Interview

Noir Sound Production Setsuya Kurotaki 後篇

音の楽しさというものを子供たちに伝えることが出来れば、多分彼らが作っていくコミュニティが新しい音楽をまた生んでいくと思うんですよ

-KIDS HI-5をやろうと思ったきっかけについて教えてください

もともとアーティスト活動とかDJとかで海外でDJであったり、パフォーマンスをすることが多かったんですが、(その時に思ったのは)日本人と海外の人の 圧倒的な違いってリアクションなんですよね。出音に対して外国の方は凄く貪欲で有名、無名問わず良い音を流していれば盛り上がるし、「お前良かったよ」み たいな感じで前に来るんですよね。でも日本でまったく同じパフォーマンスをしたときに自分の目の前が空いてしまうような感じの輪が出来てしまうんですよ。 一緒にセッションをしながら組上げていくインスタレーションであったりマイクに向かって声をかけてリアルタイムにサンプリングしたものをビートにしてくよ うなショーケースの場合に、(前に)来ないと出来ないわけですよ。「良かったら前に来てマイクに指を鳴らしたりだとか手を叩いたりしてみてください」とい うことを言っても「誰が行くの」みたいな。そういう時って大体外国人が前に来るんですよね。「何でだろう」って思ったときにコミュニケーション能力という 部分が日本人は圧倒的に少ないのかなと思っていて。固定概念の無い子供のときに人見知り、引っ込み思案にならずにセッションをすること、一緒に音を出して 楽しむことを通じて日本人の持つリズム感とか、セッションをする能力とか、コミュニケーション能力を高めていってあげることが出来るんじゃないのかなと 思ったんですよね。

(KIDS HI-5に参加した)親御さんからもメールが来て今まで引っ込み思案だったり、人見知りだったんですけど参加することになってから何か喜ばしいことがあっ たときに「Yeah Hi-Fi」ってやるようになったとか、積極性が出てきたとかとかリアクションがあってそういうリアクションがあるということは今までやってきたことが間 違いじゃないんじゃないのかなと思って。

今DVDを作っているんですけど徐々に徐々にそういった輪を増やしていければ良いなーって思いますね。教室も地方に置いたりすることが出来れば日本の子供 たちがもっとファンキーになっていけるのかなって。黒人とかが凄いファンキーなのって多分小さいころからリズムがある環境で育っているからのようなが気が していて、だから日本人もそうであれば「全然いけるでしょ」みたいな。KIDS HI-5というのはそういったフラストレーションから始まったセッションだと思うんですよね。もっと楽しんで教えられることっていっぱいある気がするんで すよね。ほっておくだけじゃなく一緒にものをつくるだとか。自分がやるKIDS HI-5は子供に目線を下げていないんですよ。大人が普通にやっても楽しいビートメイキングとかセッションを親子でやることによって子供がこっちのステー ジに上がって来いという。始めはうまくたたけなかったりするけど大きい音で太鼓を鳴らしたりとかが楽しいからもっと上手くなろうという気になるし親が楽し んでるからその顔を子供は凄く見てるんですよね。「自分のお父さんやお母さん凄く楽しそうだから自分も楽しい」みたいな。

きっかけはあくまで子供なんですけどそこから例えばKIDS HI-5の先生を作る学校であったり。日本だけじゃなくて海外にも作りたいんですよね。(KIDS HI-5を)日本だけじゃなくて海外にも作るつもりでいて交換留学もさせたいんですね。その土地で使っている楽器とか音楽のカルチャーを持ってきて、「そういう土地にそういう楽器があって、こういうリズムで叩いてるんだ」というのをみんなで合宿で行って、今度は彼らを招待して和太鼓であったりそういうのを 触らせて返すみたいなのをまずアジアからやっていこうとしてて。3年後には出来てる想定なんですけどね。

-今現在様々な活動をされていますがそれぞれに明確な棲み分けはありますか

3本のメインの柱があって一つは音楽のプロデュース活動で店舗の音楽を作ったり、ファッションショーの音楽を作ったりというような広告音楽を作るもの。2つ目はKIDS HI-5を軸とした教育という部分で音楽を使ってどういう風に時代を作っていけるのかというもの。3つ目はアーティスト活動という部分で自分が製作する音 源のリリースとかDJ活動という3つを軸にして動いています。

-アーティスト活動という部分では自分のやりたいもの、作りたいものを作るということですか

そうですね。作品として表現したいことって一緒に作っていくことと、自分自身から出てくるまじりっけなしのものは全然違うのですが、逆にまじりっけなしの 部分の自分の音楽を作るということがいかにバランス間を保つかという部分で、広告であったりプロデュースの部分に凄くいきてくるんですよね。広告音楽の場 合は何かを助長させる為の音楽と考えているので自分たちの音を売っているのではなく売りたいのはその商品なので、それをイメージとして残すためにどういう 曲を作るかという部分に力を入れてあげて。

