2011年8月26日、佐藤繊維の東京オフィス、ショップ、ショールームを併設した新社屋「TORRE DELLA SCALAビル」が渋谷区東にオープンした。

ラグジュアリーブランドのニットデザイナーからも注目され、魅力的な糸を長年受け継がれてきた高度な技術により作り出す佐藤繊維。糸作家であり4代目社長、佐藤正樹氏のクリエイションが散りばめられ、佐藤氏ディレクションにより各階、各部屋それぞれの世界観が作り上げられている。

5F〜B1Fを通して吊り下げられたニットのシャンデリアは、各階のイメージに合わせてゴールド、ブラック、レインボー、パステル、ホワイトに変容。色とりどりな糸の巻きで、圧倒的な存在感と多種類の糸が絡み合う美しさが階段を彩る。

1Fをショップとして開放。店内に一歩足を踏み入れると、ニュートラルな色彩が織り成すオーロラのようなベールに包まれた気分になる。「M.&KYOKO」のアイテムがずらりと並ぶその空間は、佐藤繊維の逸脱した糸が生み出すポップで少々毒気のある不思議な世界。また黒と赤を基調としたシャープな部屋と、白に統一した部屋で構成。生地のサンプル展示や商談用の部屋として使用される3Fの他、佐藤氏が世界中から集めた選りすぐりのアンティークインテリアが至る所に配置され、各階全く印象の異なる世界を演出している。

グリム童話からインスパイアされた”M.&KYOKO/Masaki Kyoko 2011 Autumn & Winter”。独創的な糸とカラーリングが木の実や森の色を再現。暖かみを感じるブラウン、オレンジ、モスグリーンが瞳に映る。繊細で巧みな織りで表現される滑らかなグラデーションのニットカーディガンやワンピース、織り方１つ変化させるだけでがらっと表情を変えるニットの味わい深い風合いと、大胆な発想に出会える。
独自の新しい糸や編地が次々と生み出されていく、made in japanの物作りの新たな発信基地となる。

Text:Tomoka Shimogata