”「ファッションはみんなに元気を与えられるもの」少なくとも僕はそれを信じています。そういう馬鹿なことを信じている人達がデザイナーをやっているんじゃないのかなってそう思います”
→CHRISTIAN DADA 森川マサノリ 1/6
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―振り返ってみて4シーズンこの不況の中、他の若手ブランドに比べ凄く順調に成長しているように見えます
勿論自分だけの力ではなく色々な人の助けがあってこそなのですが思い描いていたよりは凄く順調だと思います。ただそれが一過性のものでは駄目なのでそうならないようにちゃんとコントロールしていかなければと思っています。僕自身はネガティブな人間なので常に危機感に怯えながらやっています。
―レディーガガの衣装も話題になりましたが衣装の仕事をやられることも多いのでしょうか
そう思われるかもしれませんが衣装として服を作ることはほとんどありません。コレクションの作品をリースして衣装として使用してくださることが多いですね。そういう意味ではメディアに出るのはほとんどがレディースの服です。
―レディーガガの衣装のリクエストってどんなものだったのでしょうか
黒、ストラクチャー、それに当初は10メートルのロングドレスという依頼でした。イメージとしてはサードコレクション(2011-12A/W)の延長です。
―どのような反響がありましたか
そのおかげで海外プレスの方々がショーに見に来てくれたというのは大きかったかもしれません。僕はオフスケジュールでショーをやっていますので基本は海外のプレスは僕のショーにアテンドされないんです。それに地方での知名度だとかそういった面では大きかったと思います。それがオーダーに繋がった部分もあると思いますし。
―CHRISTIAN DADAをレディーガガの名前で知った人も多いと思います
12月の来日中にも着用してくれた事もあり、それは非常に多いと思います。でもそれは結局一過性の物というか、僕自身は実際あまり気にしていません。勿論嬉しかったですし、感謝もしていますけどガガに着てもらう為だけにファッションをやっているわけではないですし、彼女が着ているブランドも他にも多い。それだけを売りにしていてもブランドとしての成長はないと思う。僕自身は常に次のコレクションに向いていますし。
ある程度認知もされてきたので新しい方法を模索したいと思っています。
2012 S/S Collection ショー後のバックステージより
―日本ではショー後にプレスの方向けにデザイナーの囲みインタビュー(質疑応答)をやるのが一般的です。ですが今回はショー後の囲みインタビューをやりませんでした。それは何を意図していたのでしょうか
前回の印象が良くなかったというのも正直あったんですけど僕が話すことによってもしかしたら思考の邪魔になるかもしれない。余分な感情がそこにのってくると変なものになってしまうかもしれない、そう思って囲みを断りました。そこで僕が話すことでの補足としてのショーの評価も求めていなかったですし、言葉じゃなくても余分な感情を入れたくなかったんです。
―プレスの方たちの評価は気にしないということでしょうか
そういうわけではありませんが純粋にコレクションを発表したかったという想いが強かったんです。僕が言葉で伝えようが伝えまいがどちらにしろ評価はされる。自分の中で感情をなるべく省きたかった。
それにショーを終わったあとに純粋にその気持ちを共有したかったというのもありました。前回はショーの終了後すぐに囲み取材を受けてみんなと気持ちを共有できなかったので。結局ショーというモノは僕だけが創り上げるものではなくチームとして創り上げるもの。そこの部分を共有したいんです。それはスタッフだけじゃなくバックステージを撮ってくれるカメラマンさんもそう。彼らがいることによってアシスタント達のモチベーションにも繋がっていると思うしそういうものも含めて舞台裏には色々詰まっている。一般の人と一緒の気持ちだと思うんですよ。
今回は囲みをしなかったからこそ裏で友人たちとゆっくり話す時間があったんです。でも本来そうあるべきだと思うんですよね。今回のバックステージは本当に雰囲気が良かった。
―レディーガガの衣装のことで取り上げられたこともあったからだと思いますが前回と今回で注目度は全然違った気がします。まだ本格的なショーは2シーズン目なのに既に新人として扱われていないというか
自分ではわかりませんが、お客さんはたくさん来てくれたと聞きました。注目度が高いのは嬉しいですけどもっともっと上の人はいますしそこで満足してはいけない。日本で発信したい気持ちはあるんですけど結局日本のファッションは世界的に見たらちっぽけなもの。日本から世界に発信していく為にまだまだ僕のブランドでは正直他のブランドにも勝ってない部分はたくさんあるんだろうし、影響力もまだまだ。だからこそ面白いんです。
―デザイナーですのでショーを生では見ることは出来なかったと思いますが、後からショーを見返してどう感じたのでしょうか
全体的に“ファッションショー“って言う感じが強すぎた部分はあったと思います。それに服に関しても一般的な部分を汲むのであれば、もう少しディテールに落とし込んでも良かったと感じました。
―それは感じました“ファッションショー”っぽいファッションショーというか
そうですね、デザイナーとしてもう少しディレクションすべきだったし出来たのかなって。演出に関しても言葉では伝えますが基本は全部演出家に任せています。僕が細かく詰めると言うよりは相互作用によって出来上がっていくものだと思っていますので。
―”ファッション“はみんなに元気を与えられるものだと思いますか
少なくとも僕はそれを信じています。そういう馬鹿なことを信じている人達がデザイナーをやっているんじゃないのかなってそう思います。
―それがファッションショーをやる意味にも繋がると
それもあります。「勝つ」という単純な目的の為だけに肉体を酷使して世界一になりたいという格闘技の人と近いというか。ファッションで何か出来ると勝手に信じているというか。
―震災の時は音楽を例に出して「音楽は今ショーを行う事に違和感を覚える人もいるでしょう。しかし同時に僕は音楽番組などの生放送などを見て違和感に思う事もあるのです。音楽は皆さんに元気を 与えられて、ファッションは元気を与えられないのか?ラグジュアリーな物だから自粛するべきなのでしょうか。決してそうじゃないとも思うんです。」ともつぶやいていました(3月25日)
音楽は一般的に取り上げられる。震災があったからこういう歌で元気づけようとか。僕らの作ってる服はラグジュアリーなのでそういう風に括られるのはなかなか難しいと思いますけど、それって別に音楽だけじゃなくて服でも出来るんじゃないかって。一万人いてたったの何10人かもしれないけどそう思う人の手助けになれたらいい。
勿論僕もファッション自体で震災の人を勇気づけるのは難しいと思っている。僕のブランドもそれが出来るとは思っていない。ただ単純にあの時期にファッションショーをするということに対して世界からの見られ方が凄く悪かった。それに対しての訴求の場でもありました。