにおかしいはずです。
先ほども述べましたが、服とは本来それぞれの生活の中に根付いていき、その中で価値を増していくべきものであるはずです。
―尊敬している人はいますか?
人生において、最善を尽くしている全ての人を尊敬しています。
―他のデザイナーの作品から影響を受けることはありますか。
学生の頃は、マルタン・マルジェラ、シンイチロウ・アラカワなどから影響を受けました。
―ショーをやることも考えていますか?
ショーをやること自体が大事だとは考えていません。
表現方法のひとつとして、ファッションショーとして表現することが最適であれば、やる意味は大いにあると思います。
―今後のやりたいこと試してみたいことがあれば教えてください。
たくさんありますので、今後の活動を見守って頂ければと思います。
URL:http://www.designcomplicity.jp/
Interview:Ryuichiro Imae, Keita Muto
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