Interview

FLORIAN

1967年オーストリア出身のジュエリーデザイナー、FLORIAN LADSTAETTERによるブランド「FLORIAN」。
ウィーン応用美術大学(UNIVERSITY OF APPLIED ARTS VIENNA)を卒業後、ミュンヘンにて哲学を学ぶ異色の経歴を持つ。1990年代中頃よりアートジュエリー界をにぎわせ続け、ファッション性を重視した個性豊かなジュエリーは、圧倒的な存在感と想像力を掻き立てるようなフォルム、カラーリングが特徴的である。

「人が身につけてこそ本当のジュエリーである」という思想を元に、実際に身につけ、楽しめるアートとしてファッションとコラボレーションした形での表現を目指す。

雑誌「I-D」「VOGUE」「W magazine」等でも取り上げられる他、ロンドンのヴィクトリア・アルバート博物館、ウィーンのアプライド・アーツ博物館/大学でも彼の作品が並ぶ。2008年にはパリのセレクトショップ「コレット」のウィンドーを飾り、国際的に高い評価を受けている。

―現在店舗に並んでいる2012年春夏の新作について教えて頂けますか

私のデザインするジュエリーには毎シーズンテーマを決め、シーズン毎に違ったストーリーを描いています。2011年の秋冬ではNight Blueというテーマで少し暗めな色目のジュエリーを提案しました。
2012年春夏はEccentric Ecstasyがテーマです。ヴィヴィットなカラーコードに、合わせてミラーボールのようなシルバ-パーツを使ったり、フルーツや大仏を象ったオリジナリティー溢れるカラフルバーツなども使用しています。
また今季はナレティブピースと言って物語性のある動物のパーツや、カメオ、以前のコレクションに使っていたプレスのイメージをパーツにして使用しているのも特徴です。

―なぜ今回のコレクションでは今までのルックのイメージをモチーフに使ったのでしょうか

過去の写真をなぜ使うのかと言うと自分のアクセサリーを好んで付けてくれる方がいるのでそういう方に過去の作品が入っていたりすると「これあの時のね」って楽しんでくれる要素にもなると思うんです。その他にも京都の写真だったりアメリカでの写真だったり旅行で撮った写真も使用していますがこの映像でなければいけないというわけではなくてこういった要素を組み合わせることで面白くなるので使っています。
また今シーズンは相反する要素を使っているのが特徴で、例えばカメオなどの西洋の物と仏像などの西洋の物をくっつけたりしています。

photo: Mato Johannik


―ジュエリーを始めたきっかけについて教えてください

小さい頃からアクセサリーが好きで自分で何かを作るというのも好きでした。大学の頃にアートが凄く好きで彫刻なども作っていましたし、そういう工芸とアートを学んでいるうちに自然とジュエリーを作るようになったんです。それで最初はアートジュエリーを作っていました。

―美術学校を卒業後、哲学を勉強していたという異色の経歴をお持ちですが作品自体にも哲学は反映されているのですか

哲学を学んだので哲学的な要素も確かにあるかもしれませんが私は哲学とジュエリーは全く違うモノとして捉えていますので作品自体にそれが反映されていることはありません。
中にはコンセプトを盛り込みアートジュエリーとして作品を発表する人もいるのですが私自身はそういった考えには賛同していません。
ただショーピースとしてジュエリー製作とは別に作品を作ったりすることもあります。やはりアートも好きですのでジュエリーだけでなく全く別物としてアートの方の製作活動にも今後注力していけたらと思っています。

