こんにちは。
今回お伝えしたいのは、ここのがっこうについてです。というのは、最近ここのがっこうについて質問を受けたり、様々な意見を聞く機会があり、この機会にまとめてみようと思いました。ちょっと固〜い話ですが、お時間があれば、ぜひ読んでいただければうれしいです。
まずここのがっこうは既存の“学校”に当てはまるものではありません。ファッションデザイン教室“ここのがっこう”と最初に謳っているように、イメージとしては“学校”というよりは、“教室”という響きのほうがしっくりくるのではと思います。既存の学校のようなシステムや、設備、環境は持ち得ておらず、そこにあるのは教室と講師、受講生と作品とのコミュニケーションというシンプルなものです。
次に、私たちは既存の学校の否定、アンチテーゼとして、活動しているわけではありません。日本の今までのファッション教育が培ったものを尊重した上で、私たちが出来る事、伝えるべき事を提供していければと思っています。
日本には、海外にはない特色や、技能、美意識が沢山あります。それは長い歴史の中で培われたもので、これからも大切にしていかなければなりません。その日本の特色をもっと世界に伝えていく上でも、その特色を最大限引き出す人材と環境がなければならないと思うのです。
しかし今の現状は、残念ながらそれらの才能を掬いきれていないように思うのです。ですので、決して対立しあうのではなく、双方が補完しあい、共有できる関係性が理想的だと思っています。学ぶ環境は決してここのがっこうだけでは完結するものではないと思っています。例を挙げるならば、コルクルームという学びの場を30年以上も続けられた、安達市三先生のような環境作りを理想としています。閉じるのではなく、開かれた環境作りが大切です。
以下に、ここのがっこうで大切にしている事を3つにまとめてみました。
創造性を感じる事
新しい価値観や概念は、若い感性から生まれるという考えのもと、ファッションにおいてのクリエーションの追求を、受講生の作品制作の過程を軸として授業を構成していきます。受講生個々のクリエーションにおける美意識と価値観を尊重した上で、自分自身が出来る事、やるべき事を見定め、思考を整理していきます。受講生同士での講評の場を作り、客観性と批評性を身につけるきっかけを作ります。またデザイナーである講師の立場から、そのプロセスの中で個々の能力を発見し、その能力を開花させるためのコミュニケーションやお手伝いを行いたいです。
世界と繋がる事
欧米の教育方針や学生たちの比較から、世界においての個々のアイデンティティーの発見と、その可能性の追求を行いたいと思っています。才能があっても、日本国内だけの価値観では、開花できない事が多々あります。日本、海外両方の経験のある講師によって、彼らの才能を世界の中で花開かせることのお手伝いが少しでも出来たらと思っています。今回イタリアのコンペティションITS#9にて、西山高士がグランプリという快挙を成し遂げましたが、彼の才能は世界で発表される事により、その才能が認められましたが、私たちが望む理想の形としての結果となりました。
自由である事
個々の受講生において、ファッションとは何かを考え、その可能性を広げていければと思っています。
例えばファッションの解釈は“服装”ととらえるのか、“流行”ととらえるかによって大きく異なります。
そのあいまいな主題、“ファッション”について個々で考え、自由に表現してもらいたいと思っています。
ですので最終的な作品としてどのような表現であっても良いと思っています。
服飾に限らず、物理学、講師、美術学生、経済と今まで様々バックボーンを持った受講生が集まりました。
さまざまな背景をもった受講生が、独自の視点でファッションを表現して、社会の中で機能していく事が理想です。
最後に、夢ですが、グロピウスのバウハウス、ベッヒャー夫妻のデュッセルドルフ美術アカデミー、
リーエーデルコートのアイントホーヘン、ウォルターバンベイレンドンクのアントワープ王立芸術アカデミー、
長沢節さんのセツモードセミナー、のような講師と学生が一体となった環境を作っていきたいと思っています。
また様々なバックグラウンドやベースグラウンドを持った才能が
“ファッション”というキーワードで集まり混ざり合う事によって、
ファッションの新たな可能性を生み出していければと思っています。
小さいながらもここのがっこうの特色を打ち出し、
協力し合っていく事によって日本から世界へと才能が羽ばたいていく場所となればと思います。
皆さんのご理解、ご協力があって、ここのがっこうは成長していきます。
これからもよろしくお願いします。
山縣良和