Interview

Jordan Hunt

©Anonymous

「音楽は自分自身を表現する為に学ぶ言語」と言い、作曲家、音楽家、アーティスト、そして衣装製作と幅広い分野でマルチな才能を発揮し、Theo Adams’ Companyでも重要な役割を担う天才Jordan Huntにインタビューした。

-様々な事業に取り組んでいらっしゃいますが、ご自分の肩書きはどのように考えていますか。現在されている活動について教えて下さい。

今日、そのことについて友人と話をしていました。結論としては、自分自身が幸せになれることをしているだけです。自分では、作曲家または音楽家だと考えて います。現在は作曲、演奏(ヴァイオリン、ピアノ)、演劇(ダンス、パフォーマンスアート)、そして衣装制作をしています。

-あなたのミューズは誰ですか

ミューズは常に変化します。他の作曲家や、曲の一部であったり、ダンサーやアーティストといった私が愛する人達、そして私自身の経験です。一緒に仕事をす る人たちからインスピレーションを得ますので、誰かと一緒に仕事をする度にコラボレーションは焦点が合っていき、作品はさらにあるべきものになっていきま す。

-Theo AdamsとTheo Adams’ companyと仕事をする理由、そうなった経緯について教えて下さい。彼らから何を得ていますか

最初に彼とcompanyと仕事をしたのは、2008年1月にWOWOW!集団が監督し、テートブリテンで行われたプロジェクトでしたが、それは確実に厳 しい試練でした。私はTheoのエネルギーや情熱、自主規制のない自由さが大好きで、そこから常に影響を受けています。また、彼のパフォーマー達(私が Theoを介して知り合ったか、私が彼に紹介したダンサー、歌手、音楽家たち)はそれぞれに多種多様な才能や特徴を持っていて、一緒に仕事をすると並外れたものを創造できるのです。それでもまだcompanyは初期段階にあると思っているので、まだ大きな潜在的可能性を秘めています。

-他者とは違うあなた独自のスタイルの特徴とは何ですか

私はメロディや色、それから感性に訴えるような複雑性や明確さ、そしてコントラストが大好きです。例えば、とても控え目でシンプルな考えとは裏腹な大胆で 野心的な言葉や、雰囲気の劇的な変化といったコントラストです。私の作品には、ユーモアやウィットがあって欲しいと思っています。他者と違う部分は、全て私個人の経験や影響を受けたものから造られていることです。

-現在、影響を受けているものは何ですか

今は、私の長年の共同制作者で友人でもあるla JohnJosephと短いオペラを書いています。彼は独自でパフォーマンスをしているアーティストで、初めて一緒に仕事をしたのはばかげたダダイズムの劇の時か、BoyfriendRobotiqueという一座の寸劇です。私は、オペラというクラシックな枠組みの中にも、ユーモアやばかばかしさの一片 を見出したいのです。それは今夏、ロンドンの至る所で、何も知らない一般市民に披露されることになります。

-何からインスピレーションを得ますか。またアイデアはどのようにして生まれるのですか

孤立した空間からは何も生まれません。音楽的なアイデアは、他の音楽を聴いているときに思い浮かびます。一番作曲のアイデアが浮かんでくるのは、オペラハウスに座り、音楽を聴く耳を養っているときです。静寂の中よりも、オペラの音楽を流している時の方が、作曲活動の妨げとならないようです。それは、何かを得ることが出来る空間の中にこそ内在するエネルギーがあるからです。それに、静寂の中、机に向かって作曲をすることはゼロからの創造となり、非常に困難で す。ですがもちろん最終的には音楽は消し、自分の頭の中に浮かんだ音符をしっかり読み取ることが必要になります。

-次は何に挑戦したいですか。将来はどのようになっていたいですか

私の次の挑戦は、作曲家、パフォーマー、責任者、衣装製作者などを通して私の創造的人生のすべての接線を、ひとつの大きな規模で、舞台やオペラやダンス作品に結集させることです。今はまだ力が及んでいないと感じていますが、私の心の片隅で形作りつつあると確信しています。

-一緒に仕事をしたい人はいますか

これまで一緒に仕事をした全ての人です。最強コラボレイターの集団を作り上げました。劇団のプラクティショナーであるRobert Lepageとは特に一緒に仕事をしたいと思っています。彼はまったくゼロからのスタートであのような叙事的な独り舞台を作り出しました。彼はひとつのパフォーマンスで彼の驚くべき才能を余すところなく見せてくれますが、一方ではとても謙虚で、ウィットとユーモアのセンスに溢れた人です。歌手のKatherine Broderickともまた仕事をしたいと思っています。彼女は同じ大学に通っている頃、私の最初の室内オペラを歌ってくれました。私と彼女のコラボレーションには、まだ計り知れない可能性が必ずあると思っています。