―「人が身につけてこそ本当のジュエリーである」という思想を元にジュエリーを製作されているそうですがその部分に関してもう少し詳しく聞かせてもらえますか

アートジュエリーを以前製作していたのですがその頃は美術品としてのジュエリー、見に着けるというよりは置いて眺めるようなアート作品のようなものでした。日常に寄り添うものではなくディスプレイに使われたり、美術館に飾られたり、そういう為のジュエリーです。
そういうことを続けて行くうちにふと「ジュエリーは人が身に着けてこそ始めて生きるものだから自分の製作は間違っているのではないのか」と自分の作っているものに疑問を感じるようになったのです。
“アクセサリー”という言葉の語源はラテン語からきているのですがその意味と言うのが英語で言うと“Unnesessarily additions”必要ではないものだけどそれを足すことによって何かが完成されるということ。哲学を勉強していたというのもありその言葉の意味に感銘を受け、ジュエリーを人が身につけることによって完成するようなものをつくっていきたいと思うようになりました。
私のジュエリーには正しいつけ方はありませんし、ルックブックでスタイリングの提案も示していますがそれが正しいつけ方ではありません。ですのでその人なりに楽しんで付けていただきたい。アシンメトリーなものも多いので色んな組み合わせやコーディネートを楽しんで欲しいと思っています。人によって付け方も違うだろうし、その人着ている洋服によってもまた違うように見える。私は人が自分のジュエリーを身につけているのを見るのが凄く好きなんです。

―普段好んで使われる素材はどんな素材なんですか

クリスタルやプラスチックのパーツでしたり、スワロフスキーやイミテーションのパール、それにプラスチックなんですけど長い時間をかけて抽出をしてビーズを作るような製法で作られたパールのような素材も使用しています。

―FLORIANのジュエリーは大きなパーツを組み合わせて使っているのも特徴的な気がします

大きいパーツを使ったジュエリーはインパクトもあり力強さを出しやすいので好んで使ったりもしますが逆に凄くデリケートな素材を使用したジュエリーも製作していますし幅広いラインナップになっています。日本だとなかなか目立つジュエリーは付けてもらいにくいですがそういったものもヨーロッパでは好まれています。

―日本には良く来られるんですか

今回の来日で6,7回目です。前回の来日は2009年で2年程経ってしまっているのですが出来れば毎年来たいくらい好きな国です。

―日本のどういったところが好きなんですか

素材に関しての深い興味と言うのが日本人にはあるように思います。自分ももの作りをする立場の人間として素材やものに関して異常なくらいに情熱をもっていますのでそういう日本人の姿勢を見るといいなと思いますし凄く好きになります。
私のショールームには100ものジュエリーが展示されているのですが日本人のクライアントは全ての商品を触ったり試着するんです。そういうことは面倒くさがられることもあると思いますが私は自分と同じ感覚をもっていると感じられて凄く嬉しいんです。日本人は繊細な感覚をもっている国民性だと感じます。
逆にアメリカ人は特に日本と比べるとあまり繊細な感覚を持っていない、そういうことに対してあまり理解がないように思います。展示会や見本市で見せていても日本人は凄く敏感に反応してくれるのに対し、アメリカ人の方とは売れるかどうか、ショップに置けるかどうか、そういうビジネス的な目線で見る。そういうのはさびしいなと思います。
日本の市場ではコンサバな商品が凄く人気がありますが、その真逆でインパクトのあるものを買う人がいたり、男性用のジュエリーとしてそういうものを扱ってくれる店もあり
それを好んでくれる成熟したお客様達がいます。ですがアメリカで好まれるのはコンサバな作品だけです。

―日本人デザイナーがデザインするジュエリーに関してはどういった考えをお持ちですか

あまり日本人のジュエリーデザイナーの方や作品は知らないので深いことは言えませんがやはり凄く繊細でデリケートなものが多い気がします。


photo: Mato Johannik

―FLORIANさんの生活するオーストリアではどのようなデザインのジュエリーが人気なんですか

デリケートなメタルのジュエリーが人気があります。日本の市場と比べると大ぶりなものが人気がありファッションジュエリーが人気だと思います。

―ファッションとジュエリーは密接に結びついていると思いますがファッションブランドとコラボレーションすることもありますか

過去にフセインチャラヤンとコラボレーションでジュエリーを製作したことがありますが自分のジュエリーはファッションの感覚はあまりないような気がしますし自分もそういった観念を持ってデザインしていません。ファッションブランドと仕事をするとどうしても彼らの洋服を目立たせるためコレクションとなってしまうので、そうではなくお互いの良い関係がうまく出来るのであればまたコラボレーションしたいと思っています。

―次回の2012秋冬コレクションのヴィジョンを教えてください

次回のコレクションは秋冬なので温かみのある色調がメインとなります。ゴールドも使いますが、燃えるような深い赤だったり茶色などの温かみのあるものからインスピレーションを受けコレクションを製作します。

Interview & Text:Tomoka Shimogata, Masaki Takida

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