-音楽を好きになったきっかけってなんですか

母親がレコードマニアでソウルとかファンクとなどの音楽がずっと家でかかっていたんですよね。テープレコーダーで遊ばせてもらったりとか(レコードが)ほんとは45回転なのに33回転にして爆笑するような子供だったんですよ。常に音楽とともに成長してきた感じがあるのでいつの間にかという感じですね。特に音楽教育も受けていないですし。

-海外と日本で音楽性の違いはありますか

東京は特に娯楽が多すぎるので音やクラブに行くということもあまり特別感が無い気がするんですよね。海外たとえばロンドンなんかはクラブ行くかパブ行くか みたいな。心から音を楽しんでるというのが凄く伝わってくるんですよね。海外に行ったときに「こんなに音楽楽しんでるんだー」って良い意味でカルチャーショックを受けて。日本は音楽を手にとるよりは洋服を買う人が多いのかなって気がしますね。これからの音楽のビジネスのあり方って日常生活にどれだけマッチさせて彩を持たすことが出来るかという部分での選んであげる作業とか、コーディネートしていく作業ということがキーになっていく気がするんですよね。

-個人的に好んで聞く音楽ってどういうものですか

ジャンルを問わず叙情的で泣きたくなるような悲しいメロディーとかそういうものをこぞって聞きますね。

-ipodに入ってる音楽を教えてください

ほんと何でも入っていますね。ピアノソナタみたいなものも入っていますし、エレクトロニカも入っていますし、Lovers Rockやレゲーも入っていますし。都内は自転車で移動することが多いんですが『自転車用』とかその時のシチュエーション毎に分けたりしていますね。

-影響を受けたアーティストやCDなどありますか

マイケルジャクソンですね。ディズニーランドのアトラクションでCaptain EO(キャプテン・イーオー)というのがあったのですが、かなり衝撃でした。http://www.youtube.com/watch?v=AstW05bDiQU
また、Michael Jackson Moonwalkerって映画が好きで彼の表現全てがエキサイティングでした。ゴシップも含めて(笑)

-音楽を通じて何か伝えたいことはありますか

メッセージ性をこめたいのはKIDS HI-5を通じてコミュニケーション能力をいかに高めることが出来るかということですね。音を聴いてダイレクトに反応するとか、音の楽しさというものを子 供たちに伝えることが出来れば、多分彼らが作っていくコミュニティが新しい音楽をまた生んでいくと思うんですよ。音を使って新しい可能性をどう発掘してい くのかという方にもっと向いてもいいと思うんですね。毎回KIDS HI-5の中にビートの凄い人というコーナーを設けていて、パーカッショニストであるとか、タップダンサーとかリズムを使っているパフォーマーの映像を見せているんですね。「君たちがやっているリズムセッションをやってもっと上達したらこういうことも出来るようになるよ」って。

黒瀧節也氏が選ぶファッションショー前にお勧めの2枚

Ametsub – The Nothings of the north

わりと音響に近いんですけどピアノとグリッジノイズみたいなビートだけで構造はシンプルなんですけどとにかくおしゃれなんですね。テンションも良い部分で あがるし、あがり過ぎないみたいな。トーンとしては相当良いですね。特に今の梅雨時期でじめじめしている時期にはばっちりですね。

Theophilus London – This charming mixtape

アルバムがフリーで彼のウェブからダウンロード出来るんですね。ラッパーなんですけど凄くおしゃれな音楽なんですよ。歌も歌うし、詩も良いし、バンドっぽいサウンドでもやってるし打ち込みのものもやってるんですけど今の時代の音楽みたいな感じの音ですね。

ストーリー性とかの部分で如何に人を惹きつけるかという提案、そういった部分ではこの2つは是非聞いてほしいですね。

NOIR Sound Production
プロジェクトにより様々な名義で活動するアーティスト/サウンドスタイリスト黒瀧節也(クロタキセツヤ)が運営する音楽プロダクション。各種イベント、ファッションショーのサウンドプロデュースやコーディネートをはじめ商業施設、ウェブサイト等のサウンドブランディングTV、RADIOなどのコマーシャル音楽やサウンドロゴ制作を手掛けるなど音を通じたクロスメディアを提案。
また、子供達のリズム感やコミュニケーション能力の向上を目的としたプロジェクト〝KIDS Hi-5″ (キッズ ハイファイヴ) を立ち上げ、親子向けのリズムワークショップを展開。
共同通信をはじめ、新聞、雑誌、各種媒体に取り上げられるなどその活動は社会的にも注目されている。
HP – http://www.noirsoundproduction.com/
Blog – http://noirsoundproduction.blogspot.com/

Interview, Text/Masaki Takida

コメントは停止中です。