左©Nicole Robson 右©Louise Damgaard

-あなた自身はアーティストと作曲家のどちらだと考えていますか。アーティストになりたいと思ったきっかけは何ですか。あなたのキャリアに強い影響を与えた人物はいますか

自分では作曲家だと考えています。他のすべての活動はその延長上に過ぎません。あえて言うなら、演奏もし、ワークショップでも指導していますので、 ミュージシャンでもあります。しかし基本的には私の活動のすべては、何らかの形で音楽に関連したものです。それらは例えば、The Irrepressiblesという私のバンドに衣装を作っていることや、私の素晴らしい友人であるmasumi Tipsy saitoと共にダンスの振り付けをすること、また、Theo Adamsにコラージュやサントラを作ったり、ピアノを演奏しLa JohnJosephと共に歌詞を書いたり、Scottee’sのミュージカルではバイオリンを演奏し、ロンドンフィルハーモニーオーケストラと共同で子供たちにクラシックオーケストラのレパートリーも教えたりもしています。アーティストのMatthew Stoneには作曲についての講義をし、彼の頭にある音楽を形にする手助けをしました。また、London Sinfoniettaと共にコンサートやイベントを主催しました。

-どのようにして音楽を創り始めたのですか。最初に楽器を演奏したのはいつですか

音楽は常に家の中で流れていました。家族は皆カラオケが得意でしたし、いつも歌っていました。
そういう意味では素晴らしい家でした。8歳のときにバイオリンを始め、すぐに自分にはある種の天性の才能があることに気付きました。学生時代に作曲を始め、最初はあまり真剣に考えてはいませんでしたが、大学の入学試験の際に初めて、‘バイオリニストよりも作曲家の方が自分には向いている’と思い、その道に進んだのです。

-あなたにとって音楽とはなんですか

私にとって音楽とは感情を表すもので、自分自身を表現するために学ぶ言語です。音楽は、記号でありながら、気分にも影響を及ぼすという意味で、非常に複雑なものです。私はRoyal College of Musicでワークショップのリーダーとなるためにした研究の中で、人を感動させ、影響を与えることのとてつもなく大きな潜在力について多くのことを学び ました。私にとって音楽とは、常に挑戦を続け、変わり続けるもので、たとえ静寂の中でも常に存在しているものです。

-衣装製作を始めたきっかけは何ですか、あなたの作る衣装と音楽に関連性はありますか

衣装作りは私のバンドであるThe Irrepressiblesの為に、一年以上前から始めました。私はそれを作曲活動の一部だと考えていました。安全ピンはあっても予算はないという状況で、たった3時間のうちにどうやって10着もの衣装を作るのかしかも明確で統一されたメッセージやスタイルを持ち、そのうえ演奏者たちをセクシーな気分に浸らせる。私は制約というものが大好きです。今は予算や期日、何週間前という予告、インターンなどといったことが、私の精神をたくましくさせます。もし制限がなければもっと困難になるでしょう。しかし結局のところは、よりやりがいがあるということです。私はいつも、素晴らしい作曲家のように素晴らしいデザイナーのことを考えていました。私から見れば、プラダとベートーベンはどちらも天才的なクリエイターです。彼らはどちらもシンプルで月並みともいえる発想を持ち、その概念が実質的になくなってしまうまでその概念と共に演奏し、そして最後の転換点で新たに思想を完全に作り直すのです。私は新しいコレクションや弦楽四重奏を聴き直す度に、その演奏とウィットのセンスに驚かされるのです。

-衣装のアイデアはどのように思い付きますか

私はJamie McDermottのそばで働いています。彼はTheIrrepressinblesについて明確なビジョンを持つ人で、彼は自分の創り出したい空想世界についてとても明確な考えを持っています。
そして理にかなった範囲で、私は自由に自分のアイデアを爆発させることが出来るのです。私の目から見れば、幻想的なほどいいものです。誰も‘無難さ’を望 んではいません。人は楽しみ、魅了されたいのです。それは規律の範囲内でさえあれば、どのアーティストにとっても素晴らしい信念です。

©Ellis Scott
Interview/masumi saito, Masaki Takida, Text/Masaki Takida, Translation/Yuko

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