2011年8月5~6日、浅草のエスペランサ靴学院にて総合制作プログラム 作品展「ROOTS #2011」が行われた。
今回の学生による作品発表では、第1学年は舞台/身体表現という共通リサーチ課題で歌舞伎を鑑賞し、制作した総合制作プログラム”ROOTS”、第2学年はイラストレーションの授業の一環として3月11日の震災後、靴作りの方向性を模索し、見つめ直す”SHOES AFTER 3.11″という2つのテーマで展示を行った。
学生1人1人が、いま作るべきものは何かを問い直し、改めて自身の靴作りに対する素直な気持ちと向き合い、今回の制作にあたった。
そこでは、「自分にしか出せないものとは何か」という疑問から派生した「自分らしさ」や「世界観」の発見があったと生徒はいう。本当に自分が好きなもの、ことをやっていきたいという強い気持ちは靴の創造に強く影響を与えている。
第2学年の小倉祐美さんは、特定の人への”プレゼント”をテーマに羊毛フェルトでルームシューズを制作。落ち込んでいて家にいるときでも、楽しい気分になれるようなカラフルな世界を表現した。
彼女も「自分らしさ」について考え、色とりどりの笑顔を描いたイラストと相手へのメッセージを添えたコラージュを提案。制作に関して「技術的なところで、デザイン画からの転換が難しい」と語った。
同じく第2学年の友井田今日子さんは、震災を通して人との”縁”について考えた。”他人と他人が結びつく”という面から「結婚」をテーマに、結婚式で履くパンプスを制作。働く女性を意識して黒がメインの靴作りをしていた第1学年の頃とは打って変わって、高揚感溢れるピンク色のオーガンジーを使用したというこのパンプスは、ヒール部分がハート型にカッティングされている。今回の制作が彼女自身の靴に対して思い、方向性を模索する貴重な制作期間となったことが伺える。
17種ミシン、18種ミシン、ポストミシンの3種類が完備され、2年間を通して靴作りの基礎技術の習得から技術・クオリティの向上を図る。靴の創造の根底には、自分が好きなものを大切にし、自らのオリジナルの世界観を表現することにあるのを実感する展示会となった。