東京都写真美術館主催「第4回恵比寿映像祭」の、地域連携プログラム参加作品として、TRAUMARIS|SPACEでは新進気鋭のアーティスト、志村信裕の個展が開催される。
「赤坂アートフラワー’08」では旧料亭の畳に刺した夥しい待ち針のアタマをスクリーンに見立て、
「あいちトリエンナーレ2010」、「黄金町バザール」「TERATOTERA祭り」では、庇や道路、お風呂、屋根など、空間や画角にとらわれない展示を試みてきた志村信裕。ひさびさのギャラリースペースでの発表となる本展でも、彼の本領ともいえる神出鬼没の作品を発表する。
drawing for Dress (c)Nobuhiro Shimura
1点は、2009年に横浜美術館で展示された「Dress」を装いも新たに上映。Dressという動詞には「整える、仕上げる」という意味があるそう。女性だけでなく空間をも大胆に変身させる、ひと振りの杖となる本作。無数のリボンでしつらえた光沢のある紗に投影されるのは、水面の波頭が永遠につくりだす襞。乱反射するゴールドと虹色の光は、白い空間を幻惑的に変えていく。もう1点の新作は縁起物。土地柄に因んだ「えびすさま」が、いつも通りの「あの」場所で、釣ったばかりのイキのいい鯛を抱え、満面の笑みを浮かべる極小の映像。
またNADiff apartビルのエントランスの地面に、これまでの自作を違った趣で投影するセルフカヴ
ァーの試みも行われる。アートマーケットの動向に影響を受けず、パブリックな場所に自身の作品世界を軽やかに投入してきた志村の強さは、町並みや建物をありのままに見つめる曇りのない眼差し。また、そこへ異質なヴィジョン(=幻燈)を放り込むための、丹念なリサーチと現場での創意工夫にある。しかし、その視点には地域社会や時代への批評的な態度はなく、あくまで「表現者」としてその場所を眺め、空間や素材と親しむことに力点を置いていることに、彼のしなやかさがある。なぜなら「王様ははだかだ」と無邪気に歌う子どもの目がもっとも鋭角的に状況をとらえるように、志村の作品は図らずも展示場所の本質を照射し、そのデリケートな部分をやわらかな幻燈の光で浮かび上がらせるからだ。
【展覧会概要】
会期:2月10日(金)~3月11日(日)
NADiffビルエントランス(屋外)での上映:2/10,(金) 2/19(日), 2/26(日), 3/4(日), 3/11(日)
*日時や時間帯によって上映作品が異なります。
会場:TRAUMARIS|SPACE
〒150-0013 渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F TEL 03-6408-5522 月曜休
16:00-24:00(日曜14:00-22:00)
URL:http://www.traumaris.jp
恵比寿映像祭 HP /地域連携プログラム http://www.yebizo.com/#pg_partner5
志村信裕 HP / WORKS http://nshimu.blogspot.com/p/works.html
【関連イベント】
2月10日(金)
NADiff apart 全館合同オープニング
2月11日(土)
アートカレー部 in “Dress”
ゲストカレー:狩野哲郎、リクリット・ティラバニ(予定)、ほか
2月25日(土)
辻コースケ × 勝井祐二 Live in “Dress”
2月17日(金)
onnacodomo Live & Performance in “Dress”