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SHUN OKUBO

SHUN OKUBO / 大久保 俊

エスモード東京校で学んだ後、2002年パリに渡りステュディオ・ベルソーに入学。同校卒業後ROBERT NORMAND,BALENCIAGA,HAIDER ACKERMANN等のメゾンで経験を重ねる。2007年、ジュエリーブランドSHUN OKUBO&ASSOCIATESを立ち上げる。2009年、株式会社SHUN OKUBO&ASSOCIATESを設立。

Official HP: www.shunokubo.com
Twitter: http://twitter.com/SHUN_OKUBO

ジブリ美術館の神隠し


ついに行ってきました、ジブリ美術館

美術館は東京の吉祥寺と三鷹の間くらいの場所、井の頭公園の端っこにポツンとあります。

この辺は実は地元で、子供の頃からよく井の頭公園には来ていましたし、

ジブリ美術館は開館した頃からよく通っていたし、知っていたのですが、なぜか今まで来ていなかった。

おそらく“予約制”というのが鬱陶しくてなかなかその気にならなかったのだと思います。

宮崎駿さん(以下、宮さん)はこの美術館にはぶらっと立ち寄って欲しい、たまたま通りかかって何だろう?と思って入って来てほしい、

そう考えていらっしゃったそうですが、非常に混雑した場合のことを考慮して予約制にしたらしいです。

混雑の緩和、という意味でジブリとしてはもちろん妥当な選択だったんだと思いますが、他方、平日等もし人が来ないという状況が発生するという場合を考えると、予約制とすることで人が入らないような時間にも確実に人を来させるという意味では素晴らしいアイデアだという評価もあるそうです(Podcast 「鈴木敏夫ジブリ汗まみれ」参照)。僕もそれにはなるほど!っと手を叩きましたが、宮さんも鈴木プロデューサー(以下、鈴木P)も当初そんなことは全く考えておられなかったとか。

さてさて、兎にも角にも初めてのジブリ美術館、堪能してまいりました。

外観的にはちょっと怪しいちっちゃい砦?お城?家?よく分からない感じなのですが、植物に覆われ暗く、鬱蒼としています。

屋上には『ラピュタ』に登場した巨大なロボット兵が。屋上はラピュタをイメージしたんでしょうね。

しかし内部は『耳をすませば』にでてきた“地球屋”のような薄暗いイメージ。

その中にミニシアターがあったり、ジブリ映画の資料があったり、宮さんの仕事場のような部屋があったりかなり盛りだくさん。

ちなみにキャッチフレーズは「迷子になろうよ、いっしょに。」らしいです。たしかに非常にわかりづらい間取りですし、変な階段はあるわ、低い通路はあるわw動線は無茶苦茶なのですが、楽しくなります。建築家のコールハースがパリのレアールの改築案(コンペでは負けましたが)で示したような、動線をカオスにして人の動き(生活?)を豊かにする、というようなことが思い出されました。

さて、実際内部に入ったとき、はじめはお台場のショッピングモールのような、ちょっと失礼かもしれませんが安っぽい内装だな、

と思ったのですが、それがだんだん気にならなくなるというか、むしろリアルで、居心地がよくなってくるから不思議です。

この場合の“リアル”というのは。。そうですね、言うなれば『千と千尋~』の冒頭で主人公の千尋と両親がモルタル製のアミューズメントパークの建物の残骸に入ったときのような。劇中ではその残骸が不思議世界への入り口だったのですが、

このジブリ美術館という建物も同様にまさにそのような機能をもっているかのように、このショッピングモールのような生々しい現実世界の建物がジブリという摩訶不思議な空間へと来場者をいざなうのです。

これは非常に面白い現象で、単にテーマパークやアミューズメントパークに行って非日常を体感するのとは訳が違います。

いま、ここにある世界、朝起きて学校に行く、会社に行く、電車に乗る、公園へ行く、遊園地へ行く、そのような平凡な日常が断絶されること無く不思議な世界へと移行するのです。日常のリアルな世界と繋がっている、つまり不思議世界がスムーズにリアル世界に取って代わられるというメタリアルな世界。

先ほど、心地よい、と書きましたが、これってある意味怖いですよね。自分の世界の構造が静かに、そして自然に変化するのですから!まさに自分自身が神隠しにあった気分です。ポイントとして、三鷹の森、という何の特別なことのない場所だからこそこのような現象が起きるのでしょう。

と、いうことで、僕の感動した部分はその点に尽きます。(あと、やっぱり宮さんのアトリエをイメージしたような部屋は最高に良かった!)美術館内のレビューまで書くと長くなってしまうので、とりあえずそのへんは省きます。ちなみにここでしか見れない美術館のオリジナル映画は今回は『パン種とタマゴ姫』でした。ドキドキワクワクの20分間!素敵でしたよ〜。

ところで、美術館を出る頃には真っ暗になっていて、ジブリ美術館と三鷹の森、井の頭公園との区別がつかなくなっていました。

空はインディゴブルー、星はきらめき、街頭の光は頼りない、森は黒くお化けが出そう。美術館の外も、美術館と同様の世界になってしまいました。

非常に奇妙なこの感覚は、いせや(吉祥寺で有名な焼き鳥屋)に行ってもは消えず、駅まで着いたときにやっといつもの日常を取り戻した気分になりました。ただ、いまだに、神隠しにあっている空気は完全に消えてないように感じます。。この神隠しの感覚、ずっとなくさずにいたいです。

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