Interview

YEAH RIGHT!! 河村 × JUVENILE HALL ROLLCALL 入江 ” COMMON SLEEVE” 2/3

服を作っていると「理由付け」や「テーマ」というものを求められる。でも僕は「何もなくても作れますよ」っていうところをやりたいなって思っている

→YEAH RIGHT!! 河村 × JUVENILE HALL ROLLCALL 入江 ” COMMON SLEEVE” 1/3

入江(以下I):僕たちはお店を持っていない。だからCOMMON SLEEVEを切り口にしてwebでお店を持ってみても良いのかなとは思っています。

河村(以下K):リストにはなかったのですがPOTTOにもCOMMON SLEEVEをやってもらえることになったんです。僕は山本さんの姿勢には凄く共感している。子供がいるというところもそうだし。山本さんはアトリエで作ってその隣にある店で服を売っている。そういうのをうちもやりたいなと思っています。

I:山本さんがどうやってCOMMON SLEEVEをくっつけるか凄く興味がある。一番謎なくっつけ方をしてくれそうで楽しみにしています。もしかしたら袖としての使い方じゃないかもしれない。

K:それでも全然いいです。

I:POTTOもそうだけど若い世代の人たちも取り込んでいけたら面白いと思う。僕自身はアニメを見てるので彼らがそれに影響を受けるのは理解出来る。自分の世代であれば音楽だったり、スケートだったりっていうカルチャーが彼にとってのアニメだったりするだけだと思う。だから僕はそういう(新しい世代の)人達に対して異質な人がやってきたとは全然思わない。単純にただ興味が時代が変わってアニメがメインになってきたんだろうなって。
アニメって音楽よりも映像よりも更にその世界から出られない感じというのは一番強い気がするんですよね。

—新しい世代の人たちって2Dから着想を得てそれを立体(3D)にみたいな人はたくさんいますよね

I:確かにそういう人たちが作る服ってフォルムがフィギュアみたいな造形だったりする。でも時代でその興味の対象が変わってきているだけなんですよ。

K:ただ僕はそういう服に対して”着たい”っていう気持ちにあまりなれないっていうのは正直ある。面白いものを作っているなとは感じるけど服を一点、一点見たときに着たいとはなかなか思わないですね。

I:ただそれもやっぱり世代というものが大きい気がしますね。取り入れたカルチャーをどう消化するかっていう。
でもそういう意味ではかわいそうだけど今は生きにくい時代かなと思う。そういう服つくって前はお金を手に入れてさらに上に行くこともできたけど今の時代、それを作ってお金になってその先っていうのは正直難しい。

K:なにをやれば正しいっていうのもほとんどないですからね

I:しかも彼らのほとんどが自分で縫っていたりする。工場生産じゃないから数にも限りがある。

K:本人たちはどう思っているのかわからないですけど結局売れにくいというかどんと行かないことでアングラにとどまってしまう気がするし、アングラっぽさで売っていくと思っているのであれば余計にそこにとどまってしまう気がする。

—工場生産という話が出ましたがPOTTOの山本さんのように自分で作って自分で生産しているデザイナーさんもいますよね

I:山本さんは彼らと違って全然カルチャーが複雑だと思う。2、3個から引っ張ってきている訳じゃないと思う。

−COMMON SLEEVEを続けていくことによって新しいデザイナーを育てられたらいいですね

I:育てましょう(笑)

K:派生させるだけさせといてそれがどんな反応になるか、その面白さを狙う、Common Sleeveもそんな風になりたい。だからこっち側ではデザイナーを選定しないみたいな。

−なんでこのブランドいれたんだよみたいなことにはならないんですか

K:こっちは知らないよって言います。

I:こことは合わないだろうなってところともあえてやっていきたい。

K:ただ今はまだ「僕も入れてよ」って言う人がいない。囲っている風に感じているのかもしれないですね。

I:そういう印象はどんどん変えていかないとですね。

K:流れに任せすぎて内輪感が出てしまったのが今シーズンの一番の反省点ですね。

I:とりあえず好き、嫌い構わずこの話を投げていかないといけないなっていうのは感じますね。内紛起こっちゃうくらい。

K:さすがにこれをやることで内紛なんか起こらないですよね?起こったら面白いですけど。

I:最初は狭いところから発想した。俺と河村君のところの洋服をやってるお店であればやりたいっていうのはあるだろうし。でもそういう考えはどんどんこれから外していく。

−デザイナーの幅が広がれば消費者側だけでなく作り手側にとっても楽しみが増えてくる

I:その為にはファッションビル系でやってるブランドがまず足りないですよね。

K:そういうところとやれればCOMMON SLEEVEにも新たな可能性が広がりますよね。JUVENILEがこのブランドとやることによってこの女性誌に載ったみたいなそういうのがあっても面白いと思うんです。

−“タイプの違うデザイナー同士の異色のコラボが実現“みたいな

I:そうなっていけば本当に面白い。好き嫌いせず種は蒔いていく。海外にも投げれたらいいと思っている。

−COMMON SLEEVEのショーとか

I:いいかもしれないですね。

K:ただそのショーをやるスタイリストは絶対きついですよね。
でもそういうことが出来れば東京が面白くなりますね。

I:僕はショーはやってないですが最近自分の中でアグレッシブなテンションがあまりない。昔は裏原カルチャーのカウンターで「そうじゃないんだけどなー」みたいな突っ込みが出来た時代だった。だけど今はそういうのがないから「そうじゃねーんだよ」という気にもあまりならない。「俺が好きだったらいいんだ」みたいな服の作り方になってきてしまってる。それはそれでいいんだけど、やっていてテンションがあがらない状態ではありますね。
もしかしたら一人でやっていて、一人だからこそ、そこそこ食えているのが問題なのかもしれない。もっと崖っぷちにならないといけないのかもしれない。売れている訳ではないけどアシスタントも誰もいない、でもそういうストレスをいれていかなければいけないのかもしれない。でもそれを外したいから洋服を作っている訳でその辺の線引きが自分でうまく出来ていないまま、10年くらい経ってしまう。アシスタントもいない、事務所も構えていない、店も持っていない、他の人をみて「頑張ってるなー」って、「俺はなんでこんなことになっちゃっているんだろうな」って思う反面、それで許している自分がいる。若い子をひとまとめにするのはいけないけど「こうじゃないと思うんだよ」ってそういう気持ちがあって服作りをしているんだと思う。

K:いやそう思って服作りをしている人って少ないんじゃないですかね。

I:じゃーなんで服作っているんだろう。今僕は単純に野菜育てているような農家みたいなのり、生活するための手段みたいなのりで洋服を作っていたりするけど僕が若い頃メーカーにいた頃って「こうじゃねーんだよ」って思いがあって「こうじゃねーからこうだろ」って思いがあった。今自分がそういういらいらすることが減ってきているのが逆に寂しくも感じる。

—それってブランドを始める前はコレクションブランドにいた。でも今はコレクションブランドじゃないからっていうのも理由があるんですかね

I:でも僕自身はコレクションに対しての幻想はあまりない。デザイナーブランドから入ってるし、(ファッションを)好きになったのはそこからだからコレクション自体を認めてない訳ではないですが。
ただずっとコレクション班で自分もそういうところにいることで天狗になってしまっていた時期があった。でもそれが外にでたら「なんて自分は使えないやつなんだ」ってぼきぼきに折られたんです。最初はコレクションに携わることが良い部分というのもいっぱいあった、でも逆に嫌な部分というのももの凄くあった。だからそこから逃げよう逃げようとして最初服を作っていた。コレクションに携わったカウンターじゃないけどそういうつもりで服を作っていた、でも今はそういう力すらなくなってきている。服を作る動機というのをだんだん見いだせなくなってきている。だからここ何年かは「自分が着る服を作れば良い」、「自分が欲しいのだけにしよう」という感じになってきている。でもそこにしかモチベーションを持っていけなくなってきている。本当は世間に対してどうとか「そうじゃねーんだよ」っていう突っ込みをいれなきゃいけないはずだったんだけど突っ込みをいれる相手がだんだん見つからなくなってきて、年を取っているから大したものを作っていなくても一応先輩だから周りから気を使われる。気を使われて服を作っていると文句も言われなくなってくる。そうするとなんとなくよくわからなくなってくる。

K:服を作っていると「理由付け」や「テーマ」というものを求められる。でも僕は服を作っていて何が嫌かと聞かれたらそれが嫌ですね。「お前が語っている理由って本当にお前から出てきたものなの?」って。そうじゃなくて本当は「コレクションやるからテーマをつけなきゃいけません」って言われる、「だからつけているだけでしょ?」って思うんですよね。僕たちのブランドは毎回テーマを“DAILYLIFE OF THE ETERNITY”永遠なる日常って言っているのですが、それは要するに「何もないよ」ってことなんですね。「何もなくても作れますよ」っていうところをやりたいなって思っている。中学入ってからみんな格好良いと思ってタバコ吸い出す。でも僕は「お前らみんな一緒にやって格好悪くない?」って思ってしまうタイプなんですよね。みんなで一斉に頑張ってテーマつけて「こういう気持ちでやっているんです」って、それって「本当はリアリティがなくない?」みたいな。さっきの農家じゃないですけど「母ちゃんが毎晩夕食作るみたいに俺は服を作れるよ」みたいなところでやりたいなっていうのはちょっとあったりしますね。

I:それは僕も凄く理解できる。僕はネタを古着に求めたり、スケーターに求めたりするけど「なくても作れるよ」っていうのを前回やったし、自分の中でそういうものを出したりいれたりはしている。季節にもよるのかもしれないけど、春夏になると基本的に僕は切ったジーンズとTシャツとVANSと革ジャンだけあれば何もいらないからS/Sはそういう服になってしまう。逆に寒くなってくるともう少し重たいものが着たくなるからそういったものを作る。軽くなっちゃうとそういう風に何か奥行きのあるものにネタを求めるところもある。でもそれがなくても勿論作れたりはする。洋服の最初の入り口はデザイナーブランドだった。ファッションを掘り下げていく過程で濃度を上げるために過去をさかのぼっていく人と入り口はデザイナーの服かもしれないけどその奥のカルチャーみたいのに興味がいくタイプがいる。僕は多分後者のタイプな気がする。